dex.jp
フィデリティ、900億円規模のイーサETFにステーキング追加へ
イーサETF·7分で読める

フィデリティ、900億円規模のイーサETFにステーキング追加へ

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-08-13

📋 この記事のポイント

  • 1フィデリティが約8.98億ドル規模のイーサETF「FETH」にステーキングと四半期分配を追加する方針を提出。
  • 2報酬の85%を保有する仕組みや、IRSセーフハーバー、競合ファンドの動向をdex.jpが解説します。
ポストLINE

米資産運用大手フィデリティ(Fidelity)が、自社の現物イーサETF「Fidelity Ethereum Fund(FETH)」にステーキング機能と四半期ごとの現金分配を追加する方針を明らかにしました。修正登録届出書によれば、純資産8.98億ドル規模のFETHは通常時に保有イーサの最大100%をステーキング可能とし、得られたステーキング報酬(グロス)の85%をファンドが保有、残り15%をサービスプロバイダーに配分する設計です。米国の現物イーサETFで運用資産上位に位置するファンドがステーキングに踏み込む動きであり、ETF保有者に新たな利回り源をもたらす可能性があります。

フィデリティが提出した修正届出書の要点

フィデリティは、FETHにステーキングと四半期分配を組み込むための修正登録届出書(amended registration statement)を提出しました。これは既存の現物イーサETFの構造を変更し、ファンドが保有するイーサ(ETH)をイーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)ネットワークに預け入れ、その報酬を投資家に還元できるようにするものです。

CoinDeskの報道によると、FETHは通常の運用状況において保有イーサの最大100%までステーキングできるとされ、ステーキング比率の下限(最低ライン)は設定されていません。ただし、ファンドは償還(redemption)や経費の支払い、その他の流動性ニーズに対応するため、一定量のETHはステーキングせずに手元に残す方針です。ETFは投資家がいつでも売買・償還できる商品であるため、全額をステーキングに回すと機動的な資金対応が難しくなる点への配慮といえます。

この届出は現時点で「方針の提出」段階であり、実際に機能が有効化されるには規制当局のプロセスを経る必要があります。読者は、正式な承認・開始時期については公式発表を確認することをおすすめします。

報酬の85%を保有する仕組みとサービスプロバイダー

今回の設計で特徴的なのが、ステーキング報酬の配分比率です。フィデリティはグロス(総額)のステーキング報酬のうち85%をファンドが保有し、残り15%をファンドスポンサー、カストディアン(保管業者)、ノードオペレーターに配分するとしています。

ノードオペレーターとしては、Blockdaemon、Figment、Galaxyの3社が届出書に記載されています。これらはいずれも機関投資家向けのステーキング・インフラを提供する事業者であり、バリデータの運用やネットワークへの参加を技術的に担います。ETFがステーキングを行う場合、運用会社自身がバリデータを直接運用するのではなく、こうした専門事業者に委託する形が一般的です。

投資家に還元される「ネット(純額)」のステーキング報酬は、まずファンドの経費に充当され、その後に四半期ごとの現金分配へ回されます。つまり投資家が受け取る分配額は、グロス報酬から15%のサービス配分とファンド経費を差し引いた残りとなる点に注意が必要です。

四半期分配とIRSルールの関係

分配の頻度が「四半期ごと」とされているのには、税務上の理由があります。米内国歳入庁(IRS)のルールでは、対象となるファンドはネットのステーキング報酬を少なくとも四半期に一度は分配しなければならないとされています。フィデリティはこのルールに沿う形で、四半期ごとの現金分配を設計しています。

また、分配の原資を確保するため、ファンドは必要に応じて一部のETHを売却して現金を用意することがあるとしています。ステーキング報酬はETHという暗号資産で受け取られるため、投資家への「現金分配」を実現するには、その一部を法定通貨に換える必要が生じるためです。この売却は、分配のためのキャッシュ確保という実務上の要請に基づくものです。

利回りを生む商品である一方、ETHの売却が価格や運用に与える影響、分配額が市況やステーキング参加率に応じて変動する点は、投資家が理解しておくべき要素です。

転機となった2025年11月のIRSセーフハーバー

今回のような動きが可能になった背景には、2025年11月にIRSが発行したセーフハーバー(安全港)に関する通達があります。この通達は、要件を満たす暗号資産トラストが、グランター・トラスト(grantor trust)としての税務ステータスを失うことなく資産をステーキングできることを認めるものです。

従来、現物型の暗号資産ETF(トラスト構造)がステーキングに踏み込むことには、税務上の位置づけが不透明という懸念がありました。グランター・トラストの扱いが崩れると、ファンドや投資家の課税関係が複雑化する恐れがあったためです。IRSがセーフハーバーを示したことで、この不確実性が緩和され、複数の運用会社がステーキング機能の追加に動き出す土台が整いました。フィデリティの今回の提出も、この制度的な変化を前提としたものです。

競合の動き:グレースケール、21Shares、ブラックロック

ステーキング対応に動いているのはフィデリティだけではありません。CoinDeskによると、フィデリティは既存のイーサファンドにステーキングを追加する点で、グレースケール(Grayscale)や21Sharesと同じ路線に加わることになります。

一方、資産運用最大手のブラックロック(BlackRock)は異なるアプローチを取り、既存ファンドへの追加ではなく、独立したステーキング商品を新たに投入する形を選んでいます。同じ「イーサのステーキング利回りを投資家に届ける」という目的でも、既存ETFへの機能追加と、専用商品の新設という二つの手法が並立している状況です。

こうした動きが相次ぐ背景には、単純にETHを保有するだけでなく、ステーキング利回りを取り込むことで商品としての魅力を高めたいという運用会社側の狙いがあります。イーサリアムのPoSは保有者に報酬をもたらす仕組みであり、これをETFという規制された枠組みで投資家に提供できるかどうかが、各社の競争軸になりつつあります。

DEX・DeFiユーザーにとっての意味

DEXやDeFiに関心のある読者にとって、機関投資家向けETFのステーキング対応は間接的ながら重要な意味を持ちます。第一に、ETFを通じたステーキング参加が広がれば、イーサリアムのバリデータ経済圏に流入する資本が増える可能性があります。第二に、Blockdaemon、Figment、Galaxyといったインフラ事業者の役割が拡大することは、オンチェーンのステーキング市場全体の構造にも影響し得ます。

ただし、ETFのステーキングは、自身でウォレットを管理し、DeFiプロトコルやリキッドステーキング(例:Lidoなどのステーキング関連サービス)を通じて能動的に運用する形とは性質が異なります。ETFは規制枠組みの中でカストディアンや専門事業者に運用を委ねる仕組みであり、自己管理型のオンチェーン運用とは、カウンターパーティの前提や流動性の扱いが異なる点を押さえておく必要があります。それぞれの特性を理解したうえで、自分に合った関与方法を選ぶことが大切です。

まとめ

フィデリティは、純資産8.98億ドル規模の現物イーサETF「FETH」にステーキングと四半期の現金分配を追加する方針を、修正登録届出書で示しました。グロス報酬の85%をファンドが保有し、15%をサービスプロバイダーに配分する設計で、最大100%のステーキングを可能としつつ、償還・経費用に一定のETHは手元に残します。2025年11月のIRSセーフハーバーが制度的な後押しとなり、グレースケールや21Sharesも同様の追加を進め、ブラックロックは別建ての商品で対応しています。まだ提出段階であり、実際の開始時期や条件は公式発表の確認が必要です。ETFを通じたステーキングと、DeFi・DEXでの自己管理型運用は性質が異なるため、それぞれの仕組みを理解したうえで判断することが重要です。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

ポストLINE

関連記事