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スリッページ

編集部公開日: 2026/3/19最終更新: 2026/3/26

スリッページとは

スリッページ(Slippage)とは、DEX(分散型取引所)などで暗号資産の取引を行う際に、注文時に画面に表示されていた価格と、実際に取引が成立(約定)した価格との間に生じる差額のことを指します。特に、価格変動が激しい暗号資産市場や、AMM(自動マーケットメーカー)モデルを採用する多くのDEXにおいて、スリッページは避けて通れない重要な概念です。

例えば、1 ETH = 3,000 USDCの時に交換しようと注文を出したにもかかわらず、実際に取引が完了したときには 1 ETH = 2,995 USDC になっていた、というケースがこれにあたります。この5 USDCの差がスリッページです。スリッページはトレーダーにとって不利な方向に動くこともあれば、稀に有利な方向に動く(表示より良いレートで約定する)こともあります。

スリッページが発生する主な原因

スリッページが発生する背景には、主に3つの要因が関係しています。

流動性の不足

DEXの取引価格は、流動性プールと呼ばれる暗号資産のペアが預けられたプール内の比率によって決まります。このプールの規模(流動性の深さ)が小さいと、少しの取引量でも価格が大きく変動してしまいます。例えば、総額100万円分の資産しかないプールで50万円分の取引を行えば、価格に与えるインパクトは非常に大きくなり、結果として大きなスリッページが発生します。

市場のボラティリティ

市場全体の価格変動が激しい局面では、注文を出してからブロックチェーン上でその取引が承認されるまでのわずかな時間差で、資産の価格そのものが変動してしまうことがあります。これにより、意図していた価格と約定価格の乖離が大きくなる傾向があります。

ネットワークの遅延

ブロックチェーンのネットワークが混雑している場合、取引の承認に通常より長い時間がかかることがあります。この遅延の間に、他のトレーダーによる多数の取引が先に実行されることで、流動性プールの資産バランスが変化し、自分の取引が約定する際の価格が注文時から変わってしまうことがあります。

具体的なスリッページ対策と注意点

スリッページは完全にゼロにすることは困難ですが、その影響を最小限に抑えるための対策がいくつか存在します。

スリッページ許容度の設定

ほとんどのDEXでは、「スリッページ許容度(Slippage Tolerance)」をユーザー自身で設定できます。これは「注文価格から何%までの不利な価格変動なら受け入れるか」という上限値です。一般的には0.5%〜1%に設定することが推奨されます。例えば0.5%に設定した場合、提示価格より0.5%以上不利なレートになった場合は取引が自動的にキャンセルされるため、予期せぬ大きな損失を防ぐことができます。

ただし、許容度を低く設定しすぎると、価格変動が激しい局面では取引が成立しにくくなるというデメリットもあります。逆に、新規発行されたばかりのトークンなど、価格変動が極端に激しいものを取引する際には、あえて高い許容度(5%〜10%など)に設定しないと取引が成立しないケースもあります。

流動性の高いDEXを利用する

スリッページを抑える最も効果的な方法の一つは、流動性が豊富なDEXを選ぶことです。例えば、DEXの代表格であるUniswapは、常に数十億ドル規模のTVL(Total Value Locked: 預かり資産総額)を誇り、世界中から多くのユーザーが利用しています。主要なトークンペアにおいては巨大な流動性プールが形成されているため、大口の取引でもスリッページを比較的小さく抑えることが可能です。

また、Curve Financeのように、ステーブルコイン同士の交換に特化したDEXも有効な選択肢です。Curveの独自のAMMモデルは、価値が連動する資産同士(例: USDCとDAI)の交換において、スリッページを極限まで低く抑える設計になっており、実際に数億ドル単位の取引でもスリッページが0.01%程度に収まることも珍しくありません。

DEXアグリゲーターを活用する

1inchJupiter(Solanaブロックチェーン)に代表されるDEXアグリゲーターを利用するのも非常に賢い方法です。これらのサービスは、複数のDEXを横断的に検索し、最も有利なレートを提示してくれます。さらに、一つの取引を複数のDEXに分割して発注することで、各DEXの流動性プールへの価格インパクトを分散させ、トータルでのスリッページを最小化する機能も備えています。アグリゲーターの利用には追加の手数料はかからない場合が多いですが、取引のルートが複雑になる分、ガス代(ネットワーク手数料)が若干高くなる可能性がある点には留意が必要です。