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BIS主導のトークン化通貨実証実験「Agorá」28行が参加
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BIS主導のトークン化通貨実証実験「Agorá」28行が参加

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-07-31

📋 この記事のポイント

  • 1国際決済銀行(BIS)主導のProject Agorá。
  • 2JPモルガンやシティなど28行が中央銀行準備預金と銀行預金をトークン化し、約100万ドルのクロスボーダー決済を約80秒で完了させた実証実験を解説します。
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国際決済銀行(BIS)が主導する「Project Agorá(アゴラ)」で、JPモルガンやシティなど世界の主要銀行28行が、トークン化した中央銀行準備預金と銀行預金を用いた実際のクロスボーダー決済に成功しました。約100万ドル相当・30件の取引が共有台帳上で平均約80秒で決済され、トークン化技術が国際金融の「配管(インフラ)」に組み込まれつつあることを示す事例となっています。本稿では、この実証実験の内容と、ステーブルコインとの違い、DeFi・DEX領域への示唆を整理します。

Project Agoráとは何か

Project Agoráは、BISのイノベーションハブが5つの中央銀行および国際金融協会(IIF)を通じた28の民間金融機関と共同で進める国際プロジェクトです。「Agorá」は古代ギリシャの公共広場(アゴラ)に由来し、公的マネーと民間マネーが一つの共有台帳上で出会う場を目指すという構想を象徴しています。

参加する民間銀行にはJPモルガン、シティ、UBS、ドイツ銀行、スタンダードチャータードといったグローバルな大手金融機関が名を連ねます。プロジェクトの中心テーマは、既存の国際決済インフラを、トークン化(tokenization)とスマートコントラクトの技術で近代化できるかという問いです。

従来のクロスボーダー決済は、複数のコルレス銀行を経由し、通貨ごとに異なる決済システムやタイムゾーンをまたぐため、着金までに数日かかり、コストや流動性リスクが積み上がる構造的な課題を抱えてきました。Agoráはこの課題に、単一の共有台帳という新しいアーキテクチャで挑みます。

実証実験で何が行われたのか

今回の実証実験(real-value testing)では、実際の資金を用いたライブテストが行われました。BISの報告によると、処理された取引はおよそ100万ドル(約80万スイスフラン)相当で、合計30件の取引が実行されています。

対象となった通貨は、米ドル・ユーロ・英ポンド・日本円・スイスフラン・韓国ウォンの6通貨です。これらの通貨をまたぐ企業間送金、銀行間送金、そして外国為替(FX)決済が、トークン化された中央銀行準備預金と商業銀行預金を使って処理されました。

注目すべきは決済スピードです。プロトタイプが銀行の既存決済インフラと直接統合されていない状態であったにもかかわらず、決済は平均で約80秒で完了したとされています。既存システムと並行して稼働しながら、所有権の記録を単一の共有台帳に集約することで、取引の追跡可能性(トレーサビリティ)を高めた点も成果として挙げられています。

「2層のマネー」をトークン化する仕組み

Project Agoráの技術的な特徴は、伝統的な銀行システムが持つ「2層構造のマネー」をそのままトークン化する点にあります。

第1の層は、商業銀行同士が決済に用いる中央銀行準備預金(ホールセール向けの中央銀行マネー)です。第2の層は、企業や個人が保有する商業銀行の預金(コマーシャルバンクマネー)です。Agoráはこの両方を同一のプログラマブルな共有台帳上でトークンとして表現します。

この構造により、外国為替の決済と資金の移動を同時に(simultaneous settlement)実行でき、通貨を売る側と買う側の決済タイミングがずれることで生じる決済リスク(ヘルシュタットリスク)を抑えられると期待されています。所有権の記録が一元化されることで、リスクとコストの両面で削減が見込まれる、というのがプロジェクトの狙いです。

ステーブルコインとの違い

トークン化された「デジタルなお金」というと、CircleのUSDCやTetherのUSDTに代表されるステーブルコインを思い浮かべる読者も多いでしょう。Project Agoráはステーブルコインとは根本的に異なるアプローチを取っています。

ステーブルコインは、Circle(ティッカー:CRCL)やTetherといった民間セクターが発行するもので、発行体が保有する準備資産によって価値を裏付けています。一方、Agoráがトークン化するのは、中央銀行準備預金と商業銀行預金という、既存の規制された銀行システムの内部で流通する「伝統的な銀行マネー」そのものです。

つまりAgoráは、新しい種類のデジタル資産を生み出すのではなく、既存の中央銀行・商業銀行の二層構造をブロックチェーン的な共有台帳へ移し替える試みだと言えます。既存の金融規制やマネーの階層構造を維持したまま、決済インフラだけを近代化しようとする点が、民間発行のステーブルコインとの決定的な違いです。

トークン化資産をめぐる大きな潮流

Project Agoráは、金融全体で進むトークン化の潮流の一部として位置づけられます。近年、資産運用会社はトークン化されたマネー・マーケット・ファンド(MMF)やプライベートクレジット・ファンドの発行を始めており、ステーブルコインはクロスボーダー決済や企業の資金管理(トレジャリー業務)で利用が拡大しています。

こうした流れの中で、Agoráは民間のステーブルコインやトークン化ファンドとは別の角度から、銀行が国際的に資金を動かすための基盤インフラそのものを近代化できるかを検証しています。ホールセール(銀行間)の決済領域は、金額の大きさと規制の厳格さゆえに、公的機関と大手銀行が主導する形で慎重に実証が進められているのが実情です。

リテール向けのステーブルコインと、ホールセール向けのトークン化銀行マネー。この二つが並行して発展していくことが、今後の「トークン化された金融」の全体像になりつつあります。

DeFi・DEX領域への示唆

DEXやDeFiに関心を持つ読者にとって、Project Agoráは間接的ながら重要な意味を持ちます。中央銀行マネーと銀行預金が共有台帳上でトークンとして表現され、外国為替決済が数十秒で完結するという世界観は、DeFiが提唱してきた「アトミックな決済」や「プログラマブルなマネー」の概念と技術的な発想を共有しているからです。

もっとも、Agoráは許可制(パーミッションド)の環境で、規制された金融機関のみが参加する枠組みであり、誰でも参加できるパブリックなDeFiとは前提が大きく異なります。しかし、伝統的金融(TradFi)がトークン化・共有台帳・スマートコントラクトを本格的に採用していく流れは、将来的に規制されたトークン化資産とオンチェーン市場が接続する余地を広げる可能性があります。

投資家や利用者としては、こうした公的機関主導の実証がステーブルコインやRWA(実物資産トークン化)に対する制度的な信頼性を底上げしうる点に注目しておくとよいでしょう。ただし、実証実験の段階であり、商用化や本番稼働の時期・仕様は今後の発表を待つ必要があります。

まとめ

Project Agoráは、BISが5つの中央銀行と28の民間銀行とともに進める、トークン化された中央銀行準備預金・銀行預金を用いたクロスボーダー決済の実証プロジェクトです。今回のライブテストでは、6通貨・約100万ドル相当・30件の取引が平均約80秒で決済され、外国為替の同時決済と単一の所有権記録による追跡性向上が確認されました。

ステーブルコインが民間発行のデジタルマネーであるのに対し、Agoráは既存の二層構造の銀行マネーをそのままトークン化する点で性格が異なります。トークン化が国際金融のインフラそのものへと浸透していく大きな流れの中で、公的機関主導のこの取り組みは、DeFi・DEX領域にとっても制度と技術の接点を示す重要な事例と言えます。今後の商用化に向けた進展を引き続き注視していきましょう。

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