Laser Digital Japanは、資金決済法に基づく暗号資産交換業者として登録されました。日本で新たな事業者が登録されるのは約4年ぶりです。
当初は国内の暗号資産交換業者に流動性関連サービスを提供し、将来的には日本の機関投資家向け取引サービスも検討します。ただし、一般利用者向け取引所の開設時期や具体的なサービス内容は発表されていません。
野村系Laser Digitalが日本の暗号資産交換業者に登録
野村ホールディングス傘下でデジタル資産事業を展開するLaser Digitalの日本法人、Laser Digital Japanは2026年8月21日、暗号資産交換業者としての登録を完了しました。
登録番号は「関東財務局長 第00032号」です。金融庁が公開する登録事業者一覧では、取り扱う暗号資産としてビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、XRP、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)、シバイヌ(SHIB)が記載されています。
日本では2022年以降、新たな暗号資産交換業者の登録が途絶えていました。今回の登録は約4年ぶりの新規参入となり、大手金融グループが規制下の暗号資産市場へ本格的に進出する動きとして注目されます。
ここでいう「暗号資産交換業者」は、単に売買画面を提供する企業を意味するものではありません。日本の資金決済法では、暗号資産の売買・交換、その媒介や代理、利用者資産の管理などを事業として行う場合、原則として登録が必要です。
登録事業者には、利用者への情報提供、マネーロンダリング対策、顧客資産の分別管理、セキュリティ管理などが求められます。Laser Digital Japanは、この規制枠組みの中で国内事業を構築することになります。
最初の事業は一般向け取引所ではなく流動性提供
今回の発表で重要なのは、Laser Digital Japanが直ちに一般利用者向けの暗号資産取引所を開設するとは表明していない点です。
同社はまず、国内の暗号資産交換業者に対するサービス提供を通じて、日本市場の流動性向上を目指す方針です。その後、日本の機関投資家にデジタル資産の取引機会を提供することも検討します。サービス開始時期、提携先、注文執行方式、手数料などの詳細は今後公表される予定です。
流動性提供者は、市場で継続的に売買価格を提示し、取引所が顧客注文を処理しやすい環境を支えます。十分な注文量と競争力のある価格があれば、大口取引による価格変動や売値と買値の差を抑えやすくなります。
ただし、登録を取得しただけで市場の流動性が自動的に改善するわけではありません。実際の効果を判断するには、接続する国内取引所、提示可能な通貨ペア、注文量、稼働時間、価格形成への寄与などを確認する必要があります。
今回の登録は事業開始の法的な基盤であり、完成済みサービスの公開を意味するものではない点には注意が必要です。
機関投資家向けインフラが重視される背景
Laser Digitalは、野村グループのデジタル資産部門として、機関投資家向けの取引、資産運用、インフラ整備などに取り組んできました。今回の日本参入も、個人投資家向けアプリより、金融機関や暗号資産事業者を支える市場インフラから始める方針です。
野村ホールディングスとLaser Digitalが2026年に公表した国内調査は、機関投資家、ファミリーオフィスなどに所属する投資担当者を対象として実施されました。同調査では、暗号資産を分散投資の選択肢として評価する回答が確認されています。
もっとも、関心の高まりと実際の投資判断は同じではありません。機関投資家が参入するには、規制対応だけでなく、信用力のある取引相手、十分な流動性、カストディ、価格評価、会計・税務処理、サイバーセキュリティなど複数の条件を整える必要があります。
Laser Digital Japanが国内で担おうとしているのは、このうち取引相手と流動性に関わる部分です。野村グループの金融事業で培った知見と、Laser Digitalのデジタル資産分野における経験をどのように組み合わせるかが焦点になります。
DEX・DeFi市場にはどのような影響があるのか
今回の登録は、UniswapやCurve Financeのような分散型取引所を日本で直接運営するための発表ではありません。公表された初期方針は、国内の登録済み暗号資産交換業者に対する流動性提供です。
それでも、機関投資家向けのオンチェーン金融が発展するうえでは重要な動きです。DEXやDeFiを業務で利用する場合、オンチェーン上の交換機能だけでなく、法定通貨との入出金、本人確認、資産保管、取引監視、ブロックチェーン分析、会計記録といった周辺基盤が必要になります。
例えば、UniswapでETHとステーブルコインを交換できても、日本の金融機関がそのまま取引へ参加できるとは限りません。取引相手の確認、ウォレット管理、制裁対象アドレスの検知、秘密鍵の保護、価格乖離やスマートコントラクトのリスク評価が必要です。
Laser Digital Japanは、金融庁のFinTech実証実験ハブにおける暗号資産・電子決済手段の取引モニタリング高度化にも参加しています。この実証には、日立製作所、GMOコイン、JPYC、bitbank、Chainalysis Japanなどが参加し、疑わしい取引の検知やリスク評価に関する検証が行われました。
こうした取り組みは、DeFiへの直接参入を示すものではありません。一方で、規制された事業者がオンチェーン取引を扱うために必要な監視・コンプライアンス基盤の整備につながる可能性があります。
ステーブルコインとトークン化資産への展開可能性
Laser Digitalは暗号資産取引以外にも、ステーブルコインやトークン化資産に関する取り組みを進めています。
2024年には、野村ホールディングス、Laser Digital、GMOインターネットグループが、日本市場における日本円および米ドル連動型ステーブルコインの発行・償還・流通に関する基本合意を発表しました。
ステーブルコインは、DEXでの取引、オンチェーン決済、トークン化された証券や実物資産の決済手段として利用されます。しかし日本では、法定通貨連動型ステーブルコインに該当する電子決済手段の発行者と、その売買・媒介を行う事業者に、それぞれ規制上の要件があります。
したがって、暗号資産交換業者への登録だけを根拠に、Laser Digital Japanがすぐに円建てステーブルコインを発行できると解釈するのは適切ではありません。発行主体、準備資産、償還方法、流通を担う登録事業者など、別途具体的な仕組みが必要です。
今後、Laser Digital Japanが国内取引所向け流動性、機関投資家向け執行、ステーブルコイン、セキュリティトークンをどのように接続するかは、日本のオンチェーン金融市場を考えるうえで注目点となります。
利用者と市場関係者が確認すべきポイント
一般利用者は、今回の登録を「野村ブランドの個人向け取引所がすぐに開業する」というニュースとして受け取らないことが大切です。口座開設、サービス開始日、対応する顧客層、取扱銘柄、手数料は現時点で具体的に発表されていません。
暗号資産交換業者や機関投資家にとっては、次の発表が実用上の判断材料になります。
- Laser Digital Japanが流動性を提供する取引所と通貨ペア
- 相対取引、電子取引、マーケットメイクなどの提供方式
- カストディや決済を担当する事業者
- 機関投資家向けサービスの開始時期と利用条件
- ステーブルコインやトークン化資産との接続方針
- オンチェーン取引に対するAML・ウォレット審査体制
また、金融庁への登録は、取り扱う暗号資産の価格や投資収益を保証するものではありません。暗号資産には価格変動、流動性低下、秘密鍵管理、スマートコントラクト、ネットワーク障害などのリスクがあります。
利用を検討する際は、報道記事だけで判断せず、金融庁の登録事業者一覧とLaser Digital Japanの正式なサービス発表を確認する必要があります。
まとめ
Laser Digital Japanの暗号資産交換業登録は、日本で約4年ぶりとなる新規登録であり、大手金融グループによるデジタル資産市場への本格参入を示す出来事です。
同社は当初、一般利用者向け取引所ではなく、国内の暗号資産交換業者に対する流動性関連サービスを重視します。将来的には機関投資家向け取引も検討していますが、開始時期や商品設計はまだ公表されていません。
DEX・DeFiへの直接参入を発表したものではないものの、規制対応、流動性、取引監視、ステーブルコインなど、機関投資家がオンチェーン金融を利用するための基盤整備という観点で重要です。今後は、提携先、取引方式、対応資産、サービス開始時期が実際に公開されるかを確認する必要があります。





