RWA(現実資産)のトークン化は、伝統的金融(TradFi)と分散型金融(DeFi)を融合させる最大のバイパスとなりつつあります。SecuritizeのCEO、カルロス・ドミンゴ氏は、現在の約300億ドルのRWA市場が、株式やETFのオンチェーン移行によって5兆ドル規模にまで膨れ上がると予測しています。本記事では、2026年最新の動向を踏まえ、トークン化株式がもたらす金融革命の全貌を明らかにします。
RWA市場の現状と5兆ドルへの道筋
現在、暗号資産市場におけるRWA(Real World Assets)セクターは、約300億ドルの規模に達しています。しかし、SecuritizeのCEOであるカルロス・ドミンゴ(Carlos Domingo)氏によれば、これはまだ序の口に過ぎません。2026年6月にニューヨークで開催された「ETHConf」において、同氏は「世界の株式およびETF市場の総額は約150兆ドルに及ぶ」と指摘しました。
この巨大な市場のうち、わずか2〜3%がブロックチェーン上に移行するだけで、トークン化資産の市場規模は5兆ドルに達する計算となります。これまでのRWA市場は、主に米国債(Treasuries)のトークン化が牽引してきましたが、次の成長エンジンは「パブリック・ブロックチェーン上の株式」であるというのがドミンゴ氏の主張です。実際に、ブラックロック(BlackRock)などの巨大機関投資家がオンチェーン資産管理に本格参入したことで、この予測は現実味を帯びています。
なぜ米国債ではなく「株式・ETF」が鍵となるのか
過去2年間、RWA市場の主役は米国債でした。利回りの安定性と流動性の高さから、オンチェーンでの国債運用は急速に普及しましたが、ドミンゴ氏は「真のパラダイムシフトは株式とETFによってもたらされる」と強調しています。
株式やETFのトークン化には、以下の3つの大きなメリットがあります。
- 24時間365日の取引可能性: 伝統的な証券市場が閉まっている時間帯でも、DEX(分散型取引所)を通じて取引や移転が可能になります。
- 即時決済(Instant Settlement): 現行のT+1(翌営業日決済)などのプロセスをスキップし、スマートコントラクトによる即時交換が実現します。
- プログラム可能な資産: 株式にスマートコントラクトを組み込むことで、配当の自動再投資やガバナンス投票の効率化が可能になります。
米国債は「安全資産のデジタル化」でしたが、株式のトークン化は「資本市場そのもののOSをブロックチェーンに書き換える」行為であり、その影響範囲は比較にならないほど大きいと言えます。
Securitizeの戦略:NYSEやブラックロックとの強力な提携
Securitizeは、機関投資家向けのトークン化ソリューションにおいて圧倒的なシェアを誇っています。特に注目すべきは、世界最大の資産運用会社であるブラックロックとの提携です。ブラックロックがイーサリアム上で展開する「BUIDL」ファンドのインフラをSecuritizeが提供している事実は、同社の技術的信頼性を象徴しています。
さらに、ドミンゴ氏はニューヨーク証券取引所(NYSE)およびトランスファー・エージェント(名義書換代理人)の大手であるコンピュータシェア(Computershare)との提携も発表しました。この提携の目的は、株式のオンチェーン取引と決済を法規制に準拠した形で実現することにあります。
NYSEのような伝統的な取引所がブロックチェーン技術を受け入れることは、これまで「投機的」と見なされがちだった暗号資産エコシステムが、正当な金融インフラとして認められたことを意味します。Securitizeは、単なるスタートアップではなく、伝統金融とWeb3を繋ぐ「ゲートウェイ」としての地位を確立しています。
「本物の株式トークン」とデリバティブ製品の違い
ドミンゴ氏は、現在市場に出回っている「トークン化株式」と称される製品の多くに警鐘を鳴らしています。同氏によれば、米国外で提供されている多くの製品は、原資産を直接トークン化したものではなく、デリバティブ(派生商品)やシンセティック(合成資産)に基づいた構造になっているケースが多いとのことです。
ドミンゴ氏が提唱する「本物のトークン化株式」の定義は以下の通りです。
- 直接所有権: 投資家が原資産である株式を法的に直接所有していること。
- 議決権(Voting Rights): 株主総会での投票権がトークン保持者に付与されること。
- 配当受領権(Dividends): 企業から支払われる配当をオンチェーンで直接受け取れること。
これらは伝統的な株式投資家が当然持っている権利ですが、これをパブリック・ブロックチェーン上で再現するには、高度な法的コンプライアンスと技術的整合性が求められます。Securitizeは、米国証券取引委員会(SEC)の規制下でこれらを実現することに注力しており、他社との差別化を図っています。
イーサリアム(Ethereum)が選ばれる理由と技術的優位性
トークン化資産の基盤として、ドミンゴ氏はパブリック・ブロックチェーン、特にイーサリアムの優位性を高く評価しています。プライベート・チェーン(許可型チェーン)ではなく、パブリック・チェーンが選ばれる理由は「相互運用性」と「ネットワーク効果」にあります。
イーサリアム上には既に膨大なDeFi(分散型金融)のエコシステムが存在しており、トークン化された株式を担保にステーブルコインを借り入れたり、他の資産とシームレスに交換したりすることが可能です。プライベート・チェーンでは、このような「金融のコンポーザビリティ(構成可能性)」を享受することができません。
また、ERC-3643のようなRWA専用のトークン規格の整備が進んでいることも、イーサリアムが選ばれる要因です。これにより、オンチェーンでのKYC(本人確認)やAML(アンチマネーロンダリング)チェックを自動化しつつ、資産の移転を安全に行うことができるようになっています。ドミンゴ氏は「機関投資家のトークン化を推進するのは、プライベートな箱庭ではなく、イーサリアムのような開かれたインフラだ」と断言しています。
DEX・DeFiへの影響:伝統金融との融合
株式がトークン化され、5兆ドル規模の資金がオンチェーンに流入すれば、DEX(分散型取引所)の役割は劇的に変化します。これまでのDEXは、主に暗号資産同士の交換場所でしたが、今後は「アップル(AAPL)の株式を担保にUSDCを借りる」「ETFトークンとBTCを直接スワップする」といった、伝統資産とデジタル資産が混ざり合うプラットフォームへと進化するでしょう。
特に、UniswapやCurveのようなプロトコルにおいて、RWAに関連する流動性プールが組成されることで、資本効率は飛躍的に向上します。機関投資家にとっては、従来の銀行を介さずに、プログラム可能な形で資産を運用できるメリットがあります。一方、個人投資家にとっても、これまでアクセスの難しかった海外株式や特定のETFを、DEXを通じて少額から購入・運用できるようになる未来が近づいています。
まとめ
Securitizeのカルロス・ドミンゴCEOが描く「5兆ドルのRWA市場」は、決して夢物語ではありません。150兆ドルの株式市場という巨大なパイを背景に、NYSEやブラックロックといった金融界の巨人が動き出している現状は、その実現を強く予感させます。
ポイントを整理すると以下の通りです:
- 成長の源泉: 米国債から「株式・ETF」へのシフトが市場を数兆ドル規模へ押し上げる。
- 基盤技術: イーサリアムなどのパブリック・ブロックチェーンが、機関投資家のインフラとして定着する。
- 真のトークン化: 単なるデリバティブではなく、議決権や配当を伴う「本物の株式」のオンチェーン化が進む。
- DEXの進化: TradFiの流動性がDeFiに流れ込み、金融の境界線が消滅する。
2026年は、ブロックチェーンが「投機の道具」から「世界経済の基幹インフラ」へと脱皮する歴史的な転換点となるでしょう。私たちは、DEXを通じて世界の富が自由に、そして透明に循環する時代の幕開けを目撃しています。
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