Balancerでは、プロトコルを段階的に終了し、DAOが保有する財務資産をBAL保有者へ分配するガバナンス提案が公開された。 現時点では提案段階であり、承認や終了が確定したわけではない。可決された場合、流動性プールは出金中心へ移行し、BAL保有者はトークンを焼却して財務資産を現物で受け取る仕組みとなる。
Balancerでプロトコル終了案が提出された
分散型取引所(DEX)のBalancerで、プロトコルの秩序ある終了と財務資産の分配を求める提案がガバナンスフォーラムへ提出された。
提案者は、Balancer Treasury Councilのメンバーであり、Balancer Labsの元CEOでもあるMarcus Hardt氏だ。提案には、新規事業開発の停止、一定の移行期間を設けたプロトコルの段階的終了、DAOの法的・実務的な閉鎖が含まれている。
重要なのは、記事公開時点でBalancerが直ちに停止するわけではない点だ。提案文では、プールの停止、手数料設定の変更、権限放棄、財務資産の移動といった終了作業は、ガバナンス投票の結果を待って実行すると説明されている。
投票はBalancerの標準的なガバナンス手続きに従い、フォーラムでの議論を経てSnapshotで実施される予定だ。提案に記載された予定期間は2026年9月25日から29日までとなっている。
終了提案に至った背景
今回の提案は、企業としてプロトコル開発を担ってきたBalancer Labsが2026年3月に事業終了を発表してから約6カ月後に提出された。
Balancer Labs共同創業者のFernando Martinelli氏は当時、2025年11月3日に発生したBalancer v2への攻撃が継続的な法的リスクを生み、企業体を維持することがプロトコルにとって負担になったと説明している。The Blockは、この攻撃による流出規模を約1億2,800万ドルと報じた。
攻撃を受けたのは旧世代のBalancer v2プールであり、Balancer v3は異なるアーキテクチャを採用している。ただし終了提案では、事件後の信用低下が事業成長を難しくしたことも認められている。
Balancer DAOは2026年春、運営体制をBalancer OpCoへ集約し、チームと支出を縮小する再建策を採用した。また、BIP-919ではBALの新規排出停止、veBALの段階的終了、プロトコル収益のDAO財務への集約などを打ち出していた。
しかし提案者によれば、再編後も継続的な収益成長に結び付く十分な需要を獲得できなかった。終了提案には、2026年8月の月間プロトコル収益が約3万ドルである一方、当時の月間支出は約15万ドルだったとの説明がある。残された財務を運営費として消費し続けるより、価値が残っている段階でBAL保有者へ返すべきだというのが提案の中心的な論拠だ。
BAL保有者への財務分配の仕組み
提案が可決された場合、DAO財務はBAL保有者へ現物かつ持分比例で分配される。提案時点で、kpkが管理する財務資産は現在価格ベースで少なくとも900万ドル相当と見積もられている。
ただし、900万ドルが最終的な分配額として確定しているわけではない。他のDAOウォレット、運営用Safe、未回収債権、複数チェーン上のポジションを調査・統合したうえで、第1回分配開始時のブロックにおける資産が監査される。価格変動、終了作業の費用、第三者に帰属する資産などによっても分配対象は変わる。
第1回分配は2027年5月末に始まり、同年11月末までの6カ月間実施される予定だ。参加する保有者はBALを請求コントラクトで焼却し、その数量に応じてDAOが保有する各種トークンを受け取る。
BALそのものや、最終的にBALへ変換される財務ポジションは、原則として分配対象から除外される。また、財務が保有するBALやBalancer Labs関連の特定SafeにあるBALは、分配比率を計算する際の供給量から除外される。
第2回分配は、第1回の終了から2カ月以内に実施される予定だ。対象は第1回でBALを焼却したアドレスのみで、未使用の終了予算、後から回収された資産、期限内に請求されなかった持分などがエアドロップされる。その後、さらに6カ月後に最終分配が行われる計画だ。
veBALとラッパートークンへの影響
veBALは、80% BAL・20% WETH構成のBalancer Pool Tokenをロックする仕組みだ。提案では、現在存在するveBALのロックが満了した後となる2027年5月末に第1回分配を開始する。
veBAL保有者は、ロック解除後に受け取るBAL/WETHのプールトークンを退出し、BALへ戻してから分配へ参加する必要がある。提案公開後に自らロック期間を延長した場合、分配期限までに解除できなければ請求できない可能性があるため注意が必要だ。
Aura FinanceのauraBALやStake DAOのsdBALについては、各プロトコルが独自の解除・交換スケジュールを設定する。第1回分配の終了までにBALへ戻せなければ、直接請求の対象にならない。
一方、TetuのtetuBALは恒久的にロックされ、通常の方法ではBALへ戻せない。このため提案では、投稿時点の保有者と裏付けBAL数量を固定し、第1回分配の開始時に裏付けBALの半分に相当するBALを財務から付与する特例が示されている。
ラッパートークン保有者は、BalancerだけでなくAura Finance、Stake DAO、Tetuなど各サービスの公式発表も確認する必要がある。非公式な交換サイトや、分配請求を装うリンクは利用すべきではない。
LPと流動性プールはどうなるのか
提案では、2026年10月30日を「出金専用」への移行日としている。停止機能を持つプールは一時停止され、必要に応じてRecovery Modeへ移行する。停止できないプールについては、コントラクト上可能な範囲でプロトコル手数料をゼロにし、そのまま動作させる方針だ。
Balancerのプールはノンカストディアルなスマートコントラクトで構成されているため、提案者は運営組織がなくなってもコントラクトからの出金自体は可能だと説明している。ただし、公式フロントエンド、ルーティング、インデックス機能などの提供範囲は縮小される。
LPは終了直前まで待つのではなく、自分が参加しているプールのバージョン、チェーン、停止可否、BPTの預け先を確認しておきたい。Aura FinanceのGaugeや外部VaultにBPTを預けている場合、最初に外部プロトコルから引き出す工程が必要になることもある。
なお、2025年の攻撃で影響を受けたLP向けの回収資産は、DAO財務の分配とは別に扱われる。BIP-892では、ホワイトハットや内部救済で確保した資産を、対象プールとネットワークごとに被害LPへ分配する方針が示された。終了提案でも、攻撃から回収された資産はBAL保有者への財務分配に含めないと明記されている。
今後の日程と利用者が確認すべきこと
提案上の主要日程は、2026年10月30日の出金専用化、2027年5月末の第1回分配開始、同年11月末の請求終了、2028年1月末までの第2回分配、同年7月末の最終分配となっている。
終了作業の予算は合計40万ドルが上限だ。内訳は2026年11月から2027年5月までが15万ドル、その後の最終分配までが3万ドル、必要な場合だけ使用する予備費が22万ドルである。使われなかった金額は財務へ戻され、後続の分配対象になる。
BAL保有者やLPが現時点で行うべきことは、慌てて取引することではなく、まず投票結果と公式実装を確認することだ。請求コントラクトの仕様は2027年2月までに公開され、監査後に第1回分配で使用される予定である。
ウォレット内のBAL、veBAL、auraBAL、sdBAL、tetuBALを区別し、それぞれの解除条件を整理しておくことも重要だ。分配開始前にはスナップショット対象ブロックが少なくとも2週間前に告知されるため、Balancer公式フォーラムとSnapshotを直接確認したい。
まとめ
Balancerの終了案は、経営会社Balancer Labsの閉鎖後も続けられたDAO主導の再建策を終え、残存財務をBAL保有者へ返すための提案である。
可決された場合、プールは段階的に出金中心へ移行し、BAL保有者は2027年5月末からトークンを焼却して財務資産を受け取る。veBALや各種ラッパートークンには個別の解除手順が必要であり、攻撃被害LP向けの回収資産は別枠で管理される。
ただし、終了、900万ドル以上とされる財務額、分配コントラクトの実装はいずれも現時点で確定していない。利用者は公式投票、監査済みコントラクト、対象アドレスの発表を確認し、第三者が送る請求リンクや早期交換の勧誘を避ける必要がある。





