Bitwiseの「Automated Token Portfolios(ATPs)」は、Coinbaseのトークン化米国株を利用し、投資家自身のウォレット内でテーマ別ポートフォリオを自動調整する仕組みです。
初期ラインアップはMag7X、ロボティクス、AIの3戦略。従来のETFとは異なり、資産をファンドへ預けず、個別のトークン化株式を自己管理しながらBitwiseのモデル配分を再現できます。
Bitwiseがトークン化株式の自動ポートフォリオを発表
暗号資産運用会社Bitwise Asset Managementは2026年8月25日、CoinbaseとGliderを活用した「Automated Token Portfolios(ATPs)」を発表しました。
ATPsは、Bitwiseが設計・公開するルールベースのモデルポートフォリオを、利用者のウォレット内で再現するサービスです。Coinbaseがトークン化米国株を提供し、オンチェーン資産管理プラットフォームのGliderが売買とリバランスを担当します。
利用者はETFや投資信託の持分を購入するのではなく、構成銘柄に対応するトークンを個別に保有します。相場変動によって実際の保有比率がモデルから離れると、Gliderが利用者から許可されたセッション認証情報を使って調整します。
Bitwiseはモデルの設計者ですが、利用者の資産を保管せず、取引も直接執行しません。Bitwiseと利用者の間に個別の投資助言契約や受託者関係が成立する商品でもないと説明されています。
初期提供される3つの投資テーマ
最初に提供されるATPsは、いずれも対象銘柄を均等比率で組み入れる設計です。
「Bitwise Mag7X ATP」は、Magnificent Sevenと呼ばれるApple、Microsoft、Nvidia、Alphabet、Amazon、Meta、TeslaにSpaceXを加えた構成です。一般的なマグニフィセント・セブンの枠を、未上場企業を含む宇宙テクノロジー分野まで広げています。
「Bitwise Robotics ATP」は、ロボットや自律システムの設計、製造、導入に関係する企業を対象とします。発表資料ではTesla、Nvidia、Amazonが代表例として挙げられています。Teslaの自動運転・ロボット事業、Nvidiaの計算基盤、Amazonの物流自動化など、異なる産業レイヤーをまとめて保有する考え方です。
「Bitwise AI Leaders ATP」は、AI分野の主要企業を対象とし、Nvidia、Microsoft、Alphabet、Meta、Amazon、SpaceX、Tesla、Sandiskを含みます。半導体、クラウド、基盤モデル、データ保存、AIを利用した製品やサービスを横断する構成です。
方法論アクセス料は年率0.15%ですが、Gliderのプラットフォーム利用料や実際の取引手数料は含まれません。したがって、利用前には表示される総費用とリバランス時の売買コストを別途確認する必要があります。
CoinbaseとGliderは何を担当するのか
Coinbaseは、ATPsの基礎資産となるトークン化米国株を提供します。同社は対象トークンについて、原株による1対1の裏付けと株主権を備えると説明しています。ただし、権利の内容には適用条件やADGMで承認された目論見書の規定が関係します。
発行主体は、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)で認可されたCoinbase関連法人です。Bitwise自身が株式トークンを発行するわけではなく、Coinbaseによる裏付け、償還可能性、株主権に関する説明を独自に検証したものではないと明記しています。
Gliderは実装レイヤーを担当します。利用者がATPsを選択すると、Gliderの技術がBitwiseの公開比率に合わせてウォレット内の保有資産をリバランスします。Gliderは以前からOndo Financeのトークン化株式を使った自動ポートフォリオも提供しており、今回の提携はその仕組みをCoinbaseの株式トークンへ広げるものです。
つまり、Bitwiseが運用ルール、Coinbaseがトークン化された基礎資産、Gliderが自動執行を担当する三層構造です。
ETFとATPsは何が違うのか
従来のETFでは、運用会社や信託などのビークルが株式をまとめて保有し、投資家はそのファンドの持分を証券口座で売買します。投資家の口座にAppleやNvidiaの株式が個別に入るわけではありません。
ATPsでは、利用者がトークン化された個別銘柄を非カストディアルウォレットで保有します。資産を共同運用ビークルへ移す必要がなく、Bitwiseのモデルが利用者のウォレット側へ適用される点が大きな違いです。
この構造には、テーマ型ポートフォリオを比較的素早く設計できる利点があります。新しいテーマを商品化する際、必ずしもETFの組成や上場を待つ必要がありません。また、銘柄別の保有状況をオンチェーンで確認しやすく、利用者が自分でカストディを維持できます。
一方、ETFのように単一の商品を売買する仕組みではないため、複数トークンの取引、リバランス、ネットワーク利用、税務上の記録が複雑になる可能性があります。自動運用であっても、秘密鍵管理やスマートコントラクトとの接続承認まで自動的に安全になるわけではありません。
DeFiとの接続がもたらす可能性
トークン化株式をウォレットで直接保有する意味は、売買時間の拡張だけではありません。技術的・法的に利用可能な場合、DeFiプロトコルで担保として差し入れたり、貸借市場へ供給したりする余地が生まれます。
例えば、AaveやMorphoのようなレンディングプロトコルが適格な株式トークンを担保として採用すれば、保有者は株式エクスポージャーを維持しながら流動性を調達できる可能性があります。UniswapやAerodromeなどのDEXに十分な流動性が形成されれば、オンチェーンでの交換や自動ポートフォリオ調整も効率化できます。
ただし、ATPsの発表は特定のDeFiプロトコルへの上場や担保採用を保証するものではありません。Bitwiseも、貸し借りには清算を含む固有のリスクがあり、資産を全額失う可能性があると警告しています。
株式トークンには発行体リスク、原資産の保管リスク、償還条件、取引可能地域、スマートコントラクト障害、オラクル価格のずれなど、通常の株式とは異なるリスクも重なります。利回りだけを見てレンディングへ投入するのではなく、担保掛け目、清算条件、利用可能な流動性を確認することが重要です。
日本の利用者が確認すべき注意点
ATPsとCoinbaseのトークン化株式は、発表時点で米国外の適格地域にいる非米国人だけが対象です。「米国外なら誰でも利用できる」という意味ではなく、居住地、本人確認、制裁対応、各地域の証券規制によって利用可否が決まります。
日本居住者についても、GliderやCoinbaseの画面へアクセスできることと、法的に商品を利用できることは同じではありません。登録前に対象地域、利用規約、目論見書、トークンの法的性質を確認する必要があります。
また、自己管理型である以上、シードフレーズの紛失、フィッシング、悪意ある承認、接続先の誤認は利用者側の重大なリスクになります。リバランスを許可するセッション認証についても、権限の範囲、失効方法、取引上限を確認すべきです。
税務面では、リバランスによって複数の売買が発生する可能性があります。取引履歴、取得価額、手数料を保存し、日本での所得区分や申告方法については税理士などの専門家へ確認するのが安全です。
まとめ
BitwiseのATPsは、Coinbaseのトークン化株式とGliderの自動運用技術を組み合わせ、AI、ロボティクス、巨大テクノロジー企業へのテーマ投資をウォレット内で実現する試みです。
重要なのは、単に株式取引をブロックチェーンへ移しただけではない点です。Bitwiseのモデル設計、Gliderのリバランス、自己管理型ウォレット、将来的なDeFi連携を組み合わせることで、ETFとは異なるオンチェーン資産管理の形を示しています。
その一方で、利用地域の制限、発行体と原資産の裏付け、秘密鍵管理、取引費用、スマートコントラクト、清算、税務といった確認事項も増えます。ATPsを評価する際は、テーマの魅力だけでなく、誰が資産を発行し、誰が取引を実行し、どの権限をウォレットから与えるのかまで確認することが欠かせません。





