Glamsterdamは、Ethereumのブロック構築をプロトコル内部で分業し、将来の処理能力拡大につなげる大型アップグレードです。 Sepoliaでの公開テストは2026年10月6日に予定されていますが、無料のテストETHと使い捨てのビルダー識別子を悪用した妨害が新たな課題として浮上しました。 この問題は現時点でEthereumメインネット上の資産を危険にさらすものではなく、公開テストを通じて対策を検証すべきインフラ上のリスクです。
GlamsterdamのSepolia実施日が10月6日に決定
Ethereum開発者は、次期アップグレード「Glamsterdam」をSepoliaテストネットで2026年10月6日に実施する方針を決めました。CoinDeskの報道によると、次の公開テストとなるHoodiでの実施は10月27日が暫定候補です。Sepoliaの結果を確認したうえで日程を維持するか判断され、メインネットの有効化日はまだ決まっていません。
Ethereum公式ロードマップでも、Glamsterdamはテスト段階にあり、次の節目としてSepoliaフォークが示されています。したがって「10月6日にEthereum本番環境が更新される」という意味ではありません。Sepoliaは、クライアント、バリデーター、ブロックビルダー、RPC事業者、UniswapのようなDEXを含むアプリケーションが、本番導入前に互換性を確認するための公開テストネットです。
一方、クライアントチームには厳しい準備日程が設定されました。CoinDeskによれば、Sepolia対応版のリリース期限は9月29日で、フォークまでの期間は7日間です。通常想定される14日間より短く、セキュリティレビューやバグ報奨金プログラムに使える時間が限られます。Sepoliaはバリデーター構成が比較的限定され、障害時に復旧しやすいことから、この日程が受け入れられました。
GlamsterdamとePBSは何を変えるのか
Glamsterdamの中心機能の一つが、EIP-7732で定義される「Enshrined Proposer-Builder Separation(ePBS)」です。現在もEthereumでは、ブロックを提案するバリデーターと、収益性の高いトランザクション構成を作る専門ビルダーが分業しています。しかし、その受け渡しにはMEV-Boostやリレーなど、Ethereumプロトコル外の仕組みが使われています。
ePBSは、この役割分担とビルダーへの支払いをプロトコル内に組み込みます。ビルダーは構築予定の実行ペイロードに対して入札し、プロポーザーは有力な入札を選択します。その後、選ばれたビルダーが実際のトランザクションを含むペイロードを公開し、ネットワークが内容を検証する流れです。
Ethereum公式ロードマップによると、ePBSには第三者リレーへの信頼依存を減らし、ペイロードをネットワークへ伝播させる時間を約2秒から約9秒へ広げる狙いがあります。より大きなペイロードを安全に扱うための基盤となる一方、プロポーザーとビルダーが順番に処理するため、ビルダーが約束どおりデータを公開しない場面もプロトコルが処理しなければなりません。
「偽ビルダー」はどのようにテストを妨害するのか
今回問題となったのは、コードを偽造する攻撃というより、公開テストネット特有の経済条件を利用する妨害です。SepoliaのテストETHには通常、メインネットのETHのような経済的価値がありません。そのため、攻撃者は大きな損失を恐れずに極端に高い入札を提示できます。
想定される流れは次のとおりです。
- 攻撃者が多数のビルダー識別子を用意する
- 正常なビルダーを上回る高額な入札を出す
- プロポーザーに自分の入札を選ばせる
- 落札後、約束したトランザクションペイロードを公開しない
- 拒否された識別子を捨て、別の識別子で同じ行動を繰り返す
CoinDeskが報じた開発者会議では、Ethereumコンセンサス開発者のPotuz氏が、多数のビルダーを立ち上げて交代させ、高い入札を出しながらペイロードを生成しないことが可能だと警告しました。
この行為が繰り返されると、ブロックそのものが直ちに永久停止するとは限らないものの、トランザクションを含まない状態やフォールバック処理が続き、Sepolia上の通常トラフィックを使った検証が難しくなります。クライアントには欠落後の代替処理だけでなく、悪意あるビルダーを識別して拒否する仕組みが求められます。ただし、使い捨て識別子で再参加されるなら、単純な拒否リストだけでは十分ではありません。
メインネット資産への直接的な脅威ではない
今回の警告は、Ethereumメインネット上のETH、Uniswapの流動性、Aaveの預け入れ資産が直ちに危険になるという話ではありません。想定されている妨害対象はSepoliaであり、そこで使われるテストETHも本番資産ではありません。
それでも軽視できない理由は、Sepoliaが本番移行前の重要な統合テストだからです。攻撃や障害によって現実的なトラフィックを再現できなければ、Lighthouse、Prysm、Tekuなどのコンセンサスクライアントや、Geth、Nethermind、Besu、Erigon、Rethなどの実行クライアントについて、相互運用性や障害時の挙動を十分に観察できません。
さらにCoinDeskは、TitanやUltrasoundが運用する本番向けビルダーソフトウェアについて、Glamsterdamへのフォーク移行テストが完了していない点も伝えています。問題の核心は「既知の攻撃でメインネットが破られる」ということではなく、本番運用に関わる構成要素を公開テストで十分に検証できるかどうかです。
BALとガス価格変更もDEXに関係する
Glamsterdamのもう一つの主要機能は、EIP-7928のBlock-Level Access Lists(BAL)です。BALは、ブロック内のトランザクションがアクセスするアカウントやストレージ、実行後の値を一覧化します。互いに競合しない処理を事前に把握しやすくし、並列ディスク読み込みや将来の並列処理へつなげる設計です。
UniswapやCurveのスワップ、Aaveの貸借、Lido関連の処理は、多数のコントラクト状態へアクセスします。BALが導入されてもDEXの画面やスワップ方法が直ちに全面変更されるわけではありませんが、ノードによる検証や同期を効率化し、Ethereum L1の容量を安全に拡大するための土台になります。
Glamsterdamには、EIP-8037とEIP-8038による状態作成・状態アクセスのガス価格見直しも含まれます。Ethereum Foundationは、過去のメインネット取引を新しい料金体系で再実行した結果、大多数のスマートコントラクトは影響を受けない一方、一部ではガス上限の前提が変わり、処理失敗や性能低下につながる可能性があると説明しています。
そのため、DEXやDeFiプロトコルの開発者は、平均手数料だけを見るのではなく、状態アクセスの多いルート、複数コントラクトをまたぐルーター、清算、オラクル更新、バッチ処理などをSepoliaで再検証する必要があります。
DEX利用者と開発者が確認すべきこと
一般利用者は、Glamsterdam対応を理由にウォレットを別サイトへ接続したり、ETHを移動したりする必要はありません。公式アップグレードにエアドロップ請求やトークン交換は伴わないため、「Glamsterdam対応」を名乗る未確認サイトには注意が必要です。メインネット日程も未決定なので、SNS上の日付だけを根拠に資産を動かすべきではありません。
DEX・DeFi開発チームには、次の確認が実用的です。
- Sepolia対応クライアントとRPC事業者のリリース状況を確認する
- Uniswap型ルーターや独自コントラクトの主要取引を新しいガス体系で再実行する
- トランザクションが遅延、未収録、再送された場合のフロントエンド表示を確認する
- インデクサーや分析基盤がBAL、ETH移転ログ、変更後のブロック構造を処理できるか検証する
- TitanやUltrasoundを含む外部ビルダー環境だけに依存せず、フォールバック時の挙動を観測する
- Sepolia通過後もHoodiの結果と正式なメインネット告知を待つ
特に、テストネットで一度成功しただけでは安全性の証明になりません。複数クライアントの組み合わせ、正常なビルダー、ペイロードを公開しないビルダー、ローカルブロック構築へのフォールバックを分けて検証することが重要です。
まとめ
GlamsterdamのSepoliaテストは2026年10月6日、Hoodiテストは10月27日が暫定予定で、メインネット日程は未定です。今回報じられた偽ビルダー問題は、価値のないテストETHと使い捨て識別子を利用して高額入札を繰り返し、落札後にペイロードを公開しないというものです。
影響は現時点ではSepoliaの試験環境に限られ、メインネット上のDeFi資産を直接脅かすものではありません。しかし、ePBSはEthereumのブロック構築をプロトコル内へ移す大きな変更であり、悪意あるビルダーの識別、ペイロード欠落時の復旧、複数クライアント間の相互運用性を本番前に検証する必要があります。
DEX利用者は不審な移行サイトを避け、正式発表を待つことが基本です。開発者はUniswap、Aave、Curveのような複雑なDeFi処理を想定し、ePBSだけでなくBALとガス価格変更を含めてSepolia、Hoodiの順に検証することが求められます。





