Bitmine Immersion Technologiesは、ETHを企業財務資産として大量に保有する「イーサリアム・トレジャリー企業」だ。同社は新たに27,562 ETHを取得し、総保有量を5,983,940 ETHまで増やした。
会長のTom Lee氏は暗号資産の強気相場がすでに始まったとの見方を示したが、これは経営陣による市場予測であり、価格上昇が保証されたわけではない。DEX・DeFi利用者にとって重要なのは、ETHの企業保有とステーキングが、流通量や流動性、市場の集中度にどう影響するかである。
Bitmineが27,562 ETHを追加取得
Decryptが2026年9月21日に報じたところによると、ニューヨーク証券取引所に上場するBitmine Immersion Technologiesは、直近1週間で27,562 ETHを追加取得した。Decryptはこの取得分を約7,400万ドル相当と報じているが、Bitmineの公式発表には実際の取得総額や平均取得単価は記載されていない。
米SECへ提出された資料によると、2026年9月20日午後9時(米東部時間)時点のETH保有量は5,983,940 ETH。会社が評価に使用したCoinbase価格は1 ETH当たり2,688ドルで、ETH保有額は約161億ドルとなる。
Bitmineは、ETHトレジャリー戦略を開始した2025年6月30日以降、毎週ETHを取得してきたと説明している。StrategyがBitcoinを主要な財務資産として蓄積してきたのに対し、BitmineはEthereumを中心に据え、保有だけでなくステーキングも組み合わせている点が特徴だ。
ただし、企業による継続購入は市場の下値を必ず支えるものではない。購入規模、資金調達方法、株式の希薄化、ETH価格の変動を併せて確認する必要がある。
ETH供給量の5%を目指す「Alchemy of 5%」
Bitmineは、Ethereumの総供給量の5%を取得する目標を「Alchemy of 5%」と呼んでいる。同社が基準として示すETH供給量は1億2,210万ETHで、現在の保有比率は4.9%。会社の計算では目標の98%まで到達した。
5%という数字はBitmine独自の財務目標であり、Ethereumプロトコル上の特別な権利を得られる基準ではない。ETHの保有量だけで、Ethereumのコード変更やネットワーク運営を単独で決定できるわけでもない。
一方、単一企業にこれほど多くのETHが集中することは、市場構造の観点から無視できない。長期保有やステーキングによって取引市場へ出るETHが減れば、需給が引き締まる可能性がある。反対に、Bitmineが資金需要や財務上の理由から大量売却すれば、DEXと中央集権型取引所の双方で流動性や価格へ影響が及ぶ恐れがある。
したがって、5%到達そのものを単純な強気材料として扱うのではなく、保有ウォレット、ステーキング状況、資金調達条件、売却方針を継続的に見ることが重要だ。
Tom Lee氏が語る「強気相場」の根拠
Tom Lee氏は、暗号資産の強気相場が2026年6月下旬に始まったとの見方を示した。その背景として、AI関連株から暗号資産への資金移動、トークン化とAIを中心とした暗号資産市場のファンダメンタルズ改善、従来の4年周期の終了を挙げている。
さらにBitmineは、2026年第3四半期のETHがS&P 500を6,519ベーシスポイント上回ったと主張。Lee氏は、この相対的な強さが第4四半期の一段高につながり、暗号資産への配分が少ない機関投資家もエクスポージャーを増やす可能性があると予想している。
ただし、これらはBitmine経営陣の分析と将来予測である。SEC提出資料でも、強気相場、機関投資家の資金流入、将来の価格上昇に関する記述は将来予想に関する声明として扱われている。
市場参加者は、ETH価格だけでなく、現物ETFなどを通じた資金フロー、ステーブルコイン供給、Ethereum上の取引活動、DEXの出来高と流動性を分けて確認したい。企業の強気発言だけで相場局面を断定するのは危険である。
500万ETH超をステーキングするMAVAN戦略
Bitmineは保有ETHを眠らせず、ステーキングへ積極的に回している。公式発表によると、ステーキング済みETHは5,067,309 ETHで、総保有量の85%に相当する。同社は自社のステーキング基盤「MAVAN(Made in America Validator Network)」と提携先を利用している。
EthereumはProof of Stakeを採用しており、バリデーターはETHを預け入れてブロックを検証し、正常に参加することで報酬を受け取る。Ethereum公式ドキュメントでは、自らバリデーターを稼働する場合、実行クライアント、コンセンサスクライアント、バリデータークライアントが必要と説明されている。
Bitmineは、7日間の年率換算利回り2.62%を前提に、現在のステーキング収益を年率約3億5,700万ドルと予測している。すべての保有ETHをステーキングした場合の予測報酬は年率約4億2,100万ドルとしているが、利回りは固定ではなく、バリデーター数、ネットワーク報酬、稼働状況などによって変動する。
また、ステーキングにはオフラインによる報酬減少や、不正な署名などに対するスラッシングがある。カストディ、秘密鍵管理、出金待ち、バリデーター運用も含め、預金金利のような無条件の収益ではない。
DEX・DeFi市場に与え得る影響
Bitmineのような企業が大量のETHを長期保有すると、UniswapやCurveなどのDEXで直ちに同量の流動性が減るとは限らない。保有ETHがもともと取引されていなければ、DEXの流動性プールへ直接的な変化は生じないためだ。
しかし、企業保有とステーキングが拡大し、市場で自由に売買されるETHが相対的に減れば、需要変化に対する価格感応度が高まる可能性がある。ETH価格が急変すれば、AaveやCompoundなどのレンディング市場では担保価値や清算リスクにも影響する。
もう一つの注目点は、ステーキングされたETHがDeFiへどのような形で戻るかだ。LidoのstETHやRocket PoolのrETHのようなリキッドステーキングトークンは、ステーキング中の資産をDeFiで利用しやすくする一方、スマートコントラクト、価格乖離、運営主体の集中といった追加リスクを伴う。
Bitmineの発表はMAVANによる機関向けステーキング拡大を強調している。今後、企業保有ETHが独自基盤や特定事業者へ集中すれば、DEX利用者はETHの供給量だけでなく、どの事業者がステークを管理しているかにも注意する必要がある。
投資家が確認すべきポイント
第一に、Bitmine株とETH現物は異なる資産である。BMNR株の価格にはETH保有価値だけでなく、発行済み株式数、資金調達、事業費用、市場からの評価が反映される。ETH価格が上昇しても、株式の希薄化などによって株価が同じ比率で上がるとは限らない。
第二に、保有資産の内訳を確認したい。Bitmineの総資産として公表された171億ドルには、ETHのほか212 BTC、現金および市場性有価証券7億1,400万ドル、Beast Industriesへの1億8,000万ドルの持ち分、Eightco Holdingsへの1億500万ドルの持ち分が含まれる。総額すべてがETHではない。
第三に、強気相場という表現と確認済みデータを区別することだ。5,983,940 ETHの保有、27,562 ETHの週間取得、5,067,309 ETHのステーキングは会社が開示した数値である。一方、第4四半期の一段高や機関投資家の参入は予測にすぎない。
DEX・DeFi利用者は、ETHの値動きに加え、担保率、清算価格、流動性プールの深さ、スマートコントラクトリスクを個別に管理すべきである。企業の大量購入を理由にレバレッジを過度に高めることは避けたい。
まとめ
Bitmineは27,562 ETHを追加し、総保有量を5,983,940 ETHまで拡大した。同社の基準ではEthereum供給量の4.9%に相当し、「Alchemy of 5%」目標の98%に到達している。
Tom Lee氏は強気相場の開始と機関投資家の参入を予想しているが、これは将来見通しであり確定事項ではない。注目すべき実態は、Bitmineが単にETHを保有するだけでなく、その85%をステーキングし、MAVANを機関向け基盤へ発展させようとしている点だ。
企業によるETH蓄積は、流通量の減少やステーキング収益への期待を生む一方、資産とバリデーターの集中、大口売却、運用障害といったリスクも抱える。DEX・DeFiの利用判断では、強気な市場予測より、オンチェーン流動性、担保状況、ステーキング主体の集中度を優先して確認したい。





