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暗号資産VCはなぜ「規律」を装うコンセンサス投資に陥ったのか
暗号資産VC·7分で読める

暗号資産VCはなぜ「規律」を装うコンセンサス投資に陥ったのか

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-09-03

📋 この記事のポイント

  • 1暗号資産VCの資金が後期案件へ集中する現状を、CoinDesk寄稿とGalaxy Researchのデータから解説。
  • 2創業初期のDeFi企業が投資家に示すべき実用性、耐久力、資本効率を具体的に整理します。
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暗号資産VCでは、損失回避を重視する「規律」の名の下で、実績のある後期企業へ資金を集中させる動きが強まっている。 CoinDeskへの寄稿でTruth VenturesのVarun Datta氏は、これを慎重な投資というより、他社と同じ案件を選ぶ「コンセンサス投資」だと指摘した。 その結果、UniswapやAaveの次世代を目指す創業初期のDeFiプロジェクトには、資金不足と同時に大きな機会が生まれている。

暗号資産VCはリスクを取らなくなったのか

ベンチャーキャピタルは、まだ市場が存在しない段階で創業者の構想に賭ける産業だと説明されてきた。しかし、Galaxy Researchが公表した2026年第1四半期のデータを見ると、実際の資金配分は異なる姿を示している。

同四半期には、暗号資産・ブロックチェーン企業へ約40億ドルが投じられ、取引件数は355件だった。投資額の57%は後期企業に向かい、初期企業の取り分は43%にとどまった。さらに、取引件数に占めるプレシードの割合は19%だった。

資金そのものが消えたわけではない。VCは、すでに顧客、売上、プロダクト・マーケット・フィットを示せる少数企業へ、より大きな金額を配分している。Galaxy Researchの分類では、取引所、投資、レンディングなどを含む分野が投資額で首位となった。

Coinbaseのように事業モデルが認知された企業や、Uniswap、Aaveのようにカテゴリーが確立したプロトコルに近い案件は、投資委員会で説明しやすい。一方、既存カテゴリーに収まらない創業初期のプロジェクトは、比較対象が乏しいため評価されにくい。Datta氏が問題視するのは、この「説明のしやすさ」が投資規律と混同されている点だ。

後期投資への集中は「安全」とは限らない

後期案件には、稼働中の製品や利用実績を確認できる利点がある。しかし、事業上の不確実性が小さくなるほど、企業価値は上昇し、他の投資家との競争も激しくなる。つまり、失敗確率を下げられても、成功した場合のリターンまで小さくなる可能性がある。

Optimismのようなレイヤー2、UniswapのようなDEX、Aaveのようなレンディング市場も、現在のカテゴリーが確立する前は、利用者需要、規制、スマートコントラクトの安全性などを予測しにくい案件だった。市場が明白になってから参加する投資家は、初期の技術リスクを避けられる反面、その不確実性を引き受けた投資家と同じ条件では投資できない。

さらに、著名VCが参加していること自体を品質の証明とみなすと、案件調査が「誰が投資したか」の確認に置き換わる。複数のファンドが同じ有力企業へ集まれば、個々の判断が間違っていても組織内では説明しやすい。これは事業リスクの管理というより、投資担当者のキャリアリスクを分散する行動になり得る。

後期投資が悪いわけではない。問題は、プロトコル収益、ユーザー定着、安全性、規制対応などを独自に評価せず、知名度や共同投資家だけで「安全」と判断することだ。

AIへの資金集中が暗号資産の空白を広げる

暗号資産VCを取り巻くもう一つの変化が、AIへの急速な資金移動だ。OECDによると、2025年にAI企業が獲得したVC投資は2,587億ドルで、世界全体のVC投資額4,271億ドルの61%を占めた。

AI市場の成長性だけでなく、大型案件への集中も資金移動を加速させている。限られた投資人材と資金がAIへ向かえば、暗号資産分野で新しいUniswapやSafeを構築しようとする創業者は、以前より少ないファンドを奪い合うことになる。

Galaxy Researchによると、2026年第1四半期に新設された暗号資産VCファンドは8本、割り当てられた資金は約11億ドルだった。ファンド数は2020年第3四半期以来の低水準である。これは創業初期の調達環境が厳しいことを示す一方、AIと競合しない明確な課題を解決できるプロジェクトには追い風にもなる。

例えば、DEXの流動性を単に増やすのではなく、Uniswapを利用する事業者の会計処理を簡素化する、Safeを利用した組織の権限管理を改善するなど、顧客と課題を具体化できれば、一般的な「AI企業」とは異なる投資仮説を提示できる。

創業初期のDeFi企業に求められる3つの条件

Datta氏の主張をDeFi起業家向けに整理すると、重要なのは耐久力、実用性、資本効率の3点である。

第一は、相場環境に依存せず開発を続けられる耐久力だ。UniswapのようなDEXを目指す場合も、トークン価格や一時的な取引量だけでは継続性を証明できない。テストネット、監査可能なコード、限定された機能でも実際に動く製品を示す方が、構想だけのホワイトペーパーより説得力を持つ。

第二は実用性である。Aaveに似たレンディング機能を作るだけでは、既存プロトコルから利用者が移る理由にならない。担保管理、清算、金利設計、対象資産、利用地域などのうち、誰のどの問題を改善するのかを特定する必要がある。「ブロックチェーンを使うこと」ではなく、「既存手段より何が改善されるか」が製品価値になる。

第三は資本効率だ。大人数を先に採用するのではなく、小規模なチームで仮説検証を進め、調達資金がなくても到達できる範囲を広げる。Safeを利用した資金管理や、既存のEthereum、Optimismなどの基盤を活用すれば、独自チェーンや独自ウォレットを最初から構築せずに検証できる場合もある。

投資家が確認すべき「独自判断」のチェック項目

投資家側も、初期案件を単に危険と分類するのではなく、不確実性を分解して評価する必要がある。まず確認すべきは、創業者が解決しようとしている問題が、暗号資産価格の上昇がなくても残るかどうかだ。

例えば、Uniswap向けの流動性管理ツールなら、実際の利用者は誰か、手作業のどの工程を削減するのか、プロトコル変更に追随できるのかを調べる。Aave関連のリスク管理サービスなら、価格急変時の挙動、オラクル依存、清算条件の監視方法が評価対象になる。

次に、トークンを除いても事業が成立するかを確認する。トークン配布だけで利用を促進するモデルは、インセンティブ終了後の需要を証明しにくい。利用料、法人契約、運用支援など、製品価値と収益が結び付いているかを見るべきだ。

最後に、共同投資家の顔ぶれを結論として使わないことが重要になる。有名ファンドが参加していても、スマートコントラクト、安全管理、規制、顧客獲得を自ら検証しなければ、コンセンサスへ追随しただけである。反対に無名の創業者でも、稼働製品と明確な顧客課題を示しているなら、独自調査の対象になり得る。

日本のDeFi事業者がこの環境を活用する方法

日本の創業者にとって、海外VCの後期偏重は一方的な悪材料ではない。資金量だけを競うのではなく、日本企業特有の運用、会計、セキュリティ、利用者保護といった課題を具体化する余地があるからだ。

例えば、UniswapやAaveへの接続機能そのものではなく、企業がSafeで承認権限を管理する際の内部統制、DEX取引履歴の会計データ化、DeFiポジションのリスク可視化などに焦点を当てられる。既存プロトコルを基盤として利用し、その上で日本企業が導入する際の摩擦を解消する方が、巨大な汎用プロトコルと正面から競うより検証しやすい。

調達時には「Web3市場が成長する」という一般論より、顧客への聞き取り、試験導入、継続利用、障害対応の記録を提示するべきだ。後期企業ほど大きな実績を持たなくても、創業者が限られた資金で何を検証したかは示せる。

また、資金調達を製品完成の前提にしないことも重要だ。オープンソースのEthereum関連ツールやUniswapの開発者向け資源を利用し、狭い用途から製品を公開する。VCが初期投資から退いている時期ほど、調達前に作れるチームと、調達しなければ何も作れないチームの差が明確になる。

まとめ

CoinDeskへの寄稿が示す中心的な論点は、暗号資産VCが資金を失ったのではなく、評価しやすい後期案件へ集団で移動しているということだ。Galaxy Researchの2026年第1四半期データでも、投資額の57%が後期企業に集中している。

後期投資は合理的な選択になり得るが、知名度や他社の判断を安全性と取り違えれば、VC本来の独自判断は失われる。一方、Uniswap、Aave、Optimism、Safeに続く基盤を目指す初期チームには、競争資金が少ない環境で製品と顧客需要を証明できる機会がある。

創業者が示すべきものは、相場への期待ではなく、動く製品、現実の課題、少ない資本で前進できる組織である。投資家に必要なのは、コンセンサスから外れること自体ではなく、他社の評価に依存せずリスクと価値を検証する規律だ。

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