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米CLARITY法案否決で銀行とドバイが得るものを解説
暗号資産規制·7分で読める

米CLARITY法案否決で銀行とドバイが得るものを解説

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-09-22

📋 この記事のポイント

  • 1米国向けサービスと他地域向けサービスの提供条件を分離する
  • 2ステーブルコイン報酬の原資、提供主体、変動条件を明示する
  • 3SEC、CFTC、VARAなど、対象地域の一次資料を継続的に確認する
  • 4「分散型」という名称だけで登録義務がなくなると判断しない
  • 5トークン化証券と通常の暗号資産を同じ商品として扱わない
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米上院は、暗号資産の市場構造を定めるCLARITY Actの審議入りを阻止した。法案自体が廃案になったわけではないが、成立への道筋は大きく後退している。

短期的な勝者として意識されるのは、預金流出を警戒する米国の銀行と、明確なライセンス制度を整えるドバイなどの海外拠点だ。一方、DEX・DeFi事業者には、米国での不確実性が長引く結果となった。

CLARITY Actはなぜ上院で前進できなかったのか

CLARITY Actは、デジタル資産の発行・取引について、米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の役割を整理し、連邦レベルの市場構造を構築することを目指す法案である。正式名称は「Digital Asset Market Clarity Act of 2025」で、法案番号はH.R.3633だ。

米上院の公式記録によると、2026年9月15日に行われた動議の打ち切り採決は賛成49、反対50となり、審議を進めるために必要な票を得られなかった。これは法案の最終的な可決・否決ではなく、本会議で審議を始めるための手続き上の採決である。

CoinDeskは、反対論の背景として、暗号資産規制の内容だけでなく、政府関係者の暗号資産事業をめぐる倫理規定や、ステーブルコイン報酬と銀行預金の競争が争点になったと報じた。

したがって、「米国が暗号資産を禁止した」と理解するのは正しくない。現時点で起きたのは、議会がSECとCFTCを横断する恒久的な枠組みを成立させられず、既存法に基づく規制が続くという状況である。

銀行が勝者とされる理由はステーブルコイン報酬にある

Forteの取引所市場開拓責任者Anton Golub氏はCoinDeskに対し、今回の結果について「銀行がこのラウンドを制した」との見方を示した。その理由は、銀行がステーブルコインを単なる暗号資産商品ではなく、預金を奪い得る競争相手として認識し始めているためだという。

銀行預金は、銀行にとって融資や資金運用の基盤である。一方、USDCやUSDTなどのステーブルコインを保有する利用者に、取引所やDeFiサービスが報酬を提供すれば、利用者が銀行口座に置いていた資金をオンチェーンへ移す動機になり得る。

重要なのは、ステーブルコインそのものが自動的に利息を支払うとは限らない点だ。報酬は、発行者、取引所、レンディングサービス、流動性プールなど異なる主体から提供される場合がある。CircleのUSDCを保有することと、AaveへUSDCを供給して変動利回りを得ることは、リスクも法的構造も同じではない。

CLARITY Actをめぐる対立には、こうした報酬をどこまで認めるかという問題が重なった。法整備が進まなければ、銀行側は少なくとも当面、ステーブルコイン報酬との競争条件が法律によって明確化される事態を回避できる。ただし、報酬サービスが全面的に禁止されたわけではなく、個別の商品や提供主体に対する既存法の適用は引き続き検討される。

SECとCFTCによる行政主導の規制が続く

議会が包括的な制度を作れない場合、実務上のルール形成はSECとCFTCの規則、解釈、登録制度、適用除外へ依存することになる。これは迅速な対応を可能にする一方、政権や委員長の交代で方針が変わりやすいという問題を残す。

実際にSECは2026年9月17日、トークン化された米国上場株式を対象とする一時的・条件付きの適用除外を公表した。対象となるTokenized Securities Venueは、許可制参加者がパブリックブロックチェーン上のAMM型流動性プールを利用する仕組みである。

この措置には、スマートコントラクトの監査可能性、取引情報の開示、原株式と同等の権利、原市場で売買停止となった場合の連動停止などの条件がある。Uniswapのように誰でも自由に参加できる一般的なDEXを、そのまま米国株式市場として認めた制度ではない。

SECの措置は、法整備が止まってもオンチェーン金融の実験がすべて停止するわけではないことを示す。同時に、議会制定法ではなく期限付きの適用除外に依存するため、事業者は制度変更や追加条件を織り込まなければならない。

ドバイなど海外の規制拠点が有利になる仕組み

CoinDeskの記事がもう一つの勝者として挙げたのが、アラブ首長国連邦(UAE)をはじめとする海外の暗号資産拠点である。米国の制度が不明確な状態にとどまれば、事業者、人材、投資資金は、事前に必要なライセンスと規則を確認できる地域を選びやすくなる。

ドバイではVirtual Assets Regulatory Authority(VARA)が、DIFCを除くドバイ首長国内の仮想資産事業を監督している。VARAは取引所、ブローカーディーラー、カストディ、レンディング、移転・決済などの活動区分を示し、事業開始前のライセンス取得を求めている。

これは「ドバイなら規制が緩い」という意味ではない。申請企業には、ガバナンス、資金源、経営陣、AML・CFT、技術、情報セキュリティ、事業終了計画などに関する資料が求められる。強みは無規制であることではなく、規制対象と申請経路が比較的明示されていることにある。

DEX関連プロジェクトやウォレット、カストディ事業者が拠点を検討する際には、法人設立地だけでなく、実際の顧客所在地、フロントエンドの運営主体、トークン発行、資産保管、法定通貨との交換を分けて考える必要がある。ドバイ法人を設立しても、米国居住者へサービスを提供すれば米国法の問題が自動的に消えるわけではない。

DEX・DeFi事業者と利用者への実務的な影響

Uniswap、Aave、CurveのようなDEX・DeFiプロトコルにとって、CLARITY Actの停滞は即時の技術変更を意味しない。スマートコントラクトは稼働を続けられるが、開発会社、財団、DAO、フロントエンド、流動性提供者の法的な扱いは引き続き個別に判断される。

特に確認すべきなのは、プロトコルとサービス提供者を区別することである。公開されたスマートコントラクト、ウェブ画面を運営する企業、利用者資産を管理するカストディアン、報酬を設計する事業者では、規制上の論点が異なる。

事業者には次の対応が現実的だ。

  • 米国向けサービスと他地域向けサービスの提供条件を分離する
  • ステーブルコイン報酬の原資、提供主体、変動条件を明示する
  • SEC、CFTC、VARAなど、対象地域の一次資料を継続的に確認する
  • 「分散型」という名称だけで登録義務がなくなると判断しない
  • トークン化証券と通常の暗号資産を同じ商品として扱わない

利用者側も、Aaveへの供給、Curveへの流動性提供、中央集権型取引所の報酬プログラム、銀行預金を同じ「利息」として比較すべきではない。スマートコントラクト、価格変動、デペッグ、流動性、事業者信用、法的保護の範囲がそれぞれ異なるためだ。

今回の報道を読む際の注意点

見出しでは「上院がCLARITY Actを殺した」と表現されているが、正確には審議入りに必要な手続き採決が成立しなかったという状況だ。将来、修正案や別法案として再び審議される可能性まで否定されたわけではない。

また、銀行とドバイが利益を得るという評価は、株価や収益の増加を示す確定的な結果ではなく、競争環境と制度選択に関する専門家の分析である。銀行はステーブルコイン報酬との競争激化を先送りでき、VARAのような制度を持つ地域は相対的に企業を誘致しやすくなる、という意味での「勝者」だ。

暗号資産事業者にとって重要なのは、米国か海外かを単純に選ぶことではない。SECのトークン化株式向け適用除外のように米国内でも新しい道は開かれており、海外拠点にも厳格なライセンス、AML、顧客保護の義務がある。各活動を分解し、どの当局の規制対象になるかを確認する必要がある。

まとめ

CLARITY Actの上院での停滞により、米国の暗号資産市場構造は、当面SECとCFTCによる行政主導の運用に依存する。銀行はステーブルコイン報酬との競争条件が法律で整理される事態を先送りでき、ドバイなど制度を明文化した地域は事業者誘致で相対的に有利になる可能性がある。

ただし、これは銀行の恒久的勝利でも、米国のDeFi終了でもない。SECはすでに条件付きでトークン化株式のオンチェーン取引を認める措置を打ち出している。DEX・DeFi事業者は、法案の再審議を待つだけでなく、サービスの提供主体、対象顧客、資産の種類、報酬設計、利用地域を分けて規制対応を進めることが重要だ。

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