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トークン化預金とは?仕組みとステーブルコインとの違いを解説
トークン化預金·8分で読める

トークン化預金とは?仕組みとステーブルコインとの違いを解説

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-08-21

📋 この記事のポイント

  • 1トークン化預金は、銀行預金に対する請求権をブロックチェーン上で表現する仕組みです。
  • 2JPM CoinやProject Agoráの事例から、ステーブルコイン、CBDCとの違い、DEX・DeFiでの用途、リスクを解説します。
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トークン化預金とは、商業銀行の預金に対する請求権を、ブロックチェーンなどのプログラム可能な台帳上で表現したものです。 預金という法的・経済的な性質を維持しながら、決済、担保移転、資産取引をオンチェーンで自動化できる点に特徴があります。 ステーブルコインやCBDCと似て見えますが、発行主体、保有者が持つ請求権、信用リスクは同じではありません。

トークン化預金とは何か

国際決済銀行(BIS)は、トークン化預金を「DLTシステム上における銀行預金のデジタル表現」と定義しています。通常の預金と同じく、保有者が持つのは発行銀行に対する請求権です。

重要なのは、単に銀行口座の残高を暗号資産へ交換する仕組みではないことです。銀行が管理する預金を、スマートコントラクトから扱えるトークンとして表現し、発行、移転、償還などの処理を銀行の管理下で行います。

例えばJ.P. MorganのJPM Coinは、同行の機関投資家向け預金をオンチェーンで利用できるようにした預金トークンです。利用者は銀行口座の資金をJPM Coinへ変換し、対応するネットワーク上で送金や決済に使った後、再び通常の預金へ戻せます。

トークンを保有している間も、経済的にはJ.P. Morganに対する預金債権を保有する構造です。したがって、無担保型暗号資産のように市場の需給だけで価値が決まるものではありません。一方で、預金である以上、発行銀行の信用リスクや利用条件から完全に独立するわけでもありません。

ステーブルコインやCBDCとの違い

トークン化預金と法定通貨連動型ステーブルコインは、どちらもブロックチェーン上で通貨価値を移転できるため、画面上ではよく似ています。しかし、保有者が誰に対する請求権を持つかが異なります。

USDCなどのステーブルコインは、原則として発行会社が保有する準備資産を基礎とするデジタルトークンです。利用者が持つのは発行会社の償還条件に基づくトークンであり、特定銀行の預金そのものではありません。これに対してJPM Coinのようなトークン化預金は、発行銀行のバランスシート上にある預金を表現します。

CBDCは中央銀行が発行する中央銀行マネーです。商業銀行が発行するトークン化預金とは、発行主体と信用の所在が異なります。整理すると、CBDCは中央銀行への請求権、トークン化預金は商業銀行への請求権、ステーブルコインは設計に応じて民間発行会社や準備資産に依存する仕組みです。

BISは、異なる銀行の預金であっても額面どおりに決済できる「通貨の単一性」を重視しています。トークン化預金が既存の銀行制度や中央銀行準備と接続されれば、この性質をオンチェーンでも維持できる可能性があります。ただし、対象外の利用者へ自由に流通するステーブルコインと比べ、参加者や移転先が厳しく制限される場合があります。

送金から決済までの仕組み

一般的な構成では、利用者が銀行口座の預金を指定すると、銀行が対応額の預金トークンを発行します。トークンは承認済みウォレットへ移され、送金、証券決済、担保差し入れなどに利用されます。償還時にはトークンが消却され、銀行口座の利用可能残高へ戻されます。

JPM Coinは、Coinbaseが支援するEthereumレイヤー2のBase上で発行されています。J.P. Morganは、Blockchain Deposit Accountという枠組みを通じて、従来の預金とオンチェーンの預金トークンを接続しています。公開ブロックチェーンを利用しますが、取引できるのは審査を受けた参加者です。

この設計では、ブロックチェーンが公開されていることと、誰でも無条件でトークンを保有できることは同義ではありません。銀行はウォレットの承認、本人確認、マネーロンダリング対策、取引監視、凍結や償還に関するルールを維持できます。

複数銀行間の取引では、より複雑な仕組みが必要です。送金元銀行のトークンを受取人へそのまま渡すのではなく、送金元側のトークンを消却し、銀行間を中央銀行準備で決済したうえで、受取人側の銀行が新しい預金トークンを発行する構成が考えられます。BISの統合台帳構想は、中央銀行マネー、商業銀行預金、トークン化資産を同じプログラム可能な基盤で連携させる考え方です。

金融機関が注目する実用性

第一の用途は、営業時間や複数の仲介機関に左右されやすい決済の効率化です。JPM Coinは、対応ネットワーク内で常時利用できるデジタルマネーとして設計され、支払い、決済、照合を同じオンチェーン処理へまとめることを目指しています。

第二の用途は、証券やトークン化された現実資産との同時決済です。例えば、投資家がトークン化債券を購入する際、資産の移転とJPM Coinによる支払いを一つの条件付き取引にできます。片方だけが実行される状態を避けるDelivery versus Payment、いわゆるDvPを実装しやすくなります。

第三の用途は担保管理です。B2C2やCoinbaseなどが参加したJPM Coinの試験では、Base上で預金トークンの発行や償還が実行されました。金融機関は預金トークンをオンチェーン担保として差し入れ、取引完了後に返却するといった処理をスマートコントラクトへ組み込めます。

国際決済の実験としてはBISのProject Agoráがあります。同プロジェクトは複数の中央銀行と規制対象金融機関が参加し、トークン化された中央銀行マネーと商業銀行預金を用いて、国境を越える決済のメッセージ、照合、決済を統合する方法を検証しています。

DEX・DeFiに与える影響

DEXやDeFiにとって、トークン化預金は規制された銀行マネーをスマートコントラクトへ接続する手段になり得ます。トークン化債券の購入、担保付き融資、機関投資家向け流動性プールなどで、決済資産として利用できる可能性があります。

例えばBase上のJPM Coinを対応するトークン化証券市場へ接続すれば、取引注文、本人確認、資産移転、支払いを一連の処理として設計できます。資産だけがオンチェーンにあり、支払いは銀行送金で後から処理する構成より、照合作業や決済の時間差を減らしやすくなります。

ただし、Uniswapの一般的な流動性プールへ誰でもJPM Coinを預けられるという意味ではありません。銀行発行トークンには利用資格、対応ウォレット、地域、取引相手、スマートコントラクトの許可条件が設定され得ます。そのため、当面は完全なパーミッションレスDeFiより、本人確認済み参加者によるInstitutional DeFiとの親和性が高いと考えられます。

また、複数銀行が個別の預金トークンを発行すると、流動性が銀行ごとに分断される問題もあります。DEXが交換市場を提供するだけでは、銀行間決済、額面交換、規制対応まで自動的に解決しません。中央銀行マネーを含む統合台帳や、銀行間で共通化された相互運用ルールが重要になります。

利用前に確認すべきリスク

トークン化預金の信用リスクは、主に発行銀行へ帰属します。「法定通貨と同じ価格で動くトークン」であっても、中央銀行の直接債務ではありません。預金保険の適用についても、発行国、預金者の属性、口座構造、保有形態によって扱いが異なる可能性があるため、商品ごとの契約条件を確認する必要があります。

技術面では、スマートコントラクトの欠陥、秘密鍵の管理、ウォレットの誤登録、ブロックチェーン障害、オラクルやブリッジへの依存がリスクになります。Base上で正規のJPM Coinを扱う場合も、名称やティッカーだけで判断せず、J.P. Morganが案内する正式なコントラクト情報を確認すべきです。

運用面では、オンチェーン部分が常時動いていても、銀行口座との変換、審査、障害対応が同じ条件で常時利用できるとは限りません。J.P. Morganも、従来口座とBlockchain Deposit Account間の移動には週末の停止時間があると説明しています。

さらに、発行銀行が移転を承認・拒否できる設計は、コンプライアンス上の利点である一方、DeFi利用者が期待する検閲耐性とは相反します。利用者は利回りだけでなく、発行者、償還権、利用可能なチェーン、許可制御、凍結条件、監査方法、他行トークンとの交換性を確認する必要があります。

まとめ

トークン化預金は、新しい民間通貨をゼロから作るのではなく、既存の商業銀行預金をプログラム可能な台帳へ持ち込む仕組みです。JPM Coinは、銀行預金をBase上で送金、担保、資産決済に利用する具体例となっています。

ステーブルコインとの最大の違いは、保有者が商業銀行に対する預金請求権を持つ点です。CBDCとは発行主体が異なり、銀行の信用リスクや利用条件も残ります。

DEX・DeFiでは、トークン化証券のDvP、機関投資家向け担保、国際決済などへの応用が期待されます。ただし、現時点では参加資格や移転先が管理された制度設計が中心です。名称が似たトークンを同一視せず、発行銀行、正式なコントラクト、償還条件、規制上の扱いを一次資料で確認することが重要です。

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