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ナスダック社長が語る、SEC仮想通貨規制緩和の波と金融の未来
仮想通貨規制·13分で読める

ナスダック社長が語る、SEC仮想通貨規制緩和の波と金融の未来

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-05-07

📋 この記事のポイント

  • 12026年、ナスダックのタリ・コーエン社長はSECの新たな仮想通貨スタンスが市場の「構築」を再開させると発言。
  • 2トークン化、24時間取引、伝統金融との融合が加速する中で、DEX/DeFi市場への影響を深掘りします。
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米国SECの仮想通貨規制、柔軟化の背景とナスダックの見解

米国証券取引委員会(SEC)の仮想通貨に対するスタンスが変化し、市場参加者が再び「構築(build)」できる環境が整いつつあります。ナスダックのタリ・コーエン社長は、SECのより建設的なアプローチが、ブロックチェーンインフラやトークン化された資産に関する実験の余地を広げていると指摘。これにより、長年の規制の不確実性が払拭され、イノベーションが加速する可能性が高まっています。この変化は、伝統金融とデジタル資産の融合を推進し、金融市場全体の効率性とアクセシビリティを向上させるものとして注目されています。

コーエン社長は、かつて「飛行禁止区域」であった規制の「グレーゾーン」が、今や「構築できる」「規模を拡大できる」「批判を受けることなく実験できる」場所へと変化したと述べています。これは、機関投資家や大手企業がデジタル資産分野への参入を検討する上で、極めて重要な意味を持ちます。特に、DEX/DeFiエコシステムにとっては、伝統金融からの資金と技術の流入、そしてより明確な規制ガイドラインの確立が、次の成長段階への鍵となります。

ナスダックが注力する「常時稼働市場インフラ」とトークン化

ナスダックのタリ・コーエン社長は、現在の金融市場における大きなトレンドとして「常時稼働(always-on)市場インフラ」と「伝統金融システムとデジタル資産システムの融合」の二つを挙げています。ナスダックは、世界130以上の市場に取引技術を提供する立場から、これらのトレンドに対応するため、ブロックチェーンインフラ、トークン化、そして人工知能(AI)への投資を積極的に行っています。

「常時稼働市場インフラ」とは、ほぼ24時間体制で稼働し、従来のインフラよりも迅速に資金、証券、担保を移動できるシステムを指します。これにより、市場の流動性と効率性が飛躍的に向上します。例えば、ナスダックは2026年後半までに、暗号資産市場の影響を受け、自身のプラットフォームでの24時間取引導入を準備していると報じられています1。これは、投資家に大きな柔軟性を提供し、グローバル市場との連携を強化するものです。

トークン化は、不動産や貴金属、アート作品といった実物資産(Real World Assets: RWA)をブロックチェーン上でデジタル表現する技術として、金融業界で大きな注目を集めています。これにより、流動性の低い資産でも細分化して取引できるようになり、より多くの投資家がアクセスできるようになります。近年では、MakerDAOが米ドルペッグのステーブルコインDAIの担保として米国債トークンを導入したり、Ondo FinanceがBlackRockの短期国債ETFに連動するトークン化ファンドを提供したりするなど、具体的なプロジェクトが伝統金融とデジタル資産の橋渡しを進めています。ナスダックは、既存の規制された株式市場とブロックチェーンネットワークを統合する新しい株式トークン設計を通じて、トークン化された証券の取引と決済を可能にするための取り組みを進めており、2026年3月にはSECから特定株式およびETFのトークン化取引・決済に関する提案が承認されています2。また、清算機関であるDTCCのブロックチェーン決済インフラは2026年第3四半期末までに準備が整う予定であり、ナスダックの取り組みはこのようなトークン化された資産が、既存の証券市場と同等の信頼性と効率性で取引されるための基盤を整備することを目指しています3

また、ナスダックはAI技術の活用にも積極的です。例えば、ナスダックはAIを用いてマッチングエンジンのシミュレーションを行い、ストレスシナリオをモデル化したり、取引時間の延長をサポートしたりする研究を進めています。これにより、市場の安定性と耐久性を高めつつ、新たなサービス提供の可能性を模索しています。

伝統金融とデジタル資産の「融合」における課題と可能性

タリ・コーエン社長が強調するもう一つのトレンドは、伝統金融システムとデジタル資産システムの「融合」です。現状、多くの金融機関は、伝統的な証券とトークン化された資産のために別々のインフラを運用しており、これが効率性のボトルネックとなっています。コーエン氏は、企業が両方の世界の利点を享受できるよう、これらを統合することの重要性を訴えています。

この融合を実現する上での最大のハードルの一つが「相互運用性(interoperability)」です。異なるブロックチェーンネットワーク間、あるいはブロックチェーンネットワークと既存の金融インフラとの間で、資産や情報がシームレスに移動できる必要があります。例えば、企業の資金調達において、社債のトークン化を検討する場合、そのトークンが既存の証券取引所や決済システムとどのように連携するのかが重要になります。

この課題を解決するために、様々なDEX/DeFiプロジェクトが相互運用性ソリューションを開発しています。例えば、CosmosエコシステムのIBC(Inter-Blockchain Communication)プロトコルは、異なるブロックチェーン間の資産転送と通信を可能にし、流動性の断片化を解消することを目指しています。また、PolkadotのRelay ChainとParachainの構造も、異なる専門機能を持つブロックチェーン間の相互運用性を高める設計思想に基づいています。

伝統金融の側では、JPMorganのOnyxのようなプロジェクトが、ブロックチェーンを活用した機関投資家向けの支払いシステムや債券発行プラットフォームを提供し始めており、これがデジタル資産との融合に向けた一歩となっています。これらの動きは、将来的には、株式、債券、プライベートエクイティなどのあらゆる伝統的な金融資産がトークン化され、デジタルプラットフォーム上で取引・管理される未来を示唆しています。DEX/DeFi市場の観点から見れば、このような伝統金融資産のトークン化は、DEXにおける取引ペアの多様化、流動性の増加、そしてより多くの機関投資家資金の流入を促す可能性を秘めています。

規制当局の建設的な姿勢が市場にもたらす変化

タリ・コーエン社長は、米国証券取引委員会(SEC)の姿勢が以前よりも「はるかに建設的」になっていると強調しています。かつて仮想通貨業界にとって「飛行禁止区域」であった「グレーゾーン」が、今や「構築できる」場所へと変化し、規制の不確実性の中で身動きが取れなかった企業が、実験し、規模を拡大し、革新を進める余地が生まれています。コーエン氏の言葉からは、SECが単にオープンマインドなだけでなく、積極的に市場と協力しようとする姿勢が見て取れます。ナスダック自身も、2026年SECのトークン化証券に関するスタッフ声明に沿って、デジタル資産の明確なフレームワークを確立するために規制当局と積極的に連携しています4

この規制環境の変化は、仮想通貨市場全体にポジティブな影響を与えています。例えば、2024年1月に米国で承認されたビットコイン現物ETFは、機関投資家が規制された形でビットコインにアクセスする道を開き、市場の透明性と信頼性を向上させました。これにより、これまで仮想通貨市場への参入に慎重だった大手金融機関も、より安心してデジタル資産分野への関与を深めることができるようになりました。ナスダックはビットコインおよびイーサリアムの現物ETFに連動するオプションのポジション制限を撤廃し、他のコモディティベースのファンドと同様に扱っています5。これは、デジタル資産が伝統金融市場で受け入れられつつある明確な兆候です。

DEX/DeFiの領域においても、規制の明確化は重要な意味を持ちます。DEXは中央集権的な管理者を介さずに取引を行うため、従来の金融規制の枠組みに当てはめることが難しく、法的な不確実性が常に付きまとっていました。しかし、SECがより建設的な対話を進めることで、DEX運営者や開発者は、どのようなフレームワークの中でサービスを構築すべきか、より明確な指針を得られるようになる可能性があります。これにより、コンプライアンスを意識したDEXプロトコルの開発が加速し、より多くのユーザーや機関投資家が安心してDEXを利用できるようになるでしょう。

例えば、Uniswapのような主要なDEXは、分散型ガバナンスを通じてプロトコルを運営していますが、将来的に規制当局との対話が進めば、KYC/AML(顧客確認/アンチマネーロンダリング)の要件を満たすためのソリューションや、特定のトークンに関する規制遵守の仕組みがDEXプロトコル自体に組み込まれる可能性も考えられます。これは、DEXがメインストリームの金融システムにより深く統合されるための重要なステップとなります。

トークン化が金融市場にもたらす革新

タリ・コーエン社長は、トークン化が最終的に資産の移動、資金調達、取引をより容易にし、発行者が株主に関するより良い洞察を得られるようにすると述べています。「それは資産を動かす」という彼の言葉は、トークン化の本質的な価値を示しています。ナスダックの報告書によれば、世界の金融機関の52%が2026年末までにトークン化された担保を積極的に管理すると予測されており、分散型台帳技術の広範な採用への移行を示唆しています6

トークン化された資産は、ブロックチェーン上で発行され、その所有権や履歴が透明かつ改ざん不能な形で記録されます。これにより、仲介者を減らし、取引プロセスを簡素化し、決済時間を短縮することが可能になります。例えば、不動産のような高額で流動性の低い資産をトークン化することで、小口での共同所有や、グローバルな市場での24時間365日の取引が可能になります。これにより、これまで富裕層に限られていた投資機会が一般投資家にも開放され、資本効率が大幅に向上する可能性があります。

DEX/DeFiの文脈では、トークン化は新たな金融商品の創出と取引の機会を無限に広げます。既に、Wrapped Bitcoin (wBTC) のように、ビットコインのようなネイティブでない資産をEthereumブロックチェーン上でトークン化し、DeFiプロトコルで利用できるようにする取り組みが成功を収めています。さらに、Synthetixのようなプロトコルは、実物資産、コモディティ、外国為替など、様々な資産の合成トークン(シンセティックアセット)を提供しており、これによりユーザーはDeFi環境内で幅広い資産のエクスポージャーを得ることができます。

企業側にとっても、トークン化は大きなメリットをもたらします。例えば、自社株をトークン化することで、より効率的な株主管理、配当金の自動支払い、あるいはグローバルな投資家からの資金調達が可能になるかもしれません。発行者はブロックチェーン上のデータを通じて、株主構成や取引状況をリアルタイムで把握し、よりデータに基づいた意思決定を行うことができるようになります。

DEX/DeFi市場への影響と今後の展望

ナスダックやSECのような伝統金融の主要プレイヤーがブロックチェーン、トークン化、そしてデジタル資産に対して前向きな姿勢を示すことは、DEX/DeFi市場にとって極めて重要な意味を持ちます。規制の明確化と伝統金融機関の参入は、DEX/DeFiの信頼性と正当性を高め、より多くのユーザーと資本を呼び込む触媒となるでしょう。

まず、機関投資家の参入が加速する可能性があります。規制当局がデジタル資産をより理解し、適切な監督枠組みを整備することで、ヘッジファンドや年金基金といった大手機関投資家が、リスクを管理しながらDeFiプロトコルに資金を投入しやすくなります。これにより、DEXの流動性が大幅に向上し、大口取引もより安定して実行できるようになるでしょう。

次に、DEXプロトコル自体も進化を遂げる必要があります。伝統金融からの資金流入に対応するためには、より高度なセキュリティ対策、堅牢なリスク管理フレームワーク、そして規制遵守を支援する機能(例えば、特定の条件下での取引制限やホワイトリスト化など)が求められるようになるかもしれません。既にAaveやCompoundのような主要なレンディングプロトコルでは、機関投資家向けのパーミッション型プール(Aave Arcなど)の導入が試みられており、これは伝統金融との融合に向けた具体的な動きと言えます。

また、実物資産のトークン化が進むことで、DEXにおける取引対象が仮想通貨だけでなく、株式、債券、不動産といった多岐にわたる資産へと拡大する可能性があります。これにより、DEXは真にグローバルで多様な資産を扱う次世代の金融市場へと変貌を遂げるかもしれません。例えば、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルの持分をトークン化し、DEX上でセカンダリー取引を行うことで、流動性の低い市場に新たな活気ををもたらすことも考えられます。

もちろん、この融合の道のりは平坦ではありません。技術的な相互運用性の課題、異なる法域間の規制の調和、そして既存の金融システムに深く根ざした慣習との摩擦など、多くの困難が予想されます。しかし、ナスダックのような業界の巨人が先導し、SECが建設的な姿勢を示すことで、デジタル資産が金融の未来を形成する上で不可欠な要素となることは間違いありません。DEX/DeFiは、この変革の中心に位置し、よりオープンで効率的、かつアクセスしやすい金融システムを構築する上で重要な役割を果たすでしょう。

まとめ

ナスダックのタリ・コーエン社長の指摘は、米国SECの仮想通貨に対する規制スタンスが変化し、市場のイノベーションを後押しする新たな局面に入ったことを明確に示しています。長年の規制不確実性の「グレーゾーン」が「構築可能なゾーン」へと移行したことで、市場参加者はブロックチェーンインフラやトークン化された資産に関する実験と拡大に自信を持つことができるようになりました。ナスダックは「常時稼働市場インフラ」と「伝統金融とデジタル資産の融合」に注力し、AIを活用しながら相互運用性の課題解決を目指しています。この規制当局の建設的な姿勢と大手企業の取り組みは、実物資産のトークン化を加速させ、DEX/DeFi市場に機関投資家の資金流入と多様な金融商品の創出をもたらす可能性を秘めています。金融の未来は、より効率的でアクセスしやすい、融合されたデジタル資産システムへと着実に進んでいます。


The content of this article is based on publicly available information and does not constitute investment advice. Investing in cryptocurrencies and DeFi carries inherent risks. 本記事の内容は公開されている情報に基づいており、投資助言を構成するものではありません。仮想通貨およびDeFiへの投資には固有のリスクが伴います。

Footnotes

  1. crypto.news: Nasdaq is preparing to introduce 24-hour trading on its platform by the second half of 2026. (https://crypto.news/nasdaq-preparing-to-launch-24-hour-trading-by-h2-2026/)

  2. wellesleyhillsfinancial.com: The U.S. Securities and Exchange Commission (SEC) approved Nasdaq's proposal to allow certain stocks and exchange-traded products to be traded and settled in tokenized form in March 2026. (https://wellesleyhillsfinancial.com/sec-approves-nasdaqs-tokenized-stock-trading-plan/)

  3. ledgerinsights.com: The Depository Trust & Clearing Corporation (DTCC) is a key partner in this effort, with plans for their blockchain settlement infrastructure to be ready by late Q3 2026. (https://www.ledgerinsights.com/nasdaq-securities-tokenization-dtcc-sec-approval/)

  4. nasdaq.com: Nasdaq is actively engaging with regulators to establish clear frameworks for digital assets. This includes aligning with the SEC's 2026 Staff Statement on Tokenized Securities. (https://www.nasdaq.com/press-release/nasdaq-and-dtcc-collaborate-to-advance-tokenized-securities-settlement)

  5. coinmarketcap.com: Nasdaq has removed position limits on options tied to spot Bitcoin and Ethereum exchange-traded funds (ETFs), treating them similarly to other commodity-based funds. (https://coinmarketcap.com/academy/article/nasdaq-removes-position-limits-on-bitcoin-ethereum-etf-options/)

  6. ledgerinsights.com: A Nasdaq report indicates that 52% of global financial institutions anticipate actively managing live tokenized collateral by the end of 2026. (https://www.ledgerinsights.com/tokenized-collateral-asset-management-institutional-blockchain/)

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