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ビットコイン先物ベーシス崩壊、米国債利回りを下回る理由
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ビットコイン先物ベーシス崩壊、米国債利回りを下回る理由

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-08-04

📋 この記事のポイント

  • 1かつて年率20%超を稼いだビットコイン先物のキャリートレードが、2月以降は2年物米国債を下回り続けている。
  • 2GlassnodeやコインDeskのデータをもとに、利回り崩壊の背景と市場成熟の意味を解説する。
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ビットコイン先物の「ベーシス(現物と先物の価格差)」を利用したキャリートレードの利回りが急落し、2026年2月以降、2年物米国債の利回りを一貫して下回り続けている。かつて2021年の強気相場では年率20%超を稼いだ戦略が、いまや年率約3%と、リスクフリーの国債(平均3.8%)にすら劣後している。本記事では、この「先物利回りの崩壊」が何を意味するのか、CoinDeskやGlassnode、Coinglassのデータをもとに整理する。

ベーシス取引(キャリートレード)とは何か

ベーシス取引とは、先物価格と現物価格の乖離(ベーシス)から利益を得る、暗号資産市場では定番のアービトラージ戦略だ。先物とは「特定の期日に、あらかじめ決めた価格で資産を売買する契約」を指し、その先物価格が現物価格を上回っている状態(コンタンゴ)を利用する。

具体的な手法はシンプルだ。ビットコイン先物を「ショート(売り建て)」する一方で、同額の現物ビットコイン、あるいは現物連動型ETFを「ロング(買い)」で保有する。価格変動リスクは両建てで相殺されるため、満期時に先物価格と現物価格が収束(コンバージェンス)した分の利ざやを、方向性リスクをほぼ取らずに獲得できる。このため「デルタニュートラル戦略」とも呼ばれ、機関投資家やヘッジファンドが好んで用いてきた。

重要なのは、この利回りが本質的に「市場の非効率性」から生まれている点だ。先物が現物より割高であればあるほど、キャリートレードの旨味は大きくなる。逆に言えば、利回りが縮小するということは、市場の歪みそのものが小さくなっていることを意味する。

20%超から3%へ──利回り崩壊の実態

CoinDeskによれば、2021年の強気相場では、規制対象・非規制を問わず多くの暗号資産取引所で、キャリートレードが年率20%以上を安定的に叩き出していた。強い上昇期待が先物価格を押し上げ、現物との乖離が極端に大きかったためだ。当時、ベーシス取引は文字どおり「金鉱(goldmine)」と表現される存在だった。

ところが2026年8月時点で、この利回りはわずか年率約3%まで低下している。同時期の2年物米国債の平均利回りは3.8%。つまり、リスクを取ってキャリートレードに資金を投じるより、政府が発行する国債にそのまま置いておいた方が高いリターンを得られる、という逆転現象が起きているのだ。

データ分析会社Glassnodeによると、3カ月物先物のベーシス(年率換算)が2年物米国債を下回る状態は、2月から5カ月以上、日数にして157日間続いている(同社の日曜時点チャート)。「1ドルをキャリートレードに回すより、国債に寝かせた方が稼げる」という状態が半年近く継続していることになる。

過去に類似したのは「サイクルの底」だけ

この局面が市場関係者の注目を集めているのは、過去にほとんど前例がないからだ。Glassnodeはテレグラムへの投稿で、次のように指摘している。

「3カ月物先物のベーシスが2年物米国債を下回るのは2月からだ。記録上、これほど長く続いた局面は他に一度しかない。2022年8月から2023年1月にかけての時期であり、それはサイクルの底(cycle low)で終わった」

2022年後半といえば、テラ/ルナ崩壊やFTX破綻が相次ぎ、暗号資産市場全体が総弱気に沈んでいた時期だ。その低迷が、まさにベーシスの長期的な国債下回りと重なっていた。今回の157日という記録は、当時に匹敵する異例の長さであり、市場が深い調整局面にあることを示す一つのシグナルと受け止められている。

ただし、過去のパターンが「底で終わった」からといって、今回も同様に反転するとは限らない点には注意が必要だ。相場のサイクルは毎回条件が異なり、単純なアナロジーで将来を予測すべきではない。

先物取引高の急減という副作用

利回りの崩壊は、市場の「活動量」そのものにも影響を及ぼしている。キャリーが短期国債を下回れば、アロケーター(資金配分者)やトレーダーが先物に資本を投じるインセンティブは失われる。合理的な投資家であれば、より低リスクで高利回りの国債を選ぶからだ。

この資金流出は、先物取引高の数字にはっきり表れている。デリバティブデータ分析のCoinglassによると、ビットコイン先物の取引高は2026年2月にピークの約1兆4,700億ドルを記録した後、減少の一途をたどり、7月にはわずか8億8,000万ドル超まで落ち込んだ。ピーク比で桁違いの縮小であり、キャリー収益の低迷と、暗号資産市場全体の弱気相場が重なった結果とみられる。

つまり「利回りが下がる → キャリートレードの妙味が消える → 先物への資金流入が細る → 取引高が減る」という連鎖が起きている。ベーシス取引の縮小は、単なる一戦略の不振にとどまらず、デリバティブ市場全体の温度感を映す鏡になっている。

「崩壊」は成熟のサインでもある

ネガティブに見えるこの現象には、実はポジティブな側面もある。CoinDeskは、ベーシスの低下が「流動性の向上と市場の成熟」を示すシグナルでもあると指摘する。

前述のとおり、ベーシス取引の利益の源泉は、連動する市場(現物と先物)間の価格の食い違いだ。したがって利回りが崩壊するということは、その非効率性が縮小していることを意味する。裁定機会が減れば、それは市場が効率的に価格を織り込めるようになった証拠でもある。

具体的には、こうした効率化は、ビッド・アスク・スプレッド(売買値幅)の縮小、ヘッジのしやすさ、そして極端なアービトラージ機会の減少へとつながっていく。初期の暗号資産市場に特有だった「歪みで儲ける」フェーズが終わり、伝統的な金融市場に近い、より整然とした市場構造へ移行しつつあるとも解釈できる。

カリートレーダーにとっては旨味の消失だが、市場全体の健全性という観点では、必ずしも悪いニュースではない。この二面性こそが、今回のベーシス崩壊を読み解くうえで最も重要なポイントだ。

投資家・トレーダーが押さえるべき視点

今回の動きから、いくつかの実務的な示唆が得られる。第一に、暗号資産市場でも「リスクフリーレート(無リスク金利)」との比較が不可欠になったという点だ。年率3%のデルタニュートラル戦略は、価格変動やカウンターパーティ(取引相手)リスク、資金効率を考えれば、3.8%の国債に対して合理的な選択肢とは言いにくい。

第二に、ベーシスやファンディングレートは、市場センチメントの先行指標として機能しうる。極端な高ベーシスは過熱、長期の低ベーシスは冷え込みを示す傾向がある。ポジションを取る前に、これらのデリバティブ指標を確認する習慣は有効だ。

第三に、DEX(分散型取引所)やDeFi領域での運用を検討する読者にとっても、この構造変化は無関係ではない。中央集権型取引所の先物ベーシスが縮小する局面では、オンチェーンの利回り機会との比較検討がより重要になる。いずれの場合も、表面利回りだけでなく、実質的なリスク調整後リターンで判断する姿勢が求められる。

なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨するものではない。数値や市場環境は変動するため、実際の判断にあたっては必ず一次情報を確認してほしい。

まとめ

ビットコイン先物のキャリートレードは、2021年の年率20%超から、2026年には年率約3%へと利回りが崩壊し、2月以降157日にわたって2年物米国債(平均3.8%)を下回り続けている。これほど長い局面は過去に2022年8月〜2023年1月の一度しかなく、当時はサイクルの底と重なった。

利回りの低下は先物取引高の急減(2月の約1.47兆ドルから7月の約8.8億ドルへ)という副作用を伴う一方で、市場の非効率性が縮小し、流動性向上とスプレッド縮小をもたらす「成熟のサイン」でもある。トレーダーにとっては旨味の消失だが、市場構造の観点ではネガティブ一辺倒ではない。今後は、無リスク金利との比較を前提に、デリバティブ指標を市場の温度計として活用する視点がますます重要になるだろう。

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