世界有数のビットコインマイニングプールとして知られたPoolinが、2026年7月22日に米国ニュージャージー州破産裁判所にチャプター11(連邦破産法11条)の適用を申請しました。負債総額は推定1.73億ドルに上り、これは主に2022年にロックされた顧客の暗号資産に対する無担保プロミスノートによるものです。この破産は、中国のマイニング規制や2022年の市場暴落といった要因が複合的に絡み合った結果であり、ビットコインマイニング業界全体に大きな教訓を残すことになります。
Poolinの栄光と凋落
Poolinは2017年に中国で設立され、瞬く間にビットコインマイニング業界の主要プレイヤーとなりました。2019年には、その計算能力(ハッシュレート)で世界のビットコインマイニングプールの中で最大のシェアを獲得するまでに成長し、業界のリーダーとしての地位を確立しました。多くのマイナーがPoolinを選択し、安定した報酬と効率的な運用を享受していました。しかし、その後の急速な市場の変化と規制の波が、同社の運命を大きく左右することになります。
破産申請の背景:中国の規制と市場の激変
Poolinの財務状況が悪化した主要な要因は複数あります。まず、2021年の中国政府による暗号資産マイニングに対する全面的な禁止措置が挙げられます。これにより、Poolinを含む多くのマイニング企業は中国国内での事業継続が不可能となり、大規模な設備移転や事業再編を余儀なくされました。この突然の規制は、 Poolinの収益基盤に深刻な打撃を与えました。
次に、2022年に発生した一連の暗号資産市場の暴落も決定的な要因となりました。特にLuna/USTの崩壊や、Celsius、Voyager Digital、FTXといった大手企業の破産は、市場全体の信頼を大きく損ない、ビットコインの価格にも影響を与えました。この市場の混乱期に、Poolinは顧客の資金引き出しを一時停止せざるを得なくなり、これが後の負債問題に直結しました。
約1.73億ドルの負債と影響範囲
Poolinが破産申請時に報告した負債総額は、約1.73億ドル(約270億円、1ドル=156円換算)に達するとされています。この負債の大部分、約1.63億ドルは、2022年にブロックされた顧客の暗号資産に関連する無担保プロミスノートが占めています。これにより、100ドル以上の残高を持つ約11,700のウォレットホルダーが影響を受けていると報じられています。
破産手続きの書類によると、Poolinは10,001から25,000の債権者を抱え、負債総額は1億ドルから5億ドルの間、一方で推定資産は100万ドルから1000万ドルの間であるとされています。この資産と負債の大きな乖離が、同社の財務状態の深刻さを示しています。
資産売却を通じた再建の試み
破産手続きの一環として、Poolinは米国に残されたマイニング資産の売却を進めています。すでにThor CALAP LLCが、Poolinがテキサス州に保有するPyote施設を1500万ドルで、Tarbush施設を3700万ドル相当の電力権利と設備で買収することに関心を示しており、最低競売価格として合計5200万ドルが設定されています。しかし、この金額はPoolinが抱える総負債の約30%に過ぎず、全ての債権者の請求を満たすには不十分である可能性があります。
Poolinは2026年7月10日に全てのマイニングおよびホスティング事業を永久に停止しており、事業再開の計画はありません。破産による資産売却の収益は、債権者への支払い充当に用いられる予定です。
ビットコインマイニング業界への示唆
Poolinの破産は、ビットコインマイニング業界が直面するリスクの大きさを浮き彫りにしています。集権的なマイニングプールに依存することの危険性、規制リスク、そして市場の変動に対する脆弱性は、今後も業界が考慮すべき重要な課題です。過去にはFoundry USAやAntPoolなどの大手プールがシェアを伸ばしており、マイニング業界全体のハッシュレート競争は続いていますが、各マイニング事業者はより分散化された運営体制やリスクヘッジ戦略の重要性を再認識する必要があります。個々のマイニング企業は、市場の変動や規制環境の変化に耐えうる強固な財務基盤と、柔軟な事業戦略を構築することが不可欠です。
まとめ
かつてビットコインマイニング業界を牽引したPoolinの破産は、暗号資産市場のダイナミズムと、それに伴うリスクを再認識させる出来事です。中国のマイニング規制や2022年の市場暴落が直接的な引き金となり、約1.73億ドルの負債を抱え、多くの顧客に影響を与えました。資産売却を通じて債務整理が進められる中、Poolinは事業を再開する意向はなく、その歴史に幕を下ろします。この事例は、ビットコインマイニング業界において、規制対応、市場変動への耐性、そして集権型サービスの脆弱性といった課題に対し、より堅牢なエコシステムを構築する必要があることを強く示唆しています。投資家やマイナーは、プロジェクトの透明性やリスク管理体制をこれまで以上に注意深く評価することが求められるでしょう。





