Coinbaseは2026年8月24日、米国株をブロックチェーン上で保有・取引できる「Coinbase Tokenized Stocks」をBaseで開始しました。 対象は米国外の適格地域にいる利用者で、実際の株式を裏付けとするB20トークンを自己管理型ウォレットで保有し、DEXやDeFiで利用できる点が特徴です。
CoinbaseがBaseでトークン化株式を開始
CoinDeskが報じた今回のニュースは、暗号資産交換大手Coinbaseが、自社のEthereumレイヤー2ネットワーク「Base」にトークン化株式を投入したというものです。単にCoinbaseアプリ内で株式売買を提供するのではなく、株式に連動するトークンをパブリックブロックチェーン上へ発行した点が重要です。
開始時点でCoinbaseの公式ページに掲載されている銘柄は、Apple、Alphabet、Meta、NVIDIAです。各トークンにはAAPLc、GOOGLc、METAc、NVDAcという識別名が用いられています。トークンはBase上の自己管理型ウォレットで保有でき、オンチェーン市場では通常の証券取引所が閉まっている時間帯や休日にも移転・取引できます。
ただし、誰でも無条件に購入できるわけではありません。Coinbaseは米国外の適格地域向け商品として提供しており、米国居住者および一部の制限地域は対象外です。日本からの利用可否も、アクセス時点の対象地域、販売画面、目論見書、適用法令を個別に確認する必要があります。
トークン化株式は現物株とどう結び付くのか
Coinbase Tokenized Stocksは、株価だけを追跡する無担保トークンではありません。Coinbaseの説明では、発行される各トークンは規制下のカストディに保管された実際の株式によって1対1で裏付けられます。トークン保有者は、対応する裏付け株式に対して直接かつ優先的な請求権を持つ設計です。
裏付け株式は、規制対象のブローカー兼カストディアンであるAlpacaが、Coinbaseの一般財産から分離された倒産隔離構造で保管します。Coinbaseはアブダビ・グローバル・マーケットのFinancial Services Regulatory Authorityから認可を受け、同地域を国際的なトークン化証券事業の拠点としています。
もっとも、オンチェーンでトークンを持つことと、証券会社の口座で原株を直接保有することは完全に同一ではありません。償還や議決権など一部の権利には、目論見書上の条件、保有期間、本人確認、対応する銀行・証券口座が必要になる場合があります。利用者は「株価に連動するか」だけでなく、法的な発行主体、カストディ、償還条件まで確認すべきです。
B20規格が配当や株式分割を処理する仕組み
今回の株式トークンには、Coinbaseが開発したB20規格が使われています。B20はERC-20を拡張した規格で、既存のウォレット、DEXルーター、DeFiプロトコルと接続しやすいよう設計されています。
特徴的なのが、配当や株式分割を「オンチェーン・マルチプライヤー」で反映する方式です。利用者のウォレットに表示される生のトークン枚数を直接増減させず、原株に相当する価値を計算する倍率を更新します。配当は適用される源泉徴収や手数料を差し引いたうえで再投資され、その結果が倍率に反映されます。
この方式には、Aaveのようなレンディング市場やAerodromeの流動性プールに預けられたトークンの数量を、企業行動のたびに変更せずに済む利点があります。残高が突然変わると、担保計算、LP持分、会計処理などが壊れる可能性があるためです。
一方、B20トークンをウォレット間で移転できることと、すべての保有者が同じ権利を直ちに行使できることは別問題です。一次発行と原株への償還は、KYCを完了した機関投資家やAuthorized Participantに限定されています。
AerodromeとChainlinkが支えるBase上の市場
Baseは、トークン化株式のオンチェーン流動性を提供する取引場所としてAerodromeを挙げています。AerodromeはBaseを中心に展開するDEXで、利用者は対象株式トークンとUSDCなどをAMMプールで交換できます。これにより、Coinbaseという単一のアプリ内に閉じず、Base上のウォレットやルーターから株式トークンへアクセスする道が開かれます。
価格データにはChainlinkのData Feedsが採用されました。スマートコントラクトはNASDAQなどの外部市場を直接参照できないため、レンディング市場で担保価値や清算水準を計算するには、オラクルによる価格供給が欠かせません。ChainlinkはAAPLc、GOOGLc、METAc、NVDAcなどについて、原株価格とCoinbaseが提供する企業行動反映用の倍率を組み合わせたデータをDeFiへ提供します。
BaseはAaveでトークン化NVIDIA株を担保にした借り入れなどを利用例として示しています。ただし、対応資産、担保掛け目、供給上限、利用可能地域は各プロトコルのガバナンスやリスク設定によって変わります。「B20に対応している」ことだけを根拠に、任意の銘柄をすぐ担保として利用できるとは限りません。
24時間取引とDeFi連携がもたらす変化
最大の変化は、株式が暗号資産やステーブルコインと同じスマートコントラクト環境に入ることです。Apple株トークンとUSDCを一つのウォレットで管理し、Aerodromeで交換する、対応するレンディング市場へ預ける、複数資産を組み合わせた自動運用戦略を構築するといった設計が可能になります。
オンチェーン市場は常時稼働するため、企業決算、週末のニュース、他地域の市場変動を受けて取引できます。小数単位に分割できるB20トークンは、原株1株より小さい金額での取引にも適しています。また、ブロックチェーン上で移転と決済が一体化するため、従来の証券市場とは異なる即時性を持ちます。
競争相手もCoinbaseだけではありません。Kraken系のxStocksやOndo FinanceのOndo Global Marketsなど、株式をオンチェーンへ持ち込むプロジェクトがすでに登場しています。Coinbaseの強みは、Baseのウォレット、USDC流動性、Aerodrome、Chainlink、DeFi開発者を一つの流通基盤として接続できることです。今後の競争は銘柄数だけでなく、法的権利、償還性、流動性、オラクル品質、対応プロトコルの広さで評価されるでしょう。
利用前に確認したい固有リスク
トークン化株式には、原株の価格変動以外にも複数のリスクがあります。第一は、AerodromeなどのAMM価格が、原株市場の終値やChainlinkの参照価格から乖離する可能性です。特に証券取引所が閉まっている時間帯は、新しい原株価格が形成されない一方、オンチェーン取引だけが続きます。
第二は流動性です。24時間取引できても、十分なLP資金がなければスリッページが大きくなり、希望価格で売買できません。流動性提供では取引手数料を得られる可能性がある反面、価格変動によるインパーマネントロス、スマートコントラクト障害、インセンティブ終了後の流動性低下を負います。
第三は発行体・カストディ・規制リスクです。裏付け資産はオンチェーンではなくAlpacaの管理下にあるため、利用者はCoinbaseの発行管理、カストディ構造、目論見書上の請求権に依存します。制裁対応など法令上必要な場合には、ウォレット単位で凍結または差し押さえが行われる可能性も公式に説明されています。
実際に利用する際は、公式のコントラクトアドレスを照合し、対象地域、目論見書、DEXの流動性、原株価格との乖離、償還条件、スマートコントラクト監査を確認することが重要です。同名の偽トークンを、ティッカーだけで判断してはいけません。
まとめ
CoinbaseによるBase上のトークン化株式は、AppleやNVIDIAなどの実株式をB20トークンとして自己管理し、AerodromeやChainlinkを通じてDeFiへ接続する取り組みです。1対1の裏付け、倒産隔離型カストディ、配当・株式分割を処理するオンチェーン倍率が、従来の合成株式トークンとの主な違いです。
一方で、24時間取引できることは、常に十分な流動性や適正価格が保証されることを意味しません。地域制限、償還権、時間外の価格乖離、カストディ、スマートコントラクトなど、株式とDeFi双方のリスクを理解する必要があります。利用を検討する場合は、CoinbaseとBaseの公式ページ、銘柄別目論見書、正規コントラクトを確認したうえで判断してください。





