dex.jp
NYSEがAvalancheを1年検証、株式トークン化計画の現在地
トークン化証券·7分で読める

NYSEがAvalancheを1年検証、株式トークン化計画の現在地

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-09-19

📋 この記事のポイント

  • 1NYSE親会社ICEがAvalanche技術を約1年間検証。
  • 2株式・ETFのトークン化構想、採用状況、規制面、DeFiへの影響を公式資料とともに解説します。
ポストLINE

トークン化証券とは、株式などの証券をブロックチェーン上のデジタルトークンとして表現する仕組みだ。 Ava Labs社長のCharley Cooper氏によると、NYSEはAvalanche技術を約1年間検証してきた。ただし、Avalancheの正式採用が決まったわけではない。 今回の報道が示すのは、世界的な証券取引所がブロックチェーンを実証実験ではなく、市場インフラの候補として具体的に評価していることだ。

NYSEがAvalanche技術を約1年間検証

The Blockは2026年9月18日、Ava Labs社長のCharley Cooper氏が、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とその親会社Intercontinental Exchange(ICE)によるAvalanche技術の検証について明らかにしたと報じた。

Cooper氏によれば、NYSE側は約1年間にわたり、Avalancheを既存システムへどう組み込めるかをAva Labsと検討してきた。評価対象はブロックチェーンの処理性能だけではない。プロジェクトの経済設計や、Ava Labsが取引所事業全体の要件を理解しているかについても厳しく確認されたという。

Avalanche Summitでは、ICEの戦略的イニシアチブ責任者Michael Blaugrund氏も、同社がAvalancheチームと深く協議していると説明した。AvalancheはICEが求める条件の多くを満たすとの趣旨を示した一方、特定のチェーンを採用したとは発表していない。

ここは重要な区別だ。約1年間の技術検証と緊密な協力関係は、Avalancheが有力候補であることを示す。しかし、契約締結、正式採用、本番環境への導入を意味するものではない。Cooper氏自身も、選定状況の公表はNYSE側に委ねる姿勢を取っている。

NYSEが計画するトークン化証券プラットフォーム

NYSEは2026年1月、米国株式とETFをトークン化して取引・オンチェーン決済する新プラットフォームの開発を正式に発表した。計画には規制当局の承認が必要であり、現時点で一般投資家向けサービスが始まったわけではない。

構想の中核は、NYSEの既存マッチング基盤「Pillar」と、ブロックチェーンを利用する取引後処理システムの組み合わせだ。ICEの公式発表では、曜日や時間帯に制約されない取引、即時決済、金額指定による注文、ステーブルコインを使った資金供給が想定されている。

対象には、従来形式で発行された証券と代替可能なトークン化株式に加え、当初からデジタル証券として発行される銘柄も含まれる。トークン保有者が配当や議決権に参加できる設計も掲げられている。

また、ICEは単一チェーンへの固定ではなく、決済とカストディで複数のブロックチェーンを扱える設計方針を示している。したがってAvalancheが採用される場合でも、唯一の基盤ではなく、複数ある決済ネットワークの一つになる可能性がある。

Avalancheが機関投資家向け基盤の候補になる理由

Avalancheの特徴は、公開型のC-Chainだけでなく、用途ごとに独自ルールを設定できるAvalanche L1を構築できる点にある。公式ドキュメントによると、各L1は参加条件、手数料体系、バリデーター構成、実行環境などを個別に設計できる。

例えば証券市場向けL1では、バリデーターに特定地域での運用、KYC・AML確認、必要なライセンスの保有といった条件を課せる。取引やスマートコントラクトの実行を許可されたアドレスだけに限定する構成も可能だ。

さらに、L1ごとに処理負荷が分離されるため、別のAvalanche L1で利用が急増しても、専用ネットワークの手数料や性能へ直接影響しにくい。取引参加者、閲覧権限、インフラ運営者を管理する必要があるICEのような事業者にとって、この柔軟性は評価対象になり得る。

ただし、これらはAvalancheが提供できる一般的な技術機能であり、NYSEがどの構成を試したかは公表されていない。NYSE専用L1の稼働や、AVAXが決済・手数料に使われることも確認されていないため、技術検証をAVAX需要へ直結させる解釈には注意が必要だ。

トークン化しても証券規制はなくならない

米証券取引委員会(SEC)は2026年1月のスタッフ声明で、トークン化証券を、所有権記録の全部または一部が暗号資産ネットワーク上で管理される証券と整理した。株式をブロックチェーン上に移しても、その法的性質が自動的に暗号資産へ変わるわけではない。

SECは、発行企業自身またはその代理人がトークン化するモデルと、第三者が既存証券に連動する商品を発行するモデルを区別している。第三者商品には、実際の株主権を表す受益権だけでなく、原資産への価格連動のみを提供するリンク証券や証券ベース・スワップに該当し得るものもある。

NYSEの公式構想は、従来証券と代替可能で、配当やガバナンス上の権利を維持するトークン化株式を含む。これは単なる株価連動トークンとは異なり、名義管理、カストディ、清算、企業行動への対応を既存市場と接続する必要がある。

NYSEはSECへトークン化証券の取引を可能にする規則変更も提出している。しかし、規則上の準備が進むことと、必要な取引後処理基盤が完成してサービスが開始されることは別問題だ。投資家は「規則提出」「技術検証」「正式採用」「商用開始」を分けて確認する必要がある。

DEX・DeFi市場へ及ぶ可能性

NYSEの計画が実現すれば、オンチェーン市場で扱われる資産は暗号資産から株式やETFへ広がる。特に、ステーブルコインを使った資金供給と即時決済は、売買代金と証券の受け渡しを同じデジタル基盤上で処理する可能性を持つ。

ただし、UniswapやTrader JoeのようなパーミッションレスDEXへNYSE銘柄がそのまま流入するとは限らない。米国株式では、投資家確認、取引資格、制裁対応、カストディ、相場監視、企業行動など、公開型DEXとは異なる管理が必要になる。

現実的には、認可されたブローカーディーラーだけが参加できる市場、許可制流動性プール、規制対応済みウォレットといった形が先行すると考えられる。Avalanche L1のアクセス制御はこうした構成と相性がよいが、参加者を限定するほど、一般的なDeFiが持つ自由なコンポーザビリティとは距離が生じる。

一方、複数チェーン対応が実現すれば、トークン化証券、ステーブルコイン、トークン化預金を異なるネットワーク間で扱う需要も生まれる。そこで重要になるのは、単なるブリッジ機能ではなく、法的な所有権がどの台帳で確定するか、障害時に取引をどう巻き戻すか、異なるカストディ事業者間で残高をどう照合するかという市場インフラ上の設計だ。

投資家が確認すべき今後の材料

第一に確認したいのは、ICEまたはNYSEによる正式なチェーン選定発表だ。Ava Labs幹部の発言だけでは、Avalancheの採用範囲や商用契約の有無までは判断できない。

第二は規制と運用基盤である。SECの手続きが進んでも、名義管理、DTCを含む取引後処理、カストディ、ステーブルコインまたはトークン化預金による資金決済が接続されなければ、全面的なオンチェーン取引は始められない。

第三は、トークンの法的権利だ。同じ「トークン化株式」という名称でも、発行企業が認める真正な株式、証券口座上の権利を表すトークン、第三者が発行する価格連動商品では、配当、議決権、カウンターパーティーリスクが異なる。

AVAXについても、NYSEによる技術評価を直ちにトークン価値の上昇材料とみなすべきではない。専用L1の手数料資産、バリデーター設計、C-Chainとの接続方法などが公表されるまでは、AVAXへの具体的な需要効果は未確認である。

まとめ

Ava LabsのCharley Cooper氏によると、NYSEと親会社ICEはAvalanche技術を約1年間検証し、既存取引所システムとの統合可能性や経済設計を評価してきた。これはAvalancheが機関向けブロックチェーンの有力候補として検討されていることを示す。

一方、NYSEはAvalancheの正式採用を発表していない。公式計画も複数チェーン対応を前提としており、規制承認や取引後処理基盤の整備が必要だ。

今回のニュースの本質は、AVAXの短期的な値動きではなく、NYSEが株式・ETF、ステーブルコイン、即時決済を組み合わせたオンチェーン市場を具体的に設計している点にある。今後はICEの正式発表、SEC手続き、採用チェーン、投資家の法的権利、実際の決済構造を順番に確認することが重要になる。

ポストLINE

関連記事