Tonkeeperは「Keeper」へ名称を変更し、TON専用ウォレットから7つのネットワークに対応するマルチチェーン型セルフカストディウォレットへ移行した。 対応ネットワークはTON、TRON、Ethereum、Bitcoin、Arbitrum、Base、BNB Chain。既存利用者は同じアプリと秘密鍵を引き続き利用できる。 ただし、すべての機能が全ネットワークで同時に提供されるわけではなく、Batteryの対応範囲やクロスチェーン機能の実装状況を確認して使う必要がある。
TonkeeperがKeeperへ名称変更
TONエコシステム向けウォレットとして知られてきたTonkeeperは、2026年9月15日にブランド名を「Keeper」へ変更した。The Blockの報道と運営元The Open Platform(TOP)の発表によると、単なるロゴ変更ではなく、製品の対象をTONから複数のブロックチェーンへ広げるための再編である。
Tonkeeperはもともと、Toncoin、TON上のジェットトン、NFT、ステーキング、TON DNSなどを扱うTON特化型ウォレットとして成長した。一方、暗号資産利用者はEthereum上のDeFi、Bitcoinの保有、TRON上のUSDT送金、BaseやArbitrum上のアプリなど、複数ネットワークを併用する場面が増えている。
新名称のKeeperは、この利用形態に合わせて「一つのウォレットで複数チェーンを管理する」方向性を明確にしたものだ。TOPは、これまでにウォレットをダウンロードした利用者が7,700万人に達したと説明している。ただし、この数字はアクティブユーザー数ではなく、公式発表におけるダウンロード利用者の規模として理解するのが適切だ。
既存ユーザーについては、変更が自動的に適用され、同じアプリ、同じ鍵、同じ公式チャンネルを継続して利用できるとTOPは案内している。名称変更を理由に、第三者へリカバリーフレーズを入力したり、新しいウォレットへ資産を送ったりする必要はない。
対応する7つのブロックチェーン
Keeperが掲げる対応ネットワークは、TON、TRON、Ethereum、Bitcoin、Arbitrum、Base、BNB Chainの7つだ。
TONでは、従来のTonkeeperが提供してきたジェットトン、NFT、ステーキング、TON DNSなどの機能を維持する。TRONはUSDT-TRC20の送受信需要が大きく、Keeperの手数料抽象化機能であるBatteryとも関係が深い。EthereumではETHやERC-20トークンに加え、UniswapなどのDeFiアプリとの接続が想定される。
ArbitrumとBaseはEthereumのレイヤー2ネットワークだ。どちらもEthereum系のアドレス形式やスマートコントラクト環境を利用するが、Ethereumメインネットとは別のネットワークであり、残高やガス代も個別に管理される。BNB ChainでもPancakeSwapをはじめとする独自のDeFi環境が存在する。
BitcoinはEthereum系チェーンとは仕組みが異なり、スマートコントラクト型DeFiへの接続よりも、BTCの保有・送受信が中心になる。Keeperで複数ネットワークが一つの画面に表示されても、各資産が同じチェーン上に存在するわけではない。送金時には、銘柄だけでなく送信元と送信先のネットワークが一致しているかを必ず確認したい。
なお、公式サイトはマルチチェーン機能について、まずモバイル版で提供し、その他のプラットフォームには順次展開する方針を示している。デスクトップ版やブラウザ拡張機能で同じ機能が利用できるとは限らないため、利用端末ごとの対応状況を確認する必要がある。
Keeperのセルフカストディ設計
Keeperは、取引所が資産を預かるカストディ型サービスではなく、利用者自身が秘密鍵を管理するセルフカストディウォレットである。公式サイトは、秘密鍵が利用者の端末に保持され、メールアドレスや本人確認書類を必要としない設計を掲げている。
この方式では、中央集権型取引所のアカウントを経由せず、STON.fi、Uniswap、PancakeSwapなど各ネットワークの分散型アプリへ接続できる。一方、秘密鍵やリカバリーフレーズを失った場合、Keeperの運営元が資産を復元してくれる仕組みではない。
リブランド直後は「Keeperへの移行」「ウォレットの更新」などを装ったフィッシングが発生する可能性にも注意したい。公式発表では既存ユーザーの鍵はそのまま維持されるため、移行を理由にリカバリーフレーズをウェブサイトへ入力させる案内は警戒すべきだ。
実際に利用する際は、公式サイトのリンクからアプリ配布ページを開き、提供元を確認する。新しいネットワークへの初回送金では少額のテスト送金を行い、着金とネットワーク表示を確認してから本送金へ進む方法が安全性を高める。
Batteryはガス代をどう簡単にするのか
Keeperの特徴の一つが、ネットワーク手数料を扱いやすくする「Battery」だ。通常、TONで取引するにはToncoin、TRONではTRX、EthereumではETHというように、各チェーンのネイティブ資産をガス代として用意しなければならない。
Batteryは、あらかじめ補充したオフチェーン残高を使い、利用者に代わって必要なネットワーク手数料を処理する仕組みである。たとえばUSDTを保有していてもTRXを持っていない利用者が、USDT-TRC20を送金しやすくなる。これは手数料自体が消えることを意味する「無料送金」ではなく、手数料の支払い方法を抽象化する機能だ。
2026年9月時点のKeeper公式サイトでは、BatteryはTONとTRONで利用可能と案内されている。7ネットワークすべてで直ちに使えるわけではない。TOPは今後1年間でBatteryを全対応ネットワークへ広げる計画を示しているが、Ethereum、Bitcoin、Arbitrum、Base、BNB Chainへの対応は将来計画として区別する必要がある。
送金画面では、Battery残高だけでなく、実際に差し引かれる手数料、受取額、利用ネットワークを確認したい。特にEthereum系ネットワークでは、同じトークン名でも複数チェーンに別々の残高が存在するため、手数料の簡略化とネットワーク選択を混同しないことが重要だ。
DeFiとクロスチェーン利用で変わること
Keeperは、ウォレット内でのスワップ、ステーキング、法定通貨との入出金、dAppブラウザなどを一つの体験にまとめる構想を示している。公式サイトには、ネットワークをまたぐスワップをブリッジ操作なしで利用できるインターフェースも掲載されている。
ただし、画面上でブリッジを意識せず操作できても、裏側では外部の流動性プロバイダー、DEX、クロスチェーンプロトコルなどが関与する可能性がある。利用者にとって操作が簡単になることと、スマートコントラクトや流動性のリスクがなくなることは別問題だ。
たとえばTONではSTON.fi、EthereumではUniswap、BNB ChainではPancakeSwapのように、チェーンごとに主要なDEXや流動性環境が異なる。Keeperが複数チェーンへの入口を統合しても、交換レート、価格への影響、ネットワーク手数料、利用するプロトコルの監査状況は取引ごとに確認すべきである。
TOPは今後、ネイティブDeFi機能、クロスチェーンスワップ、dAppブラウザ、日常決済ツールに加え、無期限先物取引の導入も計画している。これらはKeeperの方向性を示すロードマップであり、発表時点ですべて提供済みという意味ではない。特にレバレッジを伴う無期限先物は、現物の送受信やスワップより損失リスクが高いため、実装後も証拠金、清算条件、サービス提供地域を確認する必要がある。
利用前に確認したい実践ポイント
既存のTonkeeper利用者は、まず公式アプリがKeeperへ正常に更新され、従来のTONアカウントと資産が表示されているか確認する。更新前にリカバリーフレーズをオフラインで保管し、スクリーンショットやクラウド上へ安易に保存しないことも重要だ。
新しいチェーンを追加する場合は、受取アドレス、対象ネットワーク、対応トークンを照合する。Ethereum、Arbitrum、Base、BNB Chainで同じようなアドレスが表示されても、誤ったネットワークへ送れば、取引所側で自動反映されない場合がある。BitcoinアドレスへのEVM系トークン送付など、互換性のない送金は避けなければならない。
DEXを使う際は、署名画面の内容を読み、トークン交換なのか、無制限の利用許可なのかを区別する。Keeperがセルフカストディ型であっても、悪意あるdAppへ権限を与えれば資産を失う可能性がある。高額資産の長期保管と日常的なDeFi操作ではウォレットを分け、日常用ウォレットへ必要以上の資産を置かない運用も検討したい。
また、Battery、クロスチェーンスワップ、dAppブラウザはネットワークごとに提供状況が異なる。公式サイトやアプリ内表示で実装済みかを確認し、「対応予定」を「現在利用可能」と読み替えないことが大切だ。
まとめ
TonkeeperからKeeperへの変更は、TONブランドを捨てる動きではなく、TONの既存機能を維持しながら、Bitcoin、Ethereum、TRON、Arbitrum、Base、BNB Chainへ対象を広げるマルチチェーン戦略である。
一つのセルフカストディウォレットから複数の資産やDeFiへアクセスできる点は利便性を高める。一方、Batteryは現時点でTONとTRONが中心であり、全ネットワークへの拡張やクロスチェーンスワップ、無期限先物などには今後の計画も含まれる。
利用者は名称変更だけを見て判断せず、ネットワークごとの対応機能、手数料、接続先プロトコル、署名内容を確認する必要がある。既存ユーザーは同じ鍵を継続利用できるため、不審な移行サイトへリカバリーフレーズを入力せず、公式アプリから段階的に新機能を試すのが現実的だ。





