Solanaのバリデーターは、SOLの新規発行ペースを従来より速く減らす「SGP-0002」を僅差で承認した。提案の中心は、ディスインフレ率を年15%から30%へ引き上げることだ。
ただし、可決によってSOLの発行量が即座に減るわけではない。クライアントへの実装、コンセンサス互換性の検証、フィーチャーゲートの有効化を経て初めて新しいスケジュールが適用される。
Solanaのディスインフレ案が67%で可決
CoinDeskの報道によると、Solanaで実施された初のネットワーク規模のガバナンス投票において、SGP-0002は賛成67%で可決された。可決条件は賛成・反対票のうち3分の2以上であり、結果は必要水準をわずかに上回るものだった。
投票全体では反対が約25%、棄権が7.84%。投票参加率は対象ステークの60.7%となり、3分の1という定足数も満たした。単なるコミュニティ投票ではなく、SOLのステーク量が投票ウェイトに反映されるため、大規模バリデーターやステーキング事業者の判断が結果を大きく左右する仕組みだ。
終盤まで賛成票は可決ラインを下回っていたが、Krakenに関連するバリデーター「Kraken 2」が反対から賛成へ変更した。同バリデーターは投票の約2%を占めていたと報じられている。さらにGalaxy関連の投票も、主に棄権していた配分から賛成中心へ切り替わり、最終結果を押し上げた。
この展開は、Solanaの経済設計が一部の開発者だけではなく、KrakenやGalaxyのような機関、バリデーター、ネイティブステーカーを巻き込む政治的なテーマになったことを示している。
SGP-0002とSIMD-0550は何を変えるのか
SGP-0002は、技術提案「SIMD-0550」をネットワークとして採用するためのガバナンス提案だ。SIMD-0550はHeliusのLostin氏と0xIchigo氏が作成し、SOLのディスインフレ率を年15%から30%へ変更する。
ここでいうディスインフレとは、SOLの流通量を減らすことではない。ステーキング報酬として発行されるSOLの年間インフレ率を、毎年どの程度低下させるかを表す。新規発行は続くものの、その増加率が従来より速く縮小する。
Solanaの既存スケジュールは、初期インフレ率8%、ディスインフレ率15%、長期インフレ率1.5%という3つの主要パラメーターで設計されている。今回の提案は長期目標の1.5%を変更せず、そこへ到達する速度だけを速める。
SIMD-0550の公式モデルでは、長期インフレ率へ到達するまでの期間が約5.7年から約2.8年へ短縮される。今後6年間のSOL発行量は、従来スケジュールと比べて約1,890万SOL、率にして約2.6%少なくなると試算されている。
一方、トークンバーンを直接増やす提案ではないため、「可決=SOLがデフレ資産になる」という理解は正確ではない。流通量の純増減は、新規発行だけでなく、手数料バーン、ネットワーク利用、ステーキング参加率などにも左右される。
可決しても即時適用されない理由
今回の投票は経済方針を承認する重要な段階だが、実装完了を意味しない。SIMD-0550では、double_disinflation_rateというフィーチャーゲートをクライアントへ追加し、エポック境界で新しい計算方式を有効化する設計が示されている。
現在のインフレ率を突然切り下げるのではなく、有効化時点の発行率を基準値として固定し、そこから年30%のペースで低下する曲線へ再接続する。これにより、切り替え時に報酬が不連続に急減する事態を避ける。
インフレ報酬はSolanaのbank capitalizationとbank hashへ反映されるため、Agaveを含む各バリデータークライアントが同一の値を計算しなければならない。計算結果が異なれば、ネットワーク状態の不一致につながる可能性がある。このため、参照実装、テストベクター、アクティベーションスロットをまたぐ台帳リプレイなどの検証が必要になる。
また、仕様上は後方互換性のない変更とされている。実際の適用時期を判断する際は、投票可決日ではなく、Solana公式のリリース情報やフィーチャーゲートの有効化状況を確認する必要がある。
ステーキングとリキッドステーキングへの影響
発行ペースの低下は、SOLをネイティブステーキングする利用者や、JitoSOL、mSOLなどのリキッドステーキングトークンを保有する利用者に関係する。
SIMD-0550のモデルでは、ステーキング参加率を68%と仮定した場合、名目ステーキング利回りは現在の5.84%から、変更後1年で4.34%、2年で3.00%、3年で2.25%へ低下する。これは予測モデルであり、実際の利回りはバリデーター手数料、稼働状況、JitoのMEV収益、ブロック報酬などによって異なる。
MarinadeのmSOLやJitoのJitoSOLでも、基礎となるネイティブステーキング報酬が低下すれば、トークン価格へ積み上がる報酬部分が縮小する可能性がある。ただし、JitoSOLにはMEV由来の収益要素もあるため、インフレ報酬だけで実際の収益率を判断することはできない。
バリデーター側では、インフレ報酬のコミッションへの依存度が高い小規模事業者ほど影響を受けやすい。公式提案も、利回り低下によって一部バリデーターの採算が悪化し、バリデーター構成の多様性へ影響する可能性を欠点として挙げている。
Jupiter・OrcaなどSolana DeFiへの意味
Solana DeFiにとって重要なのは、ネイティブステーキング利回りが資金運用の比較基準になっている点だ。SOLをステークするだけで得られる利回りが高いほど、利用者はスマートコントラクト、価格変動、清算、流動性不足といった追加リスクを負ってまでDeFiへ資金を移す必要性を感じにくい。
ステーキング利回りが徐々に低下すれば、KaminoやMarginfiでのレンディング、OrcaやRaydiumでの流動性提供、Jupiterを利用したスワップや関連運用戦略との利回り差が変化する可能性がある。特にJitoSOLやmSOLを担保として利用する市場では、基礎利回りと借入金利の差を改めて確認する必要がある。
一方で、発行量の減少だけを理由にDeFi預かり資産や取引量が増えるとは限らない。レンディング需要、DEXの手数料収入、インセンティブ配布、SOL価格、スマートコントラクトリスクといった別の要因があるためだ。
利用者は表示APYだけでなく、報酬の内訳がSOLの新規発行、取引手数料、MEV、プロトコルトークンのインセンティブのどれに由来するかを区別したい。今回の変更で直接縮小するのは、主としてSOLのインフレ発行に基づく部分である。
投資家とDeFi利用者が確認すべきポイント
第一に、実際の有効化時期を確認することが重要だ。SGP-0002の可決と、SIMD-0550のコード実装、バリデーターへの導入、メインネットでのフィーチャーゲート有効化は別の段階である。
第二に、ウォレットやステーキングサービスに表示される実績利回りを見る。Phantomなどから委任している場合も、委任先バリデーターのコミッションや実績によって受取額は異なる。MarinadeやJitoを利用している場合は、各プロトコルが示す利回りの構成も確認したい。
第三に、DeFiポジションの採算を再計算する。KaminoでJitoSOLを担保に借り入れる戦略や、OrcaでLSTを流動性提供する戦略では、基礎ステーキング利回りの変化が収益性へ波及する。ただし、借入金利や流動性提供手数料も変動するため、単一の数値だけで判断すべきではない。
最後に、供給増加ペースの鈍化と市場価格を直結させないことだ。今回の提案は将来の発行量を抑えるが、SOLの価格は需要、取引活動、市場環境、規制、技術面の安定性など複数の要因で決まる。
まとめ
SolanaのSGP-0002は、賛成67%という僅差で可決された。KrakenやGalaxyに関連する票の終盤での変更が結果を左右し、Solana初のネットワーク規模のガバナンスは劇的な決着となった。
技術的には、SOLのディスインフレ率を年15%から30%へ引き上げ、長期インフレ率1.5%への到達を速める。新規発行の削減はステーキング利回り、バリデーター収益、JitoSOLやmSOL、Kamino、Jupiter、Orca、RaydiumなどのDeFi市場にも波及し得る。
ただし、投票可決は実装の出発点であり、即時の発行変更や価格上昇を保証するものではない。今後は公式クライアントの実装状況、フィーチャーゲートの有効化、各ステーキングサービスの実績利回りを継続的に確認する必要がある。





