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トークン化株式に「デジタル紙危機」再来の懸念、Fairmint警告
トークン化株式·8分で読める

トークン化株式に「デジタル紙危機」再来の懸念、Fairmint警告

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-08-23

📋 この記事のポイント

  • 1トークン化株式の普及で、所有権記録や保管構造の分断が新たな決済危機を招く可能性があります。
  • 2Fairmint CEOの警告を基に、1960年代の紙危機との共通点、法的権利の違い、投資前の確認事項を解説します。
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トークン化株式とは、株式または株式への権利・経済的エクスポージャーを、ブロックチェーン上のトークンとして表現した金融商品です。 結論からいえば、取引がオンチェーン化されても、法的な株主名簿、保管株式、トークン残高が一致しなければ、決済インフラの問題は解消されません。 FairmintのJoris Delanoue CEOは、分断された台帳が増え続ければ、1960年代のウォール街を混乱させた「ペーパーワーク危機」のデジタル版が起こり得ると警告しています。

Fairmint CEOが警告する「デジタル版の紙危機」

CoinDeskが2026年8月22日に報じたインタビューで、オンチェーン証券インフラを提供するFairmintのJoris Delanoue CEOは、現在のトークン化株式市場について「紙危機をデジタルな形で再現していないか」が重要な問いだと指摘しました。

問題の中心は、ブロックチェーンそのものの処理性能ではありません。取引所、特別目的事業体(SPV)、カストディアン、トークン発行者、独自台帳が、それぞれ異なる方法で所有権を記録することにあります。

例えば、ある事業者が米国株を保管し、その株価に連動するトークンを発行したとします。オンチェーンではトークンが即座に移転しても、保管株式の名義、事業者内部の顧客記録、正式な株主名簿が同時に更新されるとは限りません。複数のチェーンや取引所へ同種の商品が広がれば、どの記録が最終的な所有権を示すのかが分かりにくくなります。

Delanoue氏は「トークンは必ずしも株式ではないが、株式をトークンとして発行することはできる」という趣旨を述べています。見た目が同じオンチェーントークンでも、発行構造によって投資家が取得する権利は大きく異なるという意味です。

1960年代のウォール街で何が起きたのか

1960年代後半の米国証券市場では、売買の増加に対して、紙の株券を人手で受け渡し、照合し、名義を書き換えるバックオフィス処理が追いつかなくなりました。未処理取引が積み上がり、株券の紛失、盗難、不正、決済遅延のリスクが拡大しました。

DTCCの資料によると、取引所は事務処理の遅れを解消するため、1968年に水曜日の取引を休止し、ほかの曜日の取引時間も短縮しました。こうした危機への対応として、証券を中央で保管し、現物を動かさず帳簿上で権利を移転する仕組みが整備され、1973年にDepository Trust Company(DTC)が設立されました。

現在は紙の株券ではなく、ブロックチェーン上の記録を使えるため、当時と技術環境は異なります。しかし、台帳が増えすぎて相互に整合しなければ、「誰が何を所有しているかを大量の取引後に確定できない」という本質的な問題は共通します。

スマートコントラクトが正常に動作しても、その外側にある保管口座や法的名簿が同期していなければ、完全な決済とはいえません。高速なトークン移転が、バックオフィスの照合負担を見えにくくする可能性もあります。

「株式そのもの」と「株価連動商品」は別物

米証券取引委員会(SEC)の2026年1月のスタッフ声明は、トークン化証券を大きく、発行会社側がトークン化するモデルと、第三者が他社の証券をトークン化するモデルに整理しています。

発行会社またはその代理人が正式な株主記録にブロックチェーンを組み込み、トークン移転と株式所有権の移転を連動させる場合、オンチェーン台帳がマスター・セキュリティホルダー・ファイルの全部または一部になります。Fairmintは、SEC登録移転代理人として、権威ある株主記録をオンチェーンで運用する方針を掲げています。

一方、第三者が発行する商品には複数の構造があります。カストディアンが原株を保管し、トークンがその証券に対する間接的な権利を表す場合もあれば、原株の価格へ連動するだけのリンク証券やセキュリティベースド・スワップである場合もあります。

後者では、トークン保有者が原株発行会社の株主になるとは限りません。議決権、配当を直接受け取る権利、株主向け情報へのアクセス、発行会社に対する請求権を持たない可能性があります。また、原株だけでなく、トークン発行者、SPV、カストディアンの信用リスクや破綻リスクも負います。

したがって「Apple株トークン」「Tesla株トークン」のような名称だけを見て、通常の証券口座で原株を取得する場合と同じ権利があると判断するのは危険です。商品説明、契約文書、保管構造を確認する必要があります。

ブロックチェーンだけでは解決できない三つの分断

第一は、記録の分断です。オンチェーン残高、移転代理人の株主名簿、証券会社やカストディアンの内部帳簿が別々に存在すると、障害や取消処理が発生した際に、どの記録を優先するかという問題が生じます。

第二は、ネットワークの分断です。Ethereum、Solana、Canton Networkなど、異なるネットワーク上でトークン化証券が発行されても、それぞれの本人確認、ウォレット登録、移転制限、決済条件が共通とは限りません。ブリッジでトークンを移せたとしても、法的な権利まで自動的に別チェーンへ移転するとは限らない点が重要です。

第三は、権利の分断です。価格連動、配当相当額、議決権、償還請求権は別々の要素です。価格が原株と連動していても、トークン保有者が原株の法的所有者であるとは限りません。

FairmintはCanton Network向けのObserver Nodeを通じ、プライバシーを保ちながら規制当局やコンプライアンス事業者が取引を観測できる仕組みを展開しています。これは、トークン移転の速さだけでなく、監査可能性と所有権記録の整合性を市場インフラへ組み込もうとする事例です。

規制と既存インフラはどう対応しているか

SECスタッフは、登録移転代理人が分散型台帳技術を正式な株主記録として利用できるとの見解を示しています。ただし、記録の正確性、最新性、保全、保存、当局への提出可能性など、既存の証券法上の要件を満たすことが前提です。

つまり、ブロックチェーンを採用しただけで移転代理人や記録管理が不要になるわけではありません。むしろ、秘密鍵の紛失、不正発行、ウォレット制裁、相続、裁判所命令、取引取消しといった現実の問題を処理する運用ルールが必要になります。

DTC側もトークン化を既存市場から切り離してはいません。SECスタッフが2025年に示したノーアクションレター関連の枠組みでは、DTC参加者が保有する適格証券の権利を対応ブロックチェーン上でトークン化し、登録済みウォレット間で移転する構想が示されました。DTCのシステムが移転を追跡し、公式帳簿へ反映する設計です。

これは、既存の権威ある記録とトークンを接続するアプローチです。完全に独立したトークンを乱立させるのではなく、どの台帳が最終記録なのかを明確にする点で、Fairmintの問題提起への一つの回答といえます。

投資家がトークン化株式を選ぶ前の確認項目

まず、商品が「原株そのもの」「原株に対する間接的な権利」「価格連動型の商品」のどれに該当するかを確認します。名称やティッカーではなく、法的文書に記載された発行者と権利を見ることが重要です。

次に、正式な株主名簿を誰が管理しているかを確認します。Fairmintのような登録移転代理人が関与しているのか、カストディアンの内部帳簿だけで管理されるのか、ブロックチェーンが正式記録なのか補助記録なのかを区別してください。

さらに、原株の保管者、トークン発行量と保管残高の照合方法、償還条件、配当や議決権の扱い、発行者またはSPVが破綻した場合の請求順位を調べます。スマートコントラクトの監査だけでは、保管資産や法的権利の存在までは証明できません。

最後に、取引可能時間と決済完了を混同しないことです。トークンが常時送付できても、法定通貨決済、本人確認、カストディアンの営業時間、正式名簿への反映が常時動いているとは限りません。出庫先ウォレットや別プラットフォームで受け入れ可能かも確認すべきです。

まとめ

Fairmintの警告は、トークン化株式そのものを否定するものではありません。論点は、ブロックチェーン上で取引できることと、法的に有効な所有権が正確に移転することは別だという点です。

1960年代の紙危機は、取引量に対して所有権記録と決済事務が追いつかなかったことで発生しました。現代でも、取引所、SPV、カストディアン、移転代理人、複数チェーンの記録が分断されれば、同じ構造の問題がデジタル環境で再現される可能性があります。

投資家は利便性や取引時間だけでなく、トークンが表す法的権利、正式台帳の所在、原株の保管方法、償還条件、仲介事業者の破綻時対応を確認する必要があります。トークン化株式の健全な普及には、オンチェーンの速度と、既存証券市場が築いてきた記録管理・監査・投資家保護を両立させる設計が欠かせません。

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