ARK Investは2026年9月14日、株価が上昇したCircleやCoinbaseなどの保有株を一部売却しました。 今回の取引は暗号資産市場からの全面撤退ではなく、上昇局面における利益確定やETFの比率調整とみるのが妥当です。 DEX・DeFi利用者にとっては、株式売却そのものより、USDCの流通、規制動向、オンチェーン取引量への波及を確認することが重要です。
ARK InvestがCircleとCoinbase株を売却
The Blockによると、Cathie Wood氏が率いるARK Investは、Circle Internet Group、Coinbase Global、Bitmine Immersion Technologies、Bullishの株式と、自社が運用に関与するARK 21Shares Bitcoin ETFを売却しました。
Circleについては、2つのファンドを通じて合計142,350株を売却しました。9月14日の終値97.42ドルで計算すると、売却額は約1,380万ドルです。同日のCircle株は7.53%上昇していました。
Coinbaseは36,628株を売却しました。終値191.45ドルを基準にした評価額は約700万ドルです。同日のCoinbase株は9.24%上昇しました。上昇した日に持ち高を減らしているため、ニュースの見出しだけから「CircleやCoinbaseの将来性を否定した」と判断するのは早計です。
ARK Investは年間を通じて、保有銘柄の追加と削減を繰り返しています。ARKの公式説明では、同社ETFにおいて一銘柄を購入できる比率の上限は通常10%です。値上がりによって特定銘柄の構成比が高まれば、投資判断に大きな変化がなくてもリバランスのために売却する場合があります。
売却対象は暗号資産関連銘柄に広がった
今回の調整はCircleとCoinbaseだけではありません。ARK Investは、イーサリアム財務戦略を掲げるBitmine Immersion Technologiesを153,881株売却しました。終値25.76ドルを基準にすると約396万ドルです。同日の株価は2.92%上昇しました。
機関投資家向け暗号資産取引所を運営するBullishについても18,280株を売却しました。終値37.62ドルを基準にした評価額は約68万7,693ドルで、株価は7.12%上昇しています。Bullishは単なる現物取引所ではなく、単一のグローバル注文板、独自の自動マーケットメーカー、現物・デリバティブ取引などを提供する市場インフラ企業です。
売却額が最も大きかったのはARK 21Shares Bitcoin ETFです。ARK InvestはARKBを1,528,953口売却し、終値26.19ドルを基準に約4,000万ドルを縮小しました。ARKBはCME CF Bitcoin Reference Rateのニューヨーク版を基準に、経費などを差し引いたビットコイン価格への連動を目指す商品です。
ARKBの売却まで含めると、今回の動きは個別企業だけを狙った判断というより、暗号資産関連エクスポージャーを横断的に調整した取引と解釈できます。ただし、ARK Investが開示した取引だけでは、今後も継続的に売却するのか、短期的な比率調整で終了するのかまでは分かりません。
暗号資産関連株が上昇した背景
The Blockは、暗号資産関連株の上昇と、米国議会におけるデジタル資産市場構造法案への期待が重なったと報じています。市場構造法制は、暗号資産を取り扱う企業がどの規制当局の監督を受け、どのようなルールでサービスを提供するかに関わる重要な材料です。
規制の明確化が進めば、CoinbaseやBullishのような中央集権型取引所だけでなく、Circleが発行するUSDC、カストディ、トークン化資産、オンチェーン決済を扱う事業者にも影響が及びます。一方、法案の審議結果や最終的な条文は確定するまで変わり得ます。法案への期待だけを前提に、株価や暗号資産価格が一方向へ進むと考えるべきではありません。
今回のARK Investの売却は、関連株がそろって上昇したタイミングで実行されました。したがって、規制期待を弱材料と評価して売った可能性だけでなく、上昇によって膨らんだポジションを所定の比率に戻した可能性も考える必要があります。
Circle株の売却をUSDC売りと混同しない
Circle株とUSDCは性質が異なります。Circle株はCircle Internet Groupの事業価値や収益、成長期待を反映する有価証券です。USDCは米ドルとの1対1での償還を想定し、現金や流動性の高い現金同等資産によって裏付けられるよう設計されたステーブルコインです。
Circleの公式発表によると、2026年第2四半期末のUSDC流通量は733億ドル、同四半期のオンチェーン取引量は14.8兆ドルでした。CircleはEthereum、Solana、Base、Arbitrum、Unichainなど複数のネットワークでUSDCを展開しています。
そのため、ARK InvestがCircle株を売却しても、UniswapやCurve、Aaveなどに存在するUSDCが自動的に売却されたり、流動性プールから引き出されたりするわけではありません。株式市場でのCRCL売買と、ブロックチェーン上のUSDC移転は別の取引です。
DEX・DeFi市場への実際の影響を判断するには、Circle株の値動きだけでなく、USDCの流通量、準備資産の開示、償還状況、各チェーンにおける流動性を確認する必要があります。特にUSDCを担保や決済資産として使う場合は、利用するチェーンのネイティブUSDCか、ブリッジされた資産かも確認すべきです。
Coinbase縮小がDeFi市場に与える意味
Coinbaseは中央集権型取引所ですが、DeFiと無関係ではありません。同社はBaseを通じてオンチェーン経済への接点を広げ、USDCの流通や開発者向けインフラにも関与しています。Coinbaseの公式発表によると、2026年第2四半期の暗号資産取引高シェアは10.3%でした。また、Coinbase製品内で保有されるUSDCの平均残高は200億ドルに達しています。
ARK Investによる約700万ドル相当のCoinbase株売却は、CoinbaseのBase事業やUSDC関連サービスが縮小されたことを意味しません。株式ポジションの調整と、プロトコル上の活動を分けて考える必要があります。
DeFi利用者が確認したいのは、Base上のUniswapやAerodrome Financeなどにおける流動性、ステーブルコインの入出金経路、シーケンサーやブリッジの稼働状況です。Coinbase株の上昇や下落だけでは、DEXのスワップ価格、スリッページ、スマートコントラクトの安全性を直接判断できません。
一方で、上場企業の業績や規制対応は、機関投資家がオンチェーン市場へ参入する際の環境に影響します。CoinbaseやCircleの事業拡大が続けば、法定通貨とDeFiを結ぶ経路が増える可能性があります。ただし、それが個々のDeFiプロトコルの収益性やトークン価格の上昇を保証するものではありません。
DEX・DeFi利用者が確認すべき実務ポイント
第一に、株式ニュースとオンチェーンデータを切り分けましょう。ARK Investの売買は重要な機関投資家動向ですが、Uniswap、Curve、Aaveなどの流動性を直接示すデータではありません。利用予定のプールについて、預かり資産、出来高、価格への影響、スマートコントラクトの仕様を個別に確認する必要があります。
第二に、ステーブルコインの発行体情報を確認します。USDCを保有する場合はCircleの準備資産開示や月次保証報告、対応ネットワークを参照してください。異なるチェーンへ移動するときは、Circleの公式な移転手段なのか、第三者ブリッジが発行したラップ資産なのかによってリスクが変わります。
第三に、規制関連の速報を確定情報として扱わないことです。法案の提出、修正案、採決、成立、施行はそれぞれ別の段階です。Coinbase、Circle、Bullishなどの株価は期待だけで大きく動く場合があるため、短期的な値動きをDeFi市場全体の方向性と同一視しない姿勢が求められます。
第四に、ETFと暗号資産の直接保有の違いを理解しましょう。ARKBはビットコイン価格への連動を目指す商品ですが、ARKの公式ページが説明する通り、ARKBへの投資はビットコインの直接保有ではありません。自己管理ウォレットで保有する場合とも、DEXで取引する場合とも、権利、保管方法、手数料、利用可能な機能が異なります。
まとめ
ARK Investは暗号資産関連株の上昇局面で、Circleを約1,380万ドル、Coinbaseを約700万ドル相当売却し、Bitmine、Bullish、ARKBも縮小しました。複数資産を同時に減らしていることや、ARKが通常設定する銘柄比率の上限を踏まえると、今回の取引は暗号資産市場への単純な弱気転換ではなく、利益確定やポートフォリオ調整を含む可能性があります。
DEX・DeFi利用者は、ARK Investの売買だけで判断せず、USDCの流通・準備資産、利用チェーンの流動性、CoinbaseやCircleの公式発表、規制手続きの進行を確認することが大切です。株式市場のニュースは重要なシグナルですが、オンチェーン市場の安全性や収益機会を単独で保証するものではありません。





