2026年3月、ウォール街の著名ブローカーであるバーンスタインは、暗号資産(クリプト)関連株が2025年の高値から約60%下落した現状を「大企業を大幅割引で手に入れる稀な機会」と評価しました。短期的な市場の弱さは続くものの、ステーブルコイン、トークン化、デリバティブといった分野の長期的な成長見通しは依然として堅固であると指摘しています。本記事では、このバーンスタインの分析を深掘りし、現在の市場環境と今後の展望について、dex.jpの読者にとって実用的な視点から解説します。
2025年後半からの仮想通貨市場の調整と背景
2025年10月にピークを迎えた後、暗号資産市場は急激かつ持続的な調整局面に入りました。ビットコインは一時126,000ドルに迫る史上最高値から約40%〜50%下落し、デジタルアセット市場全体の価値は約2兆ドル減少しました。この大規模な売りは、主に以下の複合的な要因によって引き起こされました。
- マクロ経済的圧力: 世界的なインフレ懸念、主要中央銀行による金融引き締め政策、地政学的リスクの高まりなどが、リスク資産全般に対する投資家の慎重姿勢を強めました。
- 規制の不確実性: 各国政府および規制当局による暗号資産に対する姿勢は依然として不透明であり、特に新たなDeFiプロトコルやトークン化された資産に対する法整備の遅れが、市場に不安を与えています。
- レバレッジの巻き戻し: 強気相場中に蓄積された過剰なレバレッジが、市場の調整局面で強制決済を誘発し、さらなる価格下落を加速させました。DeFiレンディングプラットフォームや中央集権型取引所における大規模な清算がその一例です。
これらの要因が複合的に作用し、2026年初頭にかけて暗号資産市場全体のセンチメントは慎重な局面へと移行しました。しかし、バーンスタインは、この調整が長期的な視点で見れば「買い場」を提供していると分析しています。
クリプト関連株式の急落:60%のディスカウント
暗号資産市場の調整は、関連する上場企業(クリプトエクイティ)にも大きな影響を与えました。2025年の高値から、これらの株式は約60%もの大幅な下落を経験しています。バーンスタインのアナリスト、ゴータム・チュグハニ氏らは、「地政学的要因と一時的なクリプト市場の弱気なセンチメントの組み合わせが、クリプト関連株に大幅な割引を提供している」と指摘しています。この急落により、多くの企業がその本質的な価値に対して大幅に割安な水準で取引されていると見られています。
特に、コインベース(Coinbase, COIN)、ロビンフッド(Robinhood, HOOD)、フィギュア(Figure, FIGR)といった主要なクリプト関連企業は、この市場全体の調整の影響を大きく受けました。これらの企業は、取引量やユーザー獲得数といった主要指標が市場の変動に直接的に連動するため、市場センチメントの悪化が株価に反映されやすい特性があります。しかし、バーンスタインは、現在の株価水準がこれらの企業の持つ長期的な成長ポテンシャルと比較して過小評価されていると判断しています。
バーンスタインの見解:「大企業を大幅割引で手に入れる稀な機会」
バーンスタインは、クリプト関連株式が2026年第1四半期の決算発表を前に底打ちに近づいていると見ています。アナリストは、短期的な弱気相場は第1四半期の決算を通じて続くと予想する一方で、現在の水準を、大規模かつ成長中の市場に露出している企業へのエントリーポイントと捉えています。具体的には、ステーブルコイン、トークン化、予測市場、デリバティブといった分野へのエクスポージャーを持つ企業を評価しています。
この見解の背景には、暗号資産市場の基礎的な長期成長トレンドが依然として健全であるという信念があります。一時的な市場の変動やマクロ経済的逆風はあれど、ブロックチェーン技術とその応用が金融システムの未来を形作るという大局的な見方は変わらないというスタンスです。バーンスタインは、この「大幅割引」が、質の高い企業に長期投資を行う絶好の機会を提供していると考えています。
主要プロジェクトの評価と目標価格修正
バーンスタインは、コインベース(COIN)、ロビンフッド(HOOD)、フィギュア(FIGR)の3社に対して「アウトパフォーム」のレーティングを維持しつつも、短期的な市場環境を鑑みて目標株価を修正しました。
- コインベース(Coinbase, COIN): 米国を代表する大手暗号資産取引所であり、機関投資家向けサービスやDeFiエコシステムへの取り組みも強化しています。バーンスタインは目標株価を440ドルから330ドルに引き下げました。記事執筆時点でコインベースの株価は約165.50ドルで取引されており、大幅な上昇余地があると見られています。
- ロビンフッド(Robinhood, HOOD): 株式、オプション、ETFに加え、暗号資産取引サービスも提供する人気の投資プラットフォームです。DeFi分野への直接的な関与は限定的ですが、一般ユーザーが暗号資産にアクセスするゲートウェイとしての役割は大きいです。目標株価は160ドルから130ドルに修正されました。記事執筆時点でロビンフッドの株価は約67.10ドルでした。
- フィギュア(Figure, FIGR): プロジェクト・ギャラクシー(Project Galaxy)やプロジェニ(Progeni)といったブロックチェーンベースの金融サービスを展開する企業です。特にローンや証券のトークン化に注力しており、DeFiの現実世界資産(RWA)トークン化トレンドと深く関連しています。目標株価は72ドルから67ドルに引き下げられましたが、記事執筆時点の株価約31.14ドルと比較すると依然として高い潜在性を示唆しています。
これらの目標株価の修正は、短期的な市場の逆風を織り込んだものですが、同時に長期的な成長見通しに対するバーンスタインの自信の表れでもあります。特にコインベースは、DEXアグリゲーターやL2ソリューションとの連携を強化するなど、DeFi領域への積極的な姿勢を見せており、今後の成長が期待されます。
長期的な成長ドライバー:ステーブルコイン、トークン化、デリバティブ
バーンスタインが長期的な成長ドライバーとして強調する分野は、DeFiエコシステムの中核をなす要素と強く結びついています。
- ステーブルコイン: 米ドルなどの法定通貨に価値をペッグしたステーブルコインは、決済、送金、DeFiプロトコルでの流動性提供など、多岐にわたる用途で利用が拡大しています。特にCircleのUSDCやTetherのUSDTは、その発行量と利用規模において、グローバルな金融インフラの一部としての地位を確立しつつあります。これらの安定したデジタル通貨の普及は、関連する取引所や決済プロバイダーに持続的な収益機会をもたらします。
- トークン化(Real World Assets, RWA): 不動産、債券、プライベートエクイティなど、現実世界の資産をブロックチェーン上でトークン化する動きが加速しています。これにより、資産の流動性向上、所有権移転の効率化、小口化による投資機会の拡大が期待されます。フィギュアのような企業がこの分野を牽引しており、将来的にはDeFiプロトコルと伝統金融の橋渡し役として重要な役割を果たすでしょう。
- デリバティブ: 暗号資産の価格変動リスクをヘッジしたり、投機的な取引を行うためのデリバティブ市場も急速に成長しています。パーペチュアルスワップ、オプション、先物といった商品が、中央集権型取引所だけでなく、GMXやdYdXのような分散型取引所(DEX)でも提供され、機関投資家やプロのトレーダーの参加を促しています。この市場の拡大は、関連するインフラプロバイダーやデータサービス企業に恩恵をもたらします。
- 予測市場: AugurやPolymarketのような分散型予測市場は、様々なイベントの将来の結果に対する意見を集約し、参加者に報酬を提供するプラットフォームです。この分野はまだ比較的新しいですが、そのユニークなメカニズムから、将来的に大きな成長潜在力を持つと見られています。
これらの分野は、ブロックチェーン技術の活用を通じて、既存の金融システムに革新をもたらし、新たな価値創造の機会を生み出す可能性を秘めています。
投資戦略とリスク要因
バーンスタインの分析は、現在のクリプト関連株の急落が長期的な投資家にとって魅力的な機会を提供している可能性を示唆していますが、投資には常にリスクが伴います。読者は以下の点を考慮に入れる必要があります。
- 市場のボラティリティ: 暗号資産市場は依然として高いボラティリティを特徴としており、短期的な価格変動は避けられません。投資家は、自己資金の範囲内で、長期的な視点を持って投資に臨むべきです。
- 規制リスク: 世界各国での暗号資産に対する規制環境は進化途上にあり、予期せぬ規制変更が市場や個別企業に大きな影響を与える可能性があります。
- マクロ経済的要因: 金利動向、インフレ、地政学的緊張といったマクロ経済的要因は、リスク資産全般のセンチメントに影響を与え続けます。
- 企業のファンダメンタルズ: 個別企業の事業モデル、競争優位性、収益性などを十分に分析し、健全なファンダメンタルズを持つ企業を選択することが重要です。
バーンスタインは、ビットコインが底を打ち、年末までに150,000ドルに達するという強気な目標を改めて表明しています。これは、暗号資産市場全体の回復が、関連株式のパフォーマンスを押し上げるというシナリオを支持するものです。しかし、これはあくまでアナリストの予測であり、投資判断は個々のリスク許容度と分析に基づいて行うべきです。
まとめ
2026年3月、バーンスタインは、暗号資産関連株の約60%の下落を、長期投資家にとって「大幅割引での稀な買い場」と評価しました。2025年後半からの市場調整は、マクロ経済的圧力、規制の不確実性、レバレッジの巻き戻しによって引き起こされましたが、バーンスタインは主要企業の長期的な成長ドライバーとして、ステーブルコイン、トークン化、デリバティブ市場の拡大を挙げています。コインベース、ロビンフッド、フィギュアといった企業の目標株価は修正されたものの、「アウトパフォーム」のレーティングは維持されており、現在の株価水準は潜在的な上昇余地を示唆しています。しかし、投資には常にリスクが伴うため、個々の投資家は慎重な分析と自己責任に基づいた判断が求められます。




