MicroStrategy(旧社名:MicroStrategy、本稿では記事の出典元に合わせStrategy Inc.と表記)が発行する永久優先株式「STRC」は、投資家に対して安定したインカムゲインを提供することを目的に設計された金融商品です。しかし、2026年6月現在、このSTRC株とビットコイン(BTC)との90日間相関が過去最高の約0.70にまで上昇しており、その本来の魅力が大きく揺らいでいます。この高まる相関性は、インカムゲインを求める投資家にとって、リスクプロファイルの再評価を迫る重要な変化をもたらしています。
Strategy社のSTRC株とは何か?その設計思想
STRCは、正式名称「Variable Rate Series A Perpetual Preferred Stock(変動金利A種永久優先株式)」としてNasdaqに上場しています。これは、同社がビットコインを取得するための資金調達手段として導入されました。発行価格は100ドルで、投資家には変動金利で月次配当が支払われます。現在の年率配当は11.50%(2026年6月時点)であり、取締役会は毎月この配当率を調整することで、株価を額面価格の100ドル付近に維持することを目指しています。STRCは普通株式と債券の間に位置づけられ、配当の支払いにおいて普通株主よりも優先される一方で、債権者には劣後するという特徴を持ちます。この設計により、投資家はビットコイン価格の直接的なボラティリティを避けつつ、インカムゲインを得られると期待されていました。
BTCとの相関性が過去最高水準に:データが示す現実
データソースTradingViewによると、STRCとビットコインの90日間相関係数は、2025年7月の発行以来最高となる約0.70に達しました。この相関性は2026年6月初旬から上昇傾向にあり、STRCとBTCの双方が大幅に下落する局面で顕著になっています。2026年6月、STRC株価は今月だけで23%下落して76ドルとなり、ビットコイン価格も約20%下落して60,000ドルを割り込み、2024年10月以来の水準にまで落ち込んでいます。この高い相関は、STRCがビットコインの価格変動から切り離された、比較的安定した収益源であるという当初の認識を覆すものです。
「安定した収益源」としての魅力の低下
STRCは、世界最大の企業ビットコイン保有企業であるStrategy Inc.の事業と連動しながらも、ビットコインの直接的な価格変動リスクを軽減する商品として注目を集めました。しかし、ビットコインとの相関性がこれほどまでに高まることで、その「安定したインカムゲイン」という魅力が薄れています。特に現在の市場状況では、STRCが額面価格の100ドルを大幅に下回る76ドルで取引されていることは、投資家にとって大きな懸念材料です。これにより、ビットコインのボラティリティに対するヘッジとしての機能が期待通りに果たせていないことが浮き彫りになっています。
市場の変動がStrategy社のビジネスモデルにもたらす試練
STRCの発行を通じて得られた資金は、主にビットコインの追加購入に充てられてきました。これはStrategy社の「21/21プラン」と呼ばれるビットコイン取得戦略の根幹をなすものです。株価が額面価格の100ドルを上回る場合、同社は市場での追加発行を通じて資金を調達し、さらなるビットコイン購入が可能となります。しかし、STRCが額面価格を大きく割り込んでいる現状では、この資金調達メカニズムが機能不全に陥っています。この大幅なディスカウントは、ビットコインをさらに購入するための資金を調達する能力を著しく制限し、同社のビジネスモデルに大きな試練をもたらしています。
「売却しない」戦略からの転換:ビットコイン売却の背景
Strategy社は、これまで「ビットコインを売却しない」という長期的なスタンスを維持してきました。しかし、最近の市場の低迷とSTRC株価の圧力により、同社は配当義務を果たすために少量のビットコインを売却したとされています。これは、同社の長年にわたる方針からの劇的な転換を意味し、市場関係者に衝撃を与えました。2026年6月25日時点で、Strategy社はBitcoinTreasuries.netによると847,363 BTCを保有しており、その価値は504億ドルに上りますが、その一部を売却せざるを得ない状況に追い込まれたことは、現在の市場環境がいかに厳しいかを物語っています。
投資家の見解:リスクとリターンの新たなバランス
市場オブザーバーの間では、STRCの現状に対する見方が分かれています。一部の投資家は、現在の株価が大幅なディスカウントにあることを、将来的な回復時にインカムゲインとキャピタルゲインの両方を得られる魅力的なエントリーポイントと見ています。彼らは、市場が回復すればSTRC株価も額面価格に戻る可能性があると期待しています。一方で、他の投資家は、市場の軟調が続けば、MicroStrategy社の財務状況にさらなる圧力がかかり、STRCの魅力が長期的に損なわれることを懸念しています。ビットコインとの相関性が高まり、そのヘッジ機能が低下したことで、STRCは新たなリスクとリターンのバランスで評価されることになります。
まとめ
Strategy社が発行するSTRC株は、安定したインカムゲインとビットコインへの間接的なエクスポージャーを提供することを期待されていましたが、最近のビットコインとの相関性急騰は、その設計思想に大きな変化をもたらしています。STRCが額面価格を割り込み、同社がビットコインの一部を売却せざるを得なくなった状況は、市場の変動性が伝統的な金融商品と暗号資産の境界線を曖昧にしていることを示唆しています。投資家は、STRCが提供する収益性と、ビットコイン市場のボラティリティとの間で新たなバランスを見出す必要に迫られています。DeFi領域においても、多様なイールドファーミング戦略が存在しますが、 underlying asset の価格変動リスクとどのように向き合うかは常に重要な課題であり、STRCの事例はそれを再認識させるものと言えるでしょう。





