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伊タウ銀行がトークン化を加速、ブラジルの実証実験
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伊タウ銀行がトークン化を加速、ブラジルの実証実験

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-08-12

📋 この記事のポイント

  • 1中南米最大手イタウ・ウニバンコがOpenAssetsと組み、ANBIMA主導でトークン化債券・ファンドを検証。
  • 2ブラジルが実物資産トークン化のハブとなる背景を解説します。
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ブラジル最大手銀行イタウ・ウニバンコ(Itaú Unibanco)が、トークン化インフラ企業OpenAssetsと協業し、業界団体ANBIMA主導の実証実験に参加した。対象は債券などの固定収益証券と投資ファンドで、分散型台帳技術(DLT)を用いた発行・取引・決済を検証する。中南米最大の銀行の参入は、ブラジルが伝統的金融資産のトークン化における「実験場」となりつつある流れを象徴している。

本記事では、この実証実験の概要と、その背後にあるブラジルのトークン化推進の潮流、そしてDeFi・DEXに関心を持つ読者にとっての意味を整理する。

イタウ・ウニバンコの実証実験とは

2026年8月11日、イタウ・ウニバンコとデジタル資産インフラ企業OpenAssetsは、ブラジルの金融・資本市場協会ANBIMA(Associação Brasileira das Entidades dos Mercados Financeiro e de Capitais)が主導するトークン化パイロットを開始したと発表した。

このプロジェクトの狙いは、固定収益証券(fixed-income securities)と投資ファンドを、分散型台帳技術を使ってどのように「発行・取引・決済」できるかを検証することにある。単なる技術検証にとどまらず、銀行や資産運用会社がこうしたシステムを実務で利用するために必要な規則(ルール)と技術標準(テクニカル・スタンダード)を洗い出す点が重要だ。

イタウはサンパウロを拠点とする中南米最大の貸し手であり、S&P Globalによると総資産は5,620億ドルを超える。この規模の金融機関が業界主導の取り組みに加わることで、実証実験には相応の「重み」が加わる。実験室レベルの試みが、実際の金融市場インフラへ橋渡しされる可能性が高まるからだ。

トークン化がウォール街の主要ユースケースになった理由

トークン化(tokenization)は、ブロックチェーン技術のなかでも金融機関が最も注目するユースケースの一つになっている。世界の銀行や資産運用会社は、債券、ファンド、プライベートクレジット、株式といった資産をデジタル台帳上に載せる実験を続けてきた。

なぜトークン化なのか。従来の証券決済は、複数の仲介者を経由し、約定から決済まで日数を要することが多い。資産をトークンとして台帳上に表現すれば、所有権の移転記録が一元化され、決済の高速化やプロセスの自動化、24時間取引などが理論上は可能になる。ファンド持分や社債のような相対的に流動性の低い資産に、新たな取引経路を与える効果も期待される。

市場規模の見通しも強気だ。米金融大手シティ(Citi)は、トークン化された証券市場が2030年までに5.5兆ドル規模へ成長し得ると試算している。金融資産がブロックチェーンベースのシステムへ移行していくという前提に基づく数字だ。もっとも、こうした予測はあくまで前提次第で大きく変動する点には留意が必要で、確定した数字ではない。

ブラジルがトークン化のハブになりつつある背景

ブラジルは、規制の枠組みのもとで債券・クレジット・その他の金融資産をブロックチェーンに載せる「テスティンググラウンド(実験場)」として台頭している。今回のイタウの取り組みは、その大きな流れの一部にすぎない。

実際、ブラジルのトークン化イニシアチブは銀行主導のパイロットの範囲を大きく超えて広がってきた。2025年7月には、ブラジルの信用組成・証券化企業VERT Capitalが、XDC Network上で最大10億ドル規模の債務・債権をトークン化する計画を明らかにした。

また、ブラジルの暗号資産取引所Mercado Bitcoinは、固定収益商品や株式商品を含む2億ドル相当の資産をXRP Ledger上でトークン化する計画を共有している。伝統的金融機関だけでなく、暗号資産ネイティブのプレイヤーも同じ方向を向いている点が、ブラジル市場の厚みを示している。

トークン化された「乳牛」——実体経済への広がり

ブラジルのトークン化は、金融証券という枠を超えて、実体経済のより身近な領域にも到達している。象徴的なのが「乳牛」のトークン化だ。

銀行融資を受けにくかったパラナ州の農家が、10頭の乳牛をトークン化し、そのトークンをブラジルのB3取引所につながるインフラを通じて取引可能にした事例が報じられている。これは、トークン化が単なる大手金融機関の効率化ツールではなく、従来の金融アクセスから取り残された層に新しい資金調達手段を提供し得ることを示す。

実物資産(RWA:Real World Assets)のトークン化は、DeFiの文脈でも近年最大のテーマの一つだ。国債や社債、不動産、そして農業資産までがオンチェーンで表現されれば、DeFiプロトコルの担保や利回りの源泉が「オンチェーンで完結する暗号資産」から「現実世界のキャッシュフロー」へと拡張していく可能性がある。

DeFi・DEXの観点から見た意味

イタウのような大手銀行が規制下でトークン化を進めることは、DeFi・DEX領域と無関係ではない。むしろ、両者が接近していく過渡期の出来事と捉えるべきだ。

第一に、規制対応型のトークン化は「許可制(パーミッションド)」の台帳や限定された参加者の間で始まることが多い。しかし、そこで確立される発行・決済・技術標準は、将来的にパブリックチェーンや分散型インフラと接続される際の土台になり得る。ANBIMAが検証しようとしている「ルールと技術標準」は、まさにその接続点を左右する要素だ。

第二に、トークン化された固定収益資産が普及すれば、それらがオンチェーンの担保やDEXでの取引対象になる可能性が開ける。実際、海外では米国債などをトークン化した商品がDeFiの担保として使われ始めている。ブラジルの取り組みは、新興国発の資産クラスが同様の経路をたどる前例となるかもしれない。

ただし現時点では、今回の実証実験はあくまで規制当局・業界団体の枠組み内でのテストであり、一般投資家が即座にDEXでこれらの資産を売買できるようになるわけではない。過度な期待は禁物だ。

リスクと今後の注視点

トークン化には明確な期待がある一方で、留意すべき点も多い。技術的な相互運用性、法的な所有権の裏付け、決済ファイナリティ(決済の最終性)、そしてスマートコントラクトの安全性はいずれも未成熟な領域が残る。

また、シティが示す5.5兆ドルといった市場規模はあくまで将来予測であり、規制整備や機関投資家の採用ペースに大きく依存する。実証実験の成果が実際の商用サービスへ結実するには、数年単位の時間を要する可能性が高い。読者は、発表された「計画」や「試算」と、実際に稼働している「実装」を区別して評価することが重要だ。

投資判断を行う際は、公式発表やANBIMA・各社のドキュメントなど一次情報を確認し、トークン化された商品が誰によって、どの法的枠組みのもとで発行・保管されているかを見極める姿勢が求められる。

まとめ

ブラジル最大手イタウ・ウニバンコが、OpenAssetsおよびANBIMAと組んでトークン化債券・ファンドの実証実験に踏み込んだことは、ブラジルが規制下のトークン化ハブとして存在感を高めていることを改めて示した。VERT Capitalの債務トークン化、Mercado BitcoinのXRP Ledger活用、さらには乳牛のトークン化まで、その裾野は金融機関から実体経済へと広がっている。

DeFi・DEXの観点では、大手金融機関が確立する発行・決済・技術標準が、将来的にオンチェーン金融と接続する土台になり得る点が注目に値する。一方で、これらは依然として実証段階であり、市場規模の試算も確定値ではない。過度な期待を避け、一次情報に基づいて着実に動向を追うことが、この分野を理解するうえで最も現実的なアプローチだ。

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