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Ethereum次期Hegotáアップグレード解説|プライバシー改善案
Ethereumアップグレード·7分で読める

Ethereum次期Hegotáアップグレード解説|プライバシー改善案

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-08-18

📋 この記事のポイント

  • 1アプリや別のアカウントがユーザーのガス代を負担する
  • 2トークン承認とUniswapでのスワップなど、複数の操作を一つの取引としてまとめる
  • 3複数署名や異なる暗号方式を使い、同じアカウントを維持しながら承認条件を変更する
  • 4複数の操作を一括実行し、途中で失敗した場合はまとめて取り消す
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Ethereum開発者は、2027年の実装候補とされる次期大型アップグレード「Hegotá」の対象を選定している。検討中の66件には、取引の承認・実行・手数料支払いを柔軟にするFrame Transactionsと、プライバシー決済を支える関連提案が含まれる。

ただし、これらは採用決定済みではない。現時点で承認された変更は、検閲耐性を高めるFOCILのみであり、残る提案は今後の実装、開発ネットワーク、テストネットを通じて絞り込まれる。

Ethereum次期アップグレード「Hegotá」とは

Hegotáは、Ethereumが2027年の実装候補として範囲を検討している次期大型アップグレードだ。CoinDeskの2026年8月17日付報道によると、候補には66件のEthereum Improvement Proposal、通称EIPが挙がっている。

EIPは、Ethereumのコンセンサス、実行環境、トランザクション形式、アプリケーション標準などを改善するための仕様提案である。候補に入っただけでEthereumへ導入されるわけではなく、コア開発者会議での議論、複数クライアントへの実装、開発ネットワークやテストネットでの検証を経なければならない。

今回の焦点の一つが、Ethereum上でプライバシーに配慮した決済を構築しやすくすることだ。Ethereumの通常のアドレスと取引履歴は公開されており、ETH送金やUniswapなどのDEXを利用したスワップも、アドレスを起点にオンチェーンで追跡できる。これは検証可能性を支える一方、給与支払い、企業財務、個人の資産管理では情報を公開しすぎる問題につながる。

HegotáではEthereum自体を完全な匿名ネットワークに変えるのではなく、プライバシーアプリが現在外部インフラで補っている機能の一部を、プロトコル側へ取り込む案が検討されている。

中核候補EIP-8141「Frame Transactions」

プライバシー関連パッケージの中心が、EIP-8141「Frame Transactions」だ。これは新しいトランザクション形式を導入し、一つの取引を複数の「フレーム」に分けて、検証、送信者としての実行、通常実行などの役割を組み立てられるようにする提案である。

現在のEthereumでは、一般的なEOAウォレットの署名方式、送信者、手数料の支払者が強く結び付いている。EIP-8141では、アカウントが取引をどのように承認し、何を実行し、誰がガス代を支払うかを柔軟に定義できる。

具体的には、次のようなウォレット体験が想定される。

  • アプリや別のアカウントがユーザーのガス代を負担する
  • トークン承認とUniswapでのスワップなど、複数の操作を一つの取引としてまとめる
  • 複数署名や異なる暗号方式を使い、同じアカウントを維持しながら承認条件を変更する
  • 複数の操作を一括実行し、途中で失敗した場合はまとめて取り消す

ERC-4337のAccount Abstractionでも、BundlerやPaymasterを利用して類似のユーザー体験を構築できる。ただしEIP-8141は、トランザクションの実行形式そのものをEthereumへ追加する点が異なる。外部サービスへの依存を減らせる可能性がある一方、ウォレット、ノード、ブロックビルダーなど広い範囲に変更が及ぶため、実装上の検証が重要になる。

Keyed Noncesがプライバシー決済を支える理由

EIP-8141と組み合わせて検討されているのが、EIP-8250「Keyed Nonces for Frame Transactions」だ。通常のEthereumアカウントは、取引ごとに連続したnonceを使用する。先に送った取引が保留されると、それ以降の取引も順番待ちになることがある。

この仕組みは、複数の利用者が一つの共有送信者を使うプライバシーアプリにとって大きな制約になる。利用者ごとに公開アドレスを割り当てれば識別されやすくなる一方、全員が一つの送信者を共有すると、一人の保留取引が別の利用者の処理を妨げかねない。

EIP-8250は、単一のnonce系列を複数の独立したnonce領域へ分ける。異なるnonce keyを使う取引は、リプレイ保護上の順序依存を分離できるため、共有送信者を利用するプライバシー決済や、複数のセッションキーを持つスマートウォレットを並行処理しやすくなる。

プライバシープロトコルでは、使用済みの証明を判定するnullifierなどからnonce keyを導出する設計が考えられる。支払い承認と同時に対応するnonceを消費すれば、後続のフレームが失敗しても同じ権限を再利用できない仕組みを作れる。ただしnonce key自体はトランザクション上で可視であり、EIP-8250だけで送信額や送信先が秘匿されるわけではない。

EIP-8272「Recent Roots」の役割

三つ目の関連提案がEIP-8272「Recent Roots for Frame Transactions」である。これは、アプリケーションが登録した直近のMerkle rootなどを、Frame Transactionから参照できるようにする仕組みだ。

プライバシーアプリは、ユーザーの預入や権利を直接公開する代わりに、複数のデータをまとめたrootとゼロ知識証明を使う場合がある。しかし取引を検証するには、その証明がどの時点の正しいrootに基づくのかを確かめなければならない。アプリ独自のコントラクトやリレイヤーだけで管理すると、追加の状態確認やインフラが必要になる。

EIP-8272では、アドレスとsaltから識別されるroot sourceがrootを書き込み、後続のFrame Transactionがsource、slot、rootの組み合わせを参照する。コンセンサスはrootの中身を解釈せず、アプリ側がその意味を定義する。

例えば、プライバシー決済プロトコルが預入集合のrootを登録し、EIP-8141の検証フレームで証明を確認する構成が考えられる。Ethereumが個別アプリのプライバシー方式を固定するのではなく、複数の証明システムが利用できる共通部品を提供する考え方だ。

一般のETH送金やDEX取引は匿名化されない

今回の提案で最も注意すべき点は、Ethereum全体が自動的に匿名化されるわけではないことだ。通常のETH送金、ERC-20トークンの移転、UniswapなどのDEXとの直接的なやり取りは、従来どおり公開台帳へ記録される。

Frame Transactions、Keyed Nonces、Recent Rootsは、プライバシーアプリを構築するための認証、並行処理、状態参照を改善する提案であり、暗号化やゼロ知識証明そのものを一括提供する仕様ではない。秘匿性を実現するには、アプリ側で証明方式、共有送信者、資金プール、リレイヤーや手数料支払いの設計を組み合わせる必要がある。

利用者にとっても、対応ウォレットを使うだけで過去の履歴が消えるわけではない。公開アドレスからプライバシーアプリへ資金を移せば、その入口は観測され得る。DEX利用者は「どの項目が隠れるのか」「入出金の関連付けをどう防ぐのか」「監査や規制対応をどう行うのか」を、各プロジェクトの公式仕様で確認する必要がある。

採用済みのFOCILと今後の選定プロセス

CoinDeskの報道時点でHegotáへの採用が承認されているのは、EIP-7805「FOCIL」だけだ。FOCILはFork-choice enforced Inclusion Listsの略で、選ばれたバリデータ委員会が取引の包含リストを作成し、ブロック提案者やビルダーによる恣意的な取引排除を難しくする。

これはプライバシー機能ではなく、Ethereumの検閲耐性を改善する提案である。ブロック構築が専門事業者へ集中した場合でも、バリデータが確認した取引を適時ブロックへ含めるための制約を設ける。

一方、EIP-8141、EIP-8250、EIP-8272を含む残りの候補は未決定だ。今後のコア開発者会議で候補が絞られ、クライアント実装、devnet、testnetへ進めるかが判断される。仕様書にも未確定の定数や有効化時期が残っているため、ウォレットやDeFi開発者は採用を前提に製品ロードマップを確定すべき段階ではない。

実務上は、各EIPのステータス、Ethereumコア開発者会議、主要クライアントの実装状況を追う必要がある。2027年という時期も目標であり、正式なアップグレード内容と実施日は今後変わる可能性がある。

まとめ

EthereumのHegotáでは66件の提案が検討され、プライバシーアプリの基盤となり得るEIP-8141、EIP-8250、EIP-8272が注目されている。Frame Transactionsは承認・実行・手数料支払いを柔軟にし、Keyed Noncesは共有送信者の並行処理を改善し、Recent Rootsは証明に必要な状態参照を支える。

これらが実装されても、通常のETH送金やUniswapなどのDEX取引が自動的に非公開になるわけではない。目的は、プライバシー機能を持つアプリが外部インフラへ過度に依存せず、Ethereum上で必要な処理を組み立てやすくすることにある。

現時点でHegotáへの採用が承認されたのはFOCILのみだ。DEX利用者や開発者は、候補段階の仕様と確定したアップグレードを区別し、Ethereum公式EIPとコア開発者の決定を継続的に確認する必要がある。

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