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HyperliquidのUSDC提携とHYPEへの影響:Coinbase・Circle収益への圧力
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HyperliquidのUSDC提携とHYPEへの影響:Coinbase・Circle収益への圧力

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-05-19

📋 この記事のポイント

  • 1HyperliquidがCoinbase/CircleとUSDC提携を締結。
  • 2基軸通貨としてのUSDC採用と収益シェアがHYPEトークンに与える影響、発行体の収益減予測を詳しく解説。
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HyperliquidがCoinbaseおよびCircleと締結した戦略的提携により、USDCが同プラットフォームの公式な基軸通貨(Aligned Quote Asset: AQA)として採用されました。この動きは独自トークンHYPEの価値を劇的に高める一方で、ステーブルコイン発行体であるCircleやCoinbaseの収益マージンを圧迫する可能性があり、DeFi市場の力学を再定義するものとして注目されています。

HyperliquidとUSDC提携の全容:USDHからUSDCへの移行

2026年5月、Hyperliquidはステーブルコインの利用環境を劇的に刷新する大規模な提携を発表しました。これまで同プラットフォームで利用されていたNative Markets開発のステーブルコイン「USDH」を段階的に廃止し、業界標準である「USDC」をプラットフォーム全体の主要な決済および担保資産(AQA)として採用することを決定しました。

この提携に基づき、CoinbaseはHyperliquidネットワークにおける「公式USDCトレジャリー・デプロイヤー」としての役割を担います。これは単なる流動性の提供に留まらず、CoinbaseがHyperliquid上のUSDC流動性を直接管理し、その運用から得られる準備金利益(リザーブ・イールド)の大部分をHyperliquidプロトコルと共有するという画期的なスキームを含んでいます。

また、Circleは技術的なバックボーンとして参加し、同社のCross-Chain Transfer Protocol(CCTP)をHyperliquidに統合します。これにより、ユーザーは異なるブロックチェーン間でのUSDC移動をネイティブかつシームレスに行うことが可能になり、ブリッジのリスクや摩擦が大幅に軽減されます。

HYPEトークンへの波及効果:CoinbaseとCircleによるステーキングの意義

今回の提携がHyperliquidのネイティブトークンである「HYPE」に与える影響は極めてポジティブです。提携条件の一環として、CoinbaseとCircleの両社は、Hyperliquidネットワークのセキュリティとガバナンスに寄与するため、HYPEトークンを直接ステーキングすることを表明しました。

機関投資家級のプレイヤーがトークンをステーキングすることは、HYPEの需給バランスを改善するだけでなく、プロジェクトの長期的な信頼性を担保する強力なファンダメンタルズとなります。アナリストの予測によれば、この発表を受けてHYPEの市場価格は急騰しており、今後L1としてのHyperliquidの利用が拡大するにつれて、トークンのユーティリティと価値の相関がさらに強まると見られています。

また、提携による収益シェアの一部がHYPE保有者やステーキング報酬に還元される仕組みも検討されており、プロトコルの経済圏全体がUSDCの流動性を燃料として成長する循環構造が構築されています。

CircleとCoinbaseの収益マージンへの影響:数千万ドルの利益減少予測

一方で、この提携はステーブルコイン発行体にとっては諸刃の剣となる側面を持っています。CoinDeskの報道によると、今回の収益シェア契約により、CircleとCoinbaseの合算での年間EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が6,000万ドルから8,000万ドル程度減少する可能性があると試算されています。

これまで、ステーブルコイン発行体はユーザーから預かった裏付け資産(米国債など)から発生する金利収益を、その大部分を自社の利益として保持してきました。しかし、Hyperliquidのような高い成長率を誇るプラットフォームを囲い込むためには、収益をプロトコル側に還元せざるを得ない状況が生まれています。

これはステーブルコイン市場の「商品化(コモディティ化)」が進んでいることを示唆しており、発行体は単なる「発行」だけでなく、有力なL1やDEXとの戦略的な提携、そして収益の再分配を余儀なくされるフェーズに突入したと言えるでしょう。

DeFiにおけるL1の垂直統合:Hyperliquidの戦略的優位性

Hyperliquidが今回のような強力な交渉力を持てた背景には、同社が単なるDEXではなく、独自のL1(レイヤー1)ブロックチェーンとして垂直統合されたエコシステムを構築している点があります。高いスループットと低遅延を実現する独自のコンセンサスエンジン、そして強力なオンチェーンオーダーブック機能が、圧倒的な取引高とユーザー基盤を引き寄せています。

特定のプロトコルが自前のL1を運営し、その上で動く主要資産の収益権までも掌握するこのモデルは、「DeFiのAppChain(アプリ専用チェーン)化」の究極の形態とも言えます。HyperliquidはUSDCをAQAとして統合することで、流動性の断片化を防ぎつつ、最も資本効率の高いデリバティブ取引環境を構築することに成功しました。

これにより、dYdXやGMXといった他の競合DEXに対しても、手数料競争力や資本効率の面で大きな優位性を確立したと考えられます。

ユーザーと市場への影響:流動性の集約とシームレスな資金移動

一般ユーザーにとっての最大のメリットは、USDCという極めて信頼性の高い資産を基軸に、複雑なブリッジ操作なしでシームレスに取引が行えるようになることです。CCTPの統合により、Ethereum、Base、Arbitrum、Solanaなどの主要チェーンからHyperliquidへのUSDCの移動は、実質的に「ワンクリック」で完了するようになります。

また、USDHからUSDCへの移行期間中、Native MarketsはUSDHのブランド資産をCoinbaseに譲渡することに合意しており、既存のUSDH保有者は手数料なしでUSDCや法定通貨に交換できる救済措置が提供されます。このようなスムーズな資産移行は、ユーザーの資産保護と利便性の両立という観点から、他のプロトコルが参考にすべき先行事例となるでしょう。

2026年のステーブルコイン市場の展望

今回の提携は、2026年におけるステーブルコインとDeFiプロトコルの関係性が新たな段階に達したことを象徴しています。もはやステーブルコインは単なる「交換手段」ではなく、プロトコルの成長戦略と密接に結びついた「戦略的インフラ」へと進化しました。

今後、他の大手DEXやL1も、Hyperliquidに倣って発行体との収益シェア交渉を強めることが予想されます。これは短期的にはCircleやCoinbaseの利益を削る要因となりますが、長期的には暗号資産エコシステム全体の流動性を深化させ、Web3金融の普及を加速させる原動力となるはずです。

まとめ

HyperliquidによるUSDCの公式採用とCoinbase・Circleとの提携は、HYPEトークンの価値向上とプラットフォームの流動性強化という面で、DeFi市場における歴史的な転換点となりました。一方で、ステーブルコイン発行体が利益の大部分をプロトコル側に譲歩するという構図は、既存のビジネスモデルに大きな変革を迫っています。

投資家やユーザーは、HYPEのステーキング動向や、USDCの移行プロセスを注視すると同時に、こうした「収益シェアモデル」が他のプロジェクトへどのように波及していくかを見極める必要があります。Hyperliquidは今回の提携を通じて、次世代の金融インフラとしての地位を確固たるものにしました。

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