Solanaで、SOLの新規発行を抑えながら取引手数料の焼却量を増やすガバナンス投票が始まった。 中心となるのは、ディスインフレを加速するSGP-0002と、リソース連動型手数料を導入するSGP-0003だ。 可決されても直ちにSOLがデフレ資産になるわけではないが、Solanaの供給構造とネットワーク利用料を長期的に変える可能性がある。
Solanaで始まった3つのガバナンス投票
CoinDeskが2026年8月24日に報じたところによると、Solanaのバリデーターは3件のSolana Governance Proposal(SGP)について投票を開始した。投票期間は8月27日15時30分ごろ(UTC)までとされている。
対象は、Solanaのガバナンス原則を定めるSGP-0001、SOLのディスインフレを加速するSGP-0002、取引手数料の構造を変更するSGP-0003だ。このうちSOLの供給量に直接関係するのがSGP-0002とSGP-0003である。
SGPは、Solana Improvement Document(SIMD)として議論されてきた技術変更について、ステーク量を基準にネットワーク参加者の意思を確認する仕組みだ。今回の技術的な根拠は、それぞれSIMD-0550とSIMD-0553に記載されている。
投票権は単純な「バリデーター1社につき1票」ではなく、アクティブステーク量で重み付けされる。SOLをネイティブステーキングしている保有者も、委任先バリデーターの判断に任せるだけでなく、自分のステークアカウントを使って意思を示せる設計となっている。
SGP-0002はSOLの新規発行ペースを抑える
SGP-0002の基礎となるSIMD-0550は、Solanaの年間ディスインフレ率を現在の15%から30%へ引き上げる提案だ。ここでいうディスインフレとは、SOLの発行自体を直ちに止めることではなく、年間インフレ率が低下する速度を速めることを意味する。
Solanaには、ステーキング報酬などに充てるSOLをプロトコルが新規発行する仕組みがある。SIMD-0550は、既存の終端インフレ率1.5%を変更せず、そこへ到達するまでの期間を短縮する。公式提案では、到達までの期間が約5.7年から約2.8年へ短縮されるモデルが示されている。
ただし、発効時点でインフレ率を突然引き下げる方式ではない。SIMD-0550は、変更を有効化する時点の発行率を基準値として固定し、その後の低下曲線だけを急にする設計を採る。これにより、有効化の瞬間にステーキング報酬が不連続に変わる事態を避ける。
提案資料の試算では、現行スケジュールと比べて6年間の新規発行量が約1,890万SOL減少する。これはSOLを市場から買い戻す施策ではなく、将来発行される予定だった数量を減らす変更である点が重要だ。
SGP-0003は取引コストを二つに分ける
SGP-0003に対応するSIMD-0553は、Solanaの基本取引手数料を「包含手数料」と「リソース手数料」に分ける提案だ。
包含手数料は、取引をブロックへ取り込むことに対する固定料金で、提案上は2,500 lamportsに設定され、ブロックを生成したリーダーへ支払われる。一方のリソース手数料は、取引が要求する計算資源、メモリー、アカウント状態などの負荷に応じて変動し、全額が焼却される。
現在のSolanaでは、軽いSOL送金と、複数のプログラムやアカウントを使う複雑なDeFi取引との間で、ネットワークに与える負荷が異なる。SIMD-0553は、負荷の大きい取引ほど対応するリソース費用を負担させる考え方だ。
例えばJupiterで複数の流動性ソースを経由するスワップ、Kaminoのレンディング操作、Driftの証拠金取引などは、単純送金より多くの計算資源やアカウントアクセスを必要とする場合がある。実際の負担額は各取引が要求するリソースによって決まるため、「すべてのDeFi取引が一律に高くなる」という提案ではない。
固定部分をバリデーター収益として残し、ネットワーク負荷に対応する部分を焼却することで、ブロック生成者への報酬とSOLの供給削減を分離する点が特徴である。
1日最大9,000 SOL焼却という試算の読み方
CoinDeskは、SIMD-0553によって1日当たりのSOL焼却量が約650 SOLから7,500〜9,000 SOLへ増える可能性があると報じた。記事タイトルの「1日80万ドル規模」は、9,000 SOLを報道時点のSOL価格で換算した概算であり、固定された金額ではない。
SOL建ての焼却量も保証値ではない。リソース手数料はネットワーク上の取引件数だけでなく、各取引が消費するリソース量に左右される。Jupiter、Raydium、OrcaなどのDEX利用が増え、計算負荷の高い取引が増加すれば焼却量も増えやすい。一方、活動が低下すれば想定より少なくなる可能性がある。
また、焼却量だけを見て「SOLがデフレ化する」と判断するのは早い。CoinDeskの事前報道では、現行の新規発行量は1日約6万SOLとされている。仮に焼却量が上限試算の9,000 SOLへ増えても、それだけでは新規発行量を下回る。
今回の提案は、SIMD-0550によって発行側を減らし、SIMD-0553によって焼却側を増やす二方向の変更である。総供給への影響を見る際は、「何SOL焼却されたか」ではなく、「新規発行量から焼却量を差し引いた純増加量」を確認する必要がある。
DEXとDeFi利用者に考えられる影響
DEX利用者にとって最も直接的な論点は、複雑な取引の手数料設計が変わることだ。Jupiterのルーティングが複数市場をまたぐ場合や、RaydiumとOrcaの流動性を組み合わせる場合、要求リソースに応じた費用が発生する可能性がある。
ただし、スワップの最終コストはプロトコル手数料、価格への影響、MEV対策、優先手数料、リソース手数料などの合計で決まる。新しい焼却制度だけを見て、特定DEXが有利または不利になるとは断定できない。ウォレットやアグリゲーターには、見積もり時に新手数料を正確に反映する対応が求められる。
バリデーター側では、基本手数料の配分変更とインフレ報酬の低下が収益モデルに影響する。特に小規模バリデーターは、発行報酬の減少が運営コストや委任獲得競争にどう影響するかを検討する必要がある。一方、包含手数料がリーダーへ全額支払われる設計は、取引処理による収益源を明確にする。
SOL保有者にとっては、ステーキング利回りの名目値だけでなく、供給希薄化を差し引いた実質的な価値を考える材料になる。ただし、供給成長率の低下がSOL価格の上昇を保証するものではない。価格は需要、ネットワーク利用、競合チェーン、市場環境など複数の要因で決まる。
投票後すぐに手数料が変わるわけではない
ガバナンス投票で賛成が多数になっても、その瞬間にメインネットの発行率や取引手数料が変わるわけではない。SIMDの公式プロセスでは、提案の承認後に実装、複数クライアントでの検証、セキュリティ確認、機能ゲートによる有効化などが必要となる。
SIMD-0550とSIMD-0553は、記事執筆時点の公式リポジトリ上でReview段階にある。したがって、今回の投票はネットワークが変更の方向性を支持するかを示す重要な手続きだが、具体的な導入日を確定するものではない。
利用者は投票結果だけでなく、公式SIMDのステータス、実装用feature gate、Solanaのリリース情報を確認したい。DEX開発者やウォレット事業者は、リソース手数料の計算方法が確定した段階で、手数料見積もりやトランザクション構築処理を検証する必要がある。
まとめ
Solanaの新しいガバナンス投票では、SGP-0002がSOLの年間ディスインフレ率を15%から30%へ引き上げ、SGP-0003がリソース連動型手数料と全額焼却の仕組みを導入しようとしている。
焼却量は1日7,500〜9,000 SOLに増えるとの試算があるものの、ネットワーク利用状況によって変動し、新規発行を直ちに上回るわけではない。今回の変更の本質は、単なる大規模バーンではなく、発行量の減少と利用量に連動する焼却を組み合わせる点にある。
Jupiter、Raydium、Orcaなどを使うDeFi利用者は、投票結果だけでなく、実装後のリソース手数料と総取引コストを確認することが重要だ。可決は実装完了を意味しないため、公式SIMDの進捗とメインネットでの有効化状況を継続的に追う必要がある。





