Coinbase株とCircle株について、米証券会社William Blairは暗号資産市場の回復を取り込める企業として前向きな評価を維持した。 一方、Coinbaseの短期業績予想は引き下げられており、CircleもUSDCの流通拡大が次の成長局面に入る条件とされる。単純な強気材料ではなく、市況、金利、規制、競争を合わせて読む必要がある。
William BlairがCoinbaseとCircleを前向きに評価
The Blockが2026年9月22日に報じたところによると、William BlairはCoinbase Global(NASDAQ:COIN)とCircle Internet Group(NYSE:CRCL)の投資判断を、いずれも「Outperform」に据え置いた。
Coinbase株は7月14日以降に31%上昇していたが、同社アナリストは依然として魅力的な投資機会になり得ると評価した。ただし、2026年の調整後EBITDA予想は11%引き下げ、8億1,000万ドルとした。2027年と2028年の予想はおおむね維持しており、短期的な業績予想が底に近づいているとの見方だ。
これは「足元の業績が強い」という評価とは異なる。現物暗号資産の取引量が低迷するなかで短期予想を下方修正しつつ、規制整備、市場活動の回復、新規事業の成長が中長期の収益を支えるという判断である。
Circleについては、ビットコイン相場とUSDCの流通量が重要な変数とされた。CRCL株はビットコインが7月1日に付けた安値以降、52%上昇したとThe Blockは報じている。William Blairは、USDCの時価総額が遅れてビットコイン相場の回復に追随する可能性を挙げ、USDCの成長がCircle株の次の上昇局面を左右すると分析した。
Coinbaseは現物取引所から総合市場へ
Coinbaseの従来の収益は、ビットコインやイーサリアムなどの売買に伴う取引手数料の影響を強く受けてきた。暗号資産価格が下落し、個人投資家の取引が減ると、業績も悪化しやすい構造である。
しかし現在のCoinbaseは、現物取引だけでなく、デリバティブ、予測市場、ステーブルコイン、カストディ、決済、オンチェーン金融へ事業を広げている。同社はこの方針を「Everything Exchange」と呼んでいる。
William Blairによると、個人向けデリバティブ事業は2026年第1四半期に年率換算約2億ドルの収益規模となり、予測市場は第2四半期に年率換算1億ドルへ到達した。両事業を合わせると、同社が予想するCoinbaseの2026年売上高の約6%に相当するという。これらはWilliam Blairの推計であり、会社が確定業績として開示した年間売上高ではない点に注意したい。
Coinbaseの公式第2四半期発表でも、予測市場の取引契約数と収益が前四半期比106%増加したこと、暗号資産取引量に占める同社シェアが10.3%になったことが示された。また、純収益の88%がビットコイン現物取引以外から生じたとしている。市場全体の売買代金だけに依存しない構造へ移行していることは、William Blairの評価を裏付ける材料になる。
Circleの焦点はUSDC流通量とネットワーク化
Circleの収益構造を理解するうえでは、USDCの流通量と準備資産から得られる収益が重要になる。USDCは米ドルと1対1で償還できるよう設計された法定通貨担保型ステーブルコインで、Circleによると2026年9月21日時点の流通量は746億ドルだった。
準備資産は現金、短期米国債、翌日物の米国債リバースレポなど、流動性の高いドル建て資産で構成される。Circleは準備資産の情報を定期公開し、第三者会計事務所による月次保証報告も提供している。
USDCの流通量が増えれば、Circleが管理する準備資産の規模も拡大する。ただし、準備資産収益は金利水準にも左右される。利下げが進めば、USDCが成長しても資産1ドル当たりの収益が低下する可能性がある。このため、USDC残高だけを見てCircleの利益が同じ比率で増えると考えるのは適切ではない。
William Blairが重視しているのは、Circleが準備資産収益だけに依存せず、USDCを利用した国際決済・送金・オンチェーン取引のネットワークを構築できるかという点だ。Circle公式サイトによると、USDCは2026年9月16日時点で38のブロックチェーンにネイティブ対応している。Ethereum、Solana、Base、Arbitrum、Avalanche、Polygon PoS、Unichainなどへの展開は、DEXやDeFi、企業決済でUSDCが利用される接点を増やす。
DEX・DeFi市場に与える影響
USDCの流通拡大は、CircleだけでなくDEXとDeFiの流動性にも関係する。UniswapやCurveではステーブルコインが主要な交換資産となり、AaveではUSDCが貸借市場の担保・借入資産として使われている。BaseやArbitrumなどでは、USDCが取引、決済、資金移動の共通単位として機能する場面も多い。
一方、USDCの発行量が増えただけで、すべての流動性がDeFiへ流入するわけではない。取引所内残高、企業決済、国際送金、カストディ口座に保有されるUSDCも含まれるためだ。DEXへの影響を判断する際は、総発行量に加えて、チェーン別供給量、DEXの流動性、レンディング市場の利用率、ブリッジやクロスチェーン移動の状況を確認する必要がある。
CoinbaseもBaseを通じてオンチェーン市場と接続している。CoinbaseのSEC提出資料では、2026年にDEX取引やCoinbase上の借入・貸付残高が成長したと説明されている。CoinbaseとCircleは上場企業として別々に評価されるが、USDC、Base、取引所、DeFiアプリという経路では相互に関係している。
強気評価でも確認すべき四つのリスク
第一は暗号資産市況である。Coinbaseの多角化が進んでも、現物、デリバティブ、カストディ、予測市場の利用は投資家心理と市場変動の影響を受ける。ビットコインの上昇が止まれば、取引量や預かり資産が想定どおり増えない可能性がある。
第二は金利だ。CircleはUSDCの準備資産から得られる収益の影響を受けるため、米国の政策金利や短期国債利回りの低下は逆風になり得る。USDCの流通量増加と利回り低下のどちらが強く作用するかを分けて見る必要がある。
第三は競争である。USDTを発行するTetherに加え、銀行、決済会社、取引所が独自ステーブルコインやトークン化預金を展開する可能性がある。William Blairは新たな競合ステーブルコインがUSDCへ与える脅威を限定的とみているが、これはアナリストの見解であり、将来のシェアを保証するものではない。
第四は規制だ。The Blockの記事では、米上院で暗号資産市場構造法案が前進しなかった一方、SECやCFTCが個別の規則制定を進める可能性が指摘された。規制の明確化は機関投資家の参入を促す可能性がある反面、商品別の登録義務、取扱制限、報告・監視コストが増える可能性もある。
投資家とDeFi利用者の実用的な見方
COINを検討する場合は、暗号資産価格だけでなく、現物取引量、デリバティブと予測市場の収益、サブスクリプション・サービス収益、調整後EBITDAを四半期ごとに確認したい。William Blairが2026年予想を引き下げた事実は、短期的な弱さが解消済みではないことを示している。
CRCLでは、USDC流通量、準備資産収益、金利感応度、流通パートナーへの支払い、決済・ネットワーク事業の収益化が重要になる。USDC発行量だけで評価せず、Circleの決算資料と準備資産開示を併読するのが実務的だ。
DEX・DeFi利用者は、企業の株価評価とUSDC自体の安全性を混同してはいけない。CRCL株が下落しても、直ちにUSDCの償還能力が失われるわけではない。反対に、株価が上昇していても、スマートコントラクト、ブリッジ、レンディング市場、流動性プールにはそれぞれ固有のリスクがある。Circleの準備資産開示に加え、利用するUniswap、Curve、Aaveなどのプロトコル仕様とコントラクトも確認すべきである。
まとめ
William Blairの評価は、CoinbaseとCircleの短期業績がすでに全面回復したという意味ではない。Coinbaseでは2026年の調整後EBITDA予想が引き下げられた一方、デリバティブ、予測市場、USDC、オンチェーン事業への多角化が中長期の材料とされた。
CircleではUSDCの流通拡大が次の成長を左右する。ただし、収益はUSDC残高だけでなく、米国金利、競争、流通コスト、決済ネットワークの収益化にも依存する。両社を見る際は、暗号資産相場の回復期待だけで判断せず、Coinbaseの収益構成とCircleのUSDC関連指標を継続的に検証することが重要だ。





