米商品先物取引委員会(CFTC)は、従来から投資が認められている資産であれば、一定条件の下でそのトークン化版にも顧客資金を投資できるとの見解を示しました。 また、規制上の要件をすべて満たす限り、ブロックチェーン上の記録を正式な規制記録として利用できることも明確にしています。 ただし、個別の暗号資産やトークン、UniswapなどのDEXを一括承認したわけではありません。
CFTCがトークン化資産とブロックチェーン記録の扱いを明確化
CFTCの市場参加者部門、市場監督部門、清算・リスク部門は2026年9月24日、暗号資産およびブロックチェーン技術に関するFAQを更新しました。今回追加された主な論点は、顧客資金によるトークン化資産への投資と、オンチェーン記録による保存義務の履行です。
先物取引業者(FCM)やデリバティブ清算機関(DCO)は、CFTC規則1.25で投資が認められた資産について、条件を満たせばトークン化された形態でも顧客資金を投資できます。重要なのは、ブロックチェーンを使っているかではなく、原資産の適格性と、トークン保有者が取得する法的・経済的権利です。
たとえばBlackRockのBUIDLやFranklin TempletonのBENJIのようなトークン化金融商品を連想しやすいニュースですが、今回のFAQは特定商品を名指しで承認していません。各商品について、規則1.25の要件、権利構造、保管方法などを個別に確認する必要があります。
同様に、Ethereumなどのブロックチェーンに記録を保存しただけで、規制上の記録義務を自動的に満たすわけでもありません。真正性、信頼性、保存性、当局への提出可能性を含む既存要件が引き続き適用されます。
顧客資金を投資できるトークン化資産の条件
更新FAQのQ12は、FCMまたはDCOが顧客資金をトークン化された適格資産へ投資するための条件を示しています。
第一に、トークンの裏付けとなる原資産自体がCFTC規則1.25(a)上の許容投資でなければなりません。単に米国債価格へ連動するトークンや、発行者が米国債を保有すると説明する商品であるだけでは不十分です。
第二に、トークン保有者が、伝統的な形態の資産を保有する場合と同一、または機能的に同等の法的・経済的権利を取得する必要があります。裏付け資産に対する直接的な権利がなく、発行会社に対する契約上の請求権しか持たない商品は、同等性の判断で問題になる可能性があります。
第三に、流動性、集中制限、満期までの期間、商品特性に関する制限など、規則1.25の条件をすべて満たさなければなりません。トークン化によって移転が効率化されても、原資産や商品設計に伴う信用・市場・流動性リスクが消えるわけではありません。
第四に、トークン化資産を規制上認められた保管先で保有する必要があります。適格な政府マネー・マーケット・ファンドをトークン化した商品へ投資する場合には、資金を保管する主体から規則1.26(b)に基づく書面の確認を取得することも求められます。
したがって、BUIDL、BENJI、Ondo FinanceのUSDYなど、現実資産を扱うプロジェクトすべてが自動的に顧客資金の投資対象になるわけではありません。名称や裏付け資産の説明ではなく、具体的な権利、償還構造、保管先、流動性を商品ごとに審査する必要があります。
ブロックチェーン上の記録は正式な規制記録になり得る
FAQのQ13とQ14では、CFTC規則1.31および45.2が技術中立であることが改めて示されました。対象企業が規則上の要件を完全に満たせるのであれば、ブロックチェーンまたは分散型台帳技術を使って記録を作成・維持し、記録保存義務を履行することにCFTCの各部門は異議を唱えないとしています。
対象にはFCMだけでなく、スワップ執行施設(SEF)、指定契約市場(DCM)、DCO、スワップディーラー、主要スワップ参加者などが含まれます。規則45.2に関係するスワップデータも、必要な要件を満たせばオンチェーンで記録できます。
一方、EthereumやSolanaにトランザクションが残っているというだけでは不十分です。規制対象企業は、電子記録の真正性と信頼性を確保するシステムおよび統制を整備し、必要な記録を検索・提出できなければなりません。ウォレットアドレスやトランザクションハッシュだけでなく、それがどの顧客、取引、契約に対応するのかを当局が検証できる状態にする必要があります。
UniswapやCurve Financeのオンチェーン取引履歴は透明性に優れていますが、公開台帳の存在と、規制対象企業の記録管理体制は別の問題です。秘密鍵管理、権限設定、データの関連付け、監査手順まで含めた運用設計が必要になります。
オフチェーンの複製は一律に必要ではない
FAQのQ15では、ブロックチェーンを記録保存に利用する企業が、同じ記録のオフチェーン版を維持しないことだけを理由に、CFTCスタッフが異議を唱えることはないとの見解が示されました。
これは、許可型のプライベート台帳を使う金融機関にとって重要です。ブロックチェーン側で保存、アクセス制御、監査、提出の仕組みを完結できるなら、別システムへの二重保存を一律に求めない考え方だからです。
ただし、Ethereumのようなパブリックかつパーミッションレスなネットワークを利用する場合は追加の備えが必要です。ネットワークやブロックエクスプローラーが停止した場合でも、記録を保持し、CFTCの検査に提出できるシステムと統制を用意しなければなりません。
具体的には、自社管理ノード、検証済みインデクサー、複数のデータ取得経路、災害復旧手順などが検討対象になります。Etherscanのような第三者サービスだけに依存し、そのサービスへ接続できなければ記録を提示できない設計は、FAQが求める継続的な提出能力と整合しない可能性があります。
オフチェーン複製が常に必須ではないことと、バックアップや非常時対応が不要であることは同義ではありません。
2025年のトークン化担保ガイダンスから続く政策
今回の更新は、CFTCが2025年12月に公表したStaff Letter 25-39の延長線上にあります。同文書は、米国債、政府機関債、社債、マネー・マーケット・ファンド持分、株式などの現実資産をブロックチェーン上のトークンとして表現する仕組みを想定し、デリバティブ市場の担保として扱う際の考え方を整理しました。
Staff Letter 25-39は、適格資産、法的執行可能性、分別管理、カストディ、ヘアカットと評価、オペレーショナルリスクを主要な検討事項に挙げています。トークン化によって原資産の基本的性質が変わらない場合がある一方、トークン化の方法によって保有者の権利や保護水準が異なるため、個別分析が必要だとしています。
また、2026年3月に公表された従来版FAQでは、一定条件下でBitcoin、Ether、決済用ステーブルコインを証拠金として扱う場合の考え方も示されました。しかし今回の「顧客資金による投資」は、暗号資産全般への自由な投資を認めるものではありません。
たとえばUSDCなどの決済用ステーブルコインと、米国債や政府マネー・マーケット・ファンドを表章するトークン化資産は、法的性質も適用される条件も異なります。ニュースの見出しだけから「CFTCが顧客資金による暗号資産投資を全面解禁した」と解釈するのは正確ではありません。
DEX・DeFi市場への実務的な影響
今回のFAQが直接対象とするのは、CFTCの監督下にある登録業者や登録市場です。Uniswap、Aave、Maker、Curve FinanceといったDeFiプロトコルに対し、新しい営業許可や包括的な規制免除を与えた文書ではありません。
それでも、DeFi市場には間接的な影響があります。規制対象企業がトークン化された許容資産を担保管理や資金運用へ導入しやすくなれば、従来金融とオンチェーン市場を接続するインフラへの需要が高まる可能性があります。カストディ、本人確認、権限管理、価格評価、償還、チェーン障害時の復旧を組み込んだサービスが重要になります。
DEX利用者が確認すべきなのは、トークンが米国債などを裏付けにすると宣伝しているかだけではありません。発行主体、法的保有者、償還請求権、カストディアン、対応ネットワーク、スマートコントラクト管理権限、譲渡制限を確認する必要があります。
AaveやMakerで現実資産関連トークンが担保候補になったとしても、CFTC規則上の適格性と、DeFiプロトコルのガバナンスによる担保採用は別々の判断です。CFTCのFAQを、特定トークンの安全性、価格維持、スマートコントラクトの健全性を保証するものとして利用してはいけません。
まとめ
CFTCの更新FAQは、トークン化資産とブロックチェーン記録を、既存の規制枠組みの外側にある例外ではなく、条件を満たせば通常の金融実務へ組み込める技術として扱っています。
顧客資金を投資するには、原資産が許容投資であること、伝統的資産と同一または機能的に同等の権利があること、流動性や満期などの条件を満たすこと、適格な保管先を利用することが必要です。
オンチェーン記録についても、オフチェーン複製が一律必須とはされませんでしたが、ネットワーク障害時を含めて記録を保持・提出できる統制が欠かせません。BUIDL、BENJI、USDC、Ethereum、Uniswapなどに関心を持つ読者は、今回の発表を個別商品やDEXの承認と混同せず、権利構造と運用体制を確認することが重要です。





