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ステーブルコイン利回り規制の行方:CLARITY Actの最新動向
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ステーブルコイン利回り規制の行方:CLARITY Actの最新動向

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-05-03

📋 この記事のポイント

  • 1米国CLARITY Actにおけるステーブルコイン利回り規制の最新妥協案を解説。
  • 2クリプト業界の反応、"Buy and Use"モデルへの転換、今後の影響を専門家が分析します。
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米国における暗号資産業界の規制動向は、常に世界の注目を集めています。特にステーブルコインの利回りに関する規制は、その性質上、従来の金融システムとの境界線が曖昧であり、明確な指針が求められてきました。2026年5月、米上院議員のトム・ティリス氏とアンジェラ・オルソブルックス氏が発表したCLARITY Actのステーブルコイン利回りに関する新たな妥協案は、業界に大きな波紋を広げています。これは、単なる政策変更ではなく、ステーブルコインの利用モデルそのものに変化を促す可能性を秘めており、今後のDeFiエコシステムに計り知れない影響を与えるでしょう。

CLARITY Actとステーブルコイン利回り規制の背景

CLARITY Act(Digital Asset Market Clarity Act)は、米国の暗号資産市場における明確な規制枠組みを構築することを目指しています。これまで、ステーブルコインが提供する利回りプログラムは、銀行預金に似た機能を持つことから、証券法や銀行法との整合性が課題となっていました。特に、「Buy and Hold」(購入して保有するだけで利回りを得る)モデルは、投資家保護の観点から問題視されることが多く、曖昧な法的地位がイノベーションの阻害要因となるとの指摘もありました。こうした背景のもと、議会はステーブルコインの経済的実態に即した規制の導入を模索し続けていました。

合意内容と「Buy and Use」モデルへの転換

今回の妥協案の核心は、ステーブルコインの利回り提供に関して、従来の銀行預金と「経済的または機能的に同等」とみなされるものを禁止する点にあります。その一方で、「正当な活動(bona fide activities)または正当な取引(bona fide transactions)」に紐づく報酬プログラムは容認される道が開かれました。具体的には、プラットフォームのロイヤリティプログラム、プロモーション、サブスクリプション、取引、決済、およびプラットフォームの利用に結びつく活動ベースの報酬がこれに該当します。この方針は、ステーブルコインの利用を促進する「Buy and Use」(購入して利用する)モデルへの転換を業界に促すことになります。米財務省(Treasury)とCFTC(商品先物取引委員会)は、法案成立後1年以内に具体的な規則を策定するよう指示されており、これにより新たな規制の枠組みが確立される見込みです。

業界からの反応:賛成と懸念

この妥協案に対して、暗号資産業界からは賛成と懸念の両方の声が上がっています。CoinbaseやCircleを含む主要な業界団体は、この合意を即座に支持し、上院銀行委員会に対し、市場構造法案の審議を早急に進めるよう強く求めました。Blockchain AssociationのCEOであるサマー・マーシンガー氏は、「明確な法的枠組みがなければ、優秀な人材、資本、革新的な企業が他国へ流出してしまう」と述べ、今回の合意を「正しい方向への一歩」と評価しています。

しかし、Crypto Council for Innovation(CCI)は、法案を支持しつつも、一部に懸念を表明しています。CCIのCEOであるジ・フン・キム氏は、今回の新たな文言が、昨年提出されたGENIUS Actよりもはるかに広範な禁止枠組みを導入していると指摘しました。GENIUS Actでは発行者にのみ利払い禁止が適用されたのに対し、今回のCLARITY Act案は「すべてのデジタル資産市場参加者」に適用される可能性があり、その影響範囲の広さに懸念を示しています。

主要なステークホルダーの見解

各ステークホルダーは、今回の妥協案を異なる視点から捉えています。Blockchain Associationのサマー・マーシンガー氏は、規制の不確実性がもたらすリスクを強調し、米国が暗号資産分野でリーダーシップを維持するためには、迅速な法整備が不可欠であるとの見解を示しました。彼女のコメントは、業界全体が長らく求めてきた「明確性」への強い期待を反映しています。

一方、Crypto Council for Innovationのジ・フン・キム氏は、規制の対象範囲が拡大することへの警戒感を表明しながらも、「米国が暗号資産分野で主導権を握ることを確実にするのが北極星(目標)だ」と述べ、委員会に対し法案の審議を進めるよう促しました。これは、たとえ懸念点があったとしても、前進することの重要性を認識していることを示唆しています。

ステーブルコインであるUSDCやEURCを発行するCircleの最高戦略責任者ダンテ・ディスパート氏は、今回の合意を全面的に支持しています。彼の企業にとって、安定した規制環境は事業の成長と拡大に直結するため、今回の進展は極めて重要であると考えられます。

法案成立への期待と今後の影響

業界団体が上院銀行委員会に対し、早期の「マークアップ」(法案修正と採決に向けたプロセス)を強く求めていることから、CLARITY Actの進展に対する期待は高まっています。この法案が成立すれば、米国におけるステーブルコインの利用方法、特に利回り提供の形態に大きな変化をもたらすでしょう。

「Buy and Use」モデルへの移行は、ステーブルコインが単なる価値の貯蔵手段ではなく、決済、融資、分散型取引所(DEX)での流動性提供など、より広範なDeFiエコシステムにおける積極的なユーティリティとしての役割を強化することを意味します。これにより、イノベーションの方向性が、単なる高利回り提供から、実用的なアプリケーションやサービスへの統合へとシフトする可能性があります。規制の明確化は、より多くの機関投資家や企業がステーブルコイン市場に参入する障壁を低減し、米国の暗号資産業界全体の成長を加速させるかもしれません。

まとめ

2026年5月、米上院議員が発表したCLARITY Actにおけるステーブルコイン利回りに関する妥協案は、暗号資産業界に明確な規制の方向性を示す重要な一歩となりました。銀行預金に匹敵する利回りは禁止される一方で、「正当な活動」に紐づく報酬は容認されるという内容は、「Buy and Hold」から「Buy and Use」へのパラダイムシフトを促します。業界からは、規制の明確化を歓迎する声がある一方で、その適用範囲の広さに対する懸念も表明されています。しかし、全体としては、米国が暗号資産分野でのリーダーシップを確立するための前向きな動きとして捉えられており、今後の法案審議とその影響が注目されます。

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