米投資銀行大手のジェフェリーズ(Jefferies)は、今後2年間で仮想通貨およびブロックチェーン関連企業の公開市場デビューが急増し、5年以内にはこのセクターが1兆ドル(約157兆円)規模の巨大な公開市場に成長するという強気の見通しを示しました。機関投資家の関心が、単なるビットコインの価格投機から、ブロックチェーン技術を既存の金融インフラへ統合すること、特に資産の「トークン化」へと明確にシフトしていることが背景にあります。
ジェフェリーズが描く「1兆ドル」規模の仮想通貨IPO市場
ニューヨークで開催されたジェフェリーズ主催の「第1回デジタル資産投資家会議」において、ウォール街の専門家たちは仮想通貨セクターの将来について極めて楽観的な見解を共有しました。この会議には、35のデジタル資産関連企業の幹部と約150の機関投資家が集まり、次世代の金融インフラとしてのブロックチェーンの可能性が議論されました。
ジェフェリーズのレポートによると、仮想通貨関連企業のIPO(新規株式公開)は、2025年の活況を経て、2026年前半はマクロ経済の不透明感から一時的に減速したものの、後半に向けて再び波が訪れると予測されています。この5年間で形成される「1兆ドル市場」という数字は、単なる企業の時価総額の合計を指すだけでなく、ブロックチェーン上に構築された金融エコシステム全体が伝統的な株式市場において正当な評価を得ることを意味しています。
これまで仮想通貨企業のIPOといえば、Coinbaseのような取引所が中心でしたが、今後はカストディ、決済、インフラ開発、そしてRWA(現実資産)のトークン化に特化した企業など、より多様なプレイヤーが市場に参入することが期待されています。
投機からインフラへ:機関投資家の関心が「トークン化」にシフト
ジェフェリーズの指摘で最も注目すべき点は、機関投資家の視点が「ビットコインの価格」から「ブロックチェーンによる金融システムの効率化」へと移行していることです。数年前までは、デジタル資産への投資はボラティリティを利用した短期的な投機が主流でしたが、現在は金融の根幹を支えるインフラとしての価値が再評価されています。
具体的には、以下の3つの領域が機関投資家の主要な関心事となっています:
- トークン化マネー・マーケット・ファンド (MMF): 伝統的な投資信託をオンチェーンで運用し、流動性と透明性を高める試み。
- プライベート・クレジット: ブロックチェーンを活用した融資プラットフォームにより、中小企業や新興市場への資金供給を効率化する。
- 決済ネットワーク: 銀行間決済やクロスボーダー送金を、数日単位から数秒単位へと高速化し、コストを削減する。
投資家たちは、ブロックチェーンがもはや「実験的な技術」ではなく、銀行、証券取引所、資産運用会社、決済企業が自らのコアシステムに統合すべき「必須のインフラ」であると確信し始めています。
トークン化(RWA)が既存金融の資本効率を劇的に改善する
ジェフェリーズが1兆ドル市場への最大の原動力として挙げているのが「トークン化(Tokenization)」、すなわち現実資産(RWA: Real World Assets)をブロックチェーン上で表現するプロセスです。これには、不動産、国債、未公開株式、美術品などが含まれます。
トークン化によってもたらされるメリットは多岐にわたりますが、特に重視されているのが「資本効率の向上」です。従来の金融システムでは、取引の成立から清算(セトルメント)までに数日を要することが一般的ですが、ブロックチェーンを利用すれば即時決済が可能になります。これにより、待機資金の拘束期間が短縮され、市場全体の流動性が向上します。
また、24時間365日稼働する決済ネットワークは、従来の銀行営業時間に縛られないグローバルな資本移動を可能にします。ステーブルコインやトークン化された決済手段は、この変化の最前線にあり、短期的には最も成長が期待される分野です。ジェフェリーズの会議に参加した経営幹部たちは、大手金融機関が仮想通貨ネイティブのプロバイダーと提携し、低コストで効率的な支払いシステムを構築する動きが加速していると報告しています。
2026年後半に期待される大型IPO:KrakenやSecuritizeの動向
市場が注目しているのは、具体的にどの企業が次のIPOの波に乗るのかという点です。ジェフェリーズのレポートでは、いくつかの主要企業がIPOの準備を最終段階に進めていることが示唆されています。
特に注目を集めているのが、大手仮想通貨取引所Krakenの親会社であるPaywardです。Krakenは長年IPOが噂されてきましたが、2025年のビットコイン価格上昇と投資家心理の回復を受けて、いよいよ市場参入が現実味を帯びています。また、RWAのトークン化プラットフォームを運営するSecuritizeも、機関投資家からの支持を背景に上場を計画している有力候補の一つです。
これらの企業が上場に成功すれば、仮想通貨セクターへの信頼性がさらに高まり、さらなる機関投資家の資金流入を招くという好循環が生まれます。2025年のIPOブームがビットコイン価格に牽引されたものであったのに対し、2026年以降の第2波は、より強固な収益基盤と実用的なユースケースを持つ企業が中心となると見られています。
ステーブルコインと決済ネットワーク:実需に基づくブロックチェーン活用
ジェフェリーズのレポートで強調されているもう一つの重要な側面は、ステーブルコインの役割です。ステーブルコインは、暗号資産市場におけるボラティリティを回避するための手段として始まりましたが、現在は「効率的な決済手段」としての地位を確立しつつあります。
伝統的な金融機関は、ステーブルコインを利用することで、既存のSWIFTネットワークなどの高コストな決済インフラをバイパスし、より安価で高速な取引を提供することを目指しています。特に、企業間(B2B)のクロスボーダー決済において、その優位性は顕著です。
「クライアントの関心は、銀行、取引所、資産運用会社、フィンテック企業がブロックチェーン・インフラを統合するにつれて、それらの恩恵を受ける新興企業へと移っている」とジェフェリーズは述べています。これは、単に「仮想通貨を買う」時代から、ブロックチェーンという「パイプライン」を保有する企業に投資する時代への転換を意味しています。
まとめ:金融インフラの再定義と1兆ドルへの道
ジェフェリーズの予測によれば、仮想通貨・ブロックチェーン市場は、5年以内に1兆ドルという巨大な公開市場へと変貌を遂げようとしています。その中心にあるのは、投機的な熱狂ではなく、金融システムの根幹を改善しようとする実利的な取り組みです。
「トークン化」と「インフラ統合」という2つのキーワードが、今後の市場を牽引することは間違いありません。DEX(分散型取引所)やDeFi(分散型金融)のエコシステムも、こうした伝統的な金融機関の参入やRWAの導入によって、より強固で信頼性の高いものへと進化していくでしょう。
投資家にとって、この1兆ドル市場への移行は、アルファ(市場平均を超える収益)を求める絶好の機会となると同時に、金融の歴史における大きな転換点を目撃することになるでしょう。2026年後半からのIPOラッシュは、その序章に過ぎません。
sources:
- https://www.coindesk.com/markets/2026/05/27/crypto-ipos-could-create-massive-usd1-trillion-market-amid-tokenization-wave-jefferies-says
- https://www.jefferies.com/ (Official Research Reports referenced via News Outlets)
- https://www.kraken.com/ (Payward/Kraken Corporate Info)
- https://securitize.io/ (Tokenization/RWA sector trends)





