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TetherとCircleに流動性危機の懸念、米国債保有でもデペグを防げない理由とは
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TetherとCircleに流動性危機の懸念、米国債保有でもデペグを防げない理由とは

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-05-20

📋 この記事のポイント

  • 1Curve 3poolの不均衡: USDT/USDC/DAIの比率が大きく崩れ、特定の通貨が過剰になった場合は、大口投資家がその通貨を「売り抜けている」サインです。
  • 2スリッページの拡大: 数百万ドル単位の交換で価格が大きく動くようになった場合、市場の流動性が枯渇し始めています。
  • 3予備の避難先: 特定の銘柄に依存せず、DAI(過剰担保型)やLUSD(非中央集権型)など、異なるリスクプロファイルを持つ資産への分散を検討すべきです。ただし、DAIも裏付けにUSDCを含んでいるため、完全な相関回避には注意が必要です。
  • 4裏付け資産の罠: 米国債は安全だが、短時間の大量売却には限界がある。
  • 5Tetherの規模: 1,410億ドルの米国債を保有し、依存度は約74%。
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ステーブルコイン市場の巨人であるTether(USDT)とCircle(USDC)は、その裏付け資産の大部分を「世界で最も安全な資産」とされる米国財務省証券(米国債/T-bills)で運用しています。しかし、2026年5月に報じられた専門家の分析によれば、たとえ「山のような米国債」を保有していても、急激な流動性危機(リクイディティ・クライシス)が発生した場合、これらのプロジェクトが価格乖離(デペグ)を完全に回避することは困難である可能性が浮上しています。本記事では、ステーブルコインが直面する「流動性のミスマッチ」の本質と、投資家が注視すべきリスクについて深掘りします。

米国債1400億ドルの「壁」でも防げない?ステーブルコインの流動性リスク

2026年現在、Tether社が保有する米国債の規模は、一部の主要先進国を上回るレベルに達しています。しかし、CoinDeskが報じた最新のレポートによると、金融市場のパニック時には「資産が安全であること」と「即座に現金化できること」は同義ではないという厳しい現実が指摘されています。

ステーブルコインの仕組みは、ユーザーが1ドル分のトークンを返却した際、発行体が即座に1ドルの現金を払い戻すことに依存しています。しかし、裏付け資産の多くが米国債として運用されている場合、発行体は市場でその債券を売却して現金を作る必要があります。平時であれば問題ありませんが、数時間で数百億ドル規模の償還(Redemption)が殺到した場合、二次市場での売却スピードが償還スピードに追いつかず、一時的な支払い不能状態に陥るリスクがあるのです。

TetherとCircleの現状:2026年第1四半期の資産構成

最新の透明性レポート(2026年3月末時点)を比較すると、両者の資産構成には明確な特徴が見られます。

Tether (USDT)

Tetherの総資産は約1,917.7億ドルに達し、そのうち約1,410億ドル(約73.52%)が米国債で占められています。年初の83%超という比率からはやや低下したものの、依然として米国債への依存度は極めて高い水準です。金利収入による利益は過去最高を更新しており、資本のクッション(超過準備金)も積み上がっていますが、その運用の大部分が伝統的金融システム(TradFi)のインフラに依存している点は変わりません。

Circle (USDC)

Circleはより規制準拠を強調しており、米国債の保有に加え、ブラックロック(BlackRock)が管理する「Circle Reserve Fund」を通じた運用を行っています。2026年3月のデータでは、約249億ドルの米国債と、約407億ドルのレポ取引(米国債を担保とした短期資金貸付)を組み合わせています。レポ取引は直接の債券保有よりも流動性が高いとされますが、銀行システム全体が凍結するような事態では同様に影響を受ける可能性があります。

「流動性のミスマッチ」とは何か?専門家が鳴らす警鐘

専門家が最も懸念しているのは、ステーブルコインの「負債(トークン発行額)」は即時払い戻しが求められるオンデマンド型であるのに対し、「資産(米国債など)」は売却に時間を要する市場依存型であるという「流動性のミスマッチ」です。

  1. 市場の厚み(マーケット・デプス)の限界: 米国債市場は世界最大ですが、それでも短時間に数十兆円規模の売り注文を吸収しようとすれば、価格が下落(スリッページ)します。
  2. 決済インフラの遅延: ブロックチェーンは24時間365日動いていますが、米国債の売却や銀行振込は銀行の営業時間に縛られます。週末にパニックが発生した場合、発行体は「資産はあるが、送金する現金がない」という状況に追い込まれるリスクがあります。
  3. 中央銀行の不在: 伝統的な銀行であれば、一時的な資金不足に対して中央銀行(FRB等)が「最後のリゾート」として資金を貸し付けますが、暗号資産の発行体にはそのようなセーフティネットが存在しません。

米国ステーブルコイン法(GENIUS Act)と規制の二面性

2025年7月に成立した「GENIUS Act(payment stablecoin法)」により、米国内でのステーブルコイン発行は厳格なライセンス制となりました。2026年5月現在、FinCENやOCC(米通貨監督庁)が具体的な施行規則を策定中であり、発行体には1:1の現金、または極めて流動性の高い資産での裏付けが義務付けられています。

この規制は一見、安全性を高めるように見えますが、一方で「全ての発行体が同じ資産(米国債)を持つこと」を強いるため、市場全体が同じリスクに晒される「システミック・リスク」を助長しているという批判もあります。もし米国債市場そのものに混乱が生じた場合、規制に準拠しているステーブルコインほど、一斉に機能を停止してしまう可能性があるからです。

DeFiユーザーが備えるべき「デペグ」へのシナリオ

DEX(分散型取引所)やレンディングプロトコルを利用するユーザーにとって、ステーブルコインのデペグは致命的です。Curve FinanceやUniswapの流動性プールを監視することで、危機の予兆を察知できる場合があります。

  • Curve 3poolの不均衡: USDT/USDC/DAIの比率が大きく崩れ、特定の通貨が過剰になった場合は、大口投資家がその通貨を「売り抜けている」サインです。
  • スリッページの拡大: 数百万ドル単位の交換で価格が大きく動くようになった場合、市場の流動性が枯渇し始めています。
  • 予備の避難先: 特定の銘柄に依存せず、DAI(過剰担保型)やLUSD(非中央集権型)など、異なるリスクプロファイルを持つ資産への分散を検討すべきです。ただし、DAIも裏付けにUSDCを含んでいるため、完全な相関回避には注意が必要です。

まとめ:安全資産の「質」から「換金速度」の時代へ

2026年のステーブルコイン市場は、時価総額の拡大とともに「大きすぎて潰せない(Too Big to Fail)」存在へと成長しました。しかし、今回の専門家の指摘が示す通り、米国債という「資産の質」だけでは、突発的な取り付け騒ぎを防ぐことはできません。

投資家やDeFiユーザーに求められるのは、発行体の財務諸表に記載された金額を鵜呑みにするのではなく、その資産が「いつ、どのような条件下で現金化できるのか」という流動性インフラまでを見極める視点です。ステーブルコインは便利なツールですが、あくまで「銀行ではない民間企業」が発行しているリスク資産であることを忘れてはなりません。

記事のポイント

  • 裏付け資産の罠: 米国債は安全だが、短時間の大量売却には限界がある。
  • Tetherの規模: 1,410億ドルの米国債を保有し、依存度は約74%。
  • 規制の壁: 銀行休業日や決済システムの遅延がデペグを誘発する恐れ。
  • 防御策: DEXのプール状況を注視し、特定の銘柄に資産を集中させない。

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