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AIが暗号署名を破る日は来るか、BTC・ETHの防衛策を解説
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AIが暗号署名を破る日は来るか、BTC・ETHの防衛策を解説

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-10-09

📋 この記事のポイント

  • 1AIによる数学研究の加速で、ビットコインとイーサリアムの署名方式が想定より早く破られる可能性が浮上。
  • 2『バンカーモード』提言の根拠、DEX・DeFiへの影響、保有者が慌てず準備すべき実務対応を整理します。
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AIが暗号資産を直接『解析して盗む』攻撃は、現時点では実証されていません。 一方、AIが楕円曲線暗号の未知の近道を発見し、公開鍵から秘密鍵を復元できる可能性を想定して、Ethereum研究者Justin Drake氏が『バンカーモード』の準備を提言しました。 結論は、パニック移動ではなく、公開鍵の露出状況を把握し、ウォレット・取引所・DeFiプロトコルが段階的な移行計画を作るべきだ、というものです。

CoinDesk報道:AI時代の「バンカーモード」とは

CoinDeskが2026年10月8日に報じたのは、量子コンピューターの完成を待たず、AIが数学的な突破口を見つけることで、BitcoinとEthereumの署名方式が弱体化するかもしれないという警告です。Justin Drake氏はXで、最悪の場合はECDSAが「数年ではなく数カ月」で破られる可能性も視野に入れるべきだと主張しました。ここでいう「破る」とは、公開鍵から秘密鍵を短期間で復元し、攻撃者が正規の署名を作れる状態を指します。

ただし、これは確認済みの脆弱性や実行可能な攻撃コードの公表ではありません。CoinDeskも、BitcoinやEthereumの鍵を破る実用的な攻撃は示されていないと明記しています。Drake氏の提案は、危機が起きたと断定するものではなく、被害が極端に大きい低確率リスクに対し、資産移動や署名方式の変更手順を先に整える予防策です。

Ethereum共同創設者Vitalik Buterin氏も、AIで加速された数学研究のリスクを真剣に扱うべきだと述べました。一方で、同氏は「今日すぐ新しいウォレットへ殺到する」ことを勧めず、移行ミスによる損失にも注意を促しています。両氏に共通するのは、警戒は必要だが、拙速な一斉移動は避けるという姿勢です。

なぜ公開鍵が見えている資産が論点になるのか

BitcoinとEthereumでは、秘密鍵で取引に署名し、公開鍵を使って署名の正当性を検証します。通常は公開鍵から秘密鍵を逆算するのが現実的に困難であることが、安全性の土台です。AIがこの計算に未知の近道を発見する、というのが今回の仮説です。AIがウォレットのパスワードを総当たりする話や、秘密鍵を学習データから当てる話とは異なります。

BitcoinのP2PKHでは、受取時に見えるのは公開鍵そのものではなく公開鍵ハッシュです。しかし、そのUTXOを使う際には、署名と完全な公開鍵がトランザクションに含まれます。Bitcoin開発者ガイドも、この仕組みを明示しています。このため、同じ鍵やアドレスを再利用すると、すでに公開された公開鍵に結び付く未使用資産が残る場合があります。

Ethereumの通常アカウントであるEOAも、送信トランザクションを一度実行すると公開鍵を復元可能な署名情報がオンチェーンに現れます。ethereum.orgは、受取だけで送信していないアカウントでは公開鍵がまだ露出していないという違いを説明しています。Drake氏が「一度も署名していない新しいアドレス」を挙げたのは、このハッシュの覆いを防御層として使う考え方です。

AI脅威と量子脅威は同じではない

従来の議論は、Shorのアルゴリズムを実行できる大規模な量子コンピューターがECDSAを破る「Q-Day」を主に想定していました。今回の警告は、通常の計算機上でも動く新しい古典アルゴリズムをAIが発見する可能性を問題にしています。したがって、量子ハードウェアの進捗だけを監視していれば十分、とは限らないという問題提起です。

もっとも、AIが数学論文やコードを大量生成できることと、secp256k1の離散対数問題を実用時間で解けることの間には大きな隔たりがあります。新しい証明候補には検証が必要であり、暗号方式の破壊には理論だけでなく、計算量、メモリー、実装可能性の評価も欠かせません。現段階で「AIがBitcoinを破った」と表現するのは不正確です。

Ethereumはすでにポスト量子対応を進め、ethereum.orgではEOA署名、コンセンサスのBLS署名、KZGコミットメント、ZK証明を別々の移行課題として整理しています。中核インフラをおおむね2029年までに整える目標も示されていますが、これは計画上の目安であり、移行完了の保証ではありません。今回の議論は、その工程をAIリスクも含めて再評価すべきだという圧力になります。

耐量子暗号なら無条件に安全なのか

答えは「まだ断定できない」です。NISTは格子ベースの電子署名標準ML-DSAをFIPS 204として公開しています。一方、Buterin氏は、AIが格子問題の具体的な安全性評価にも大きな改善をもたらす可能性を指摘し、構造の少ないハッシュベース署名を重視する考えを示しました。これはFIPS 204が破られたという発表ではなく、現在安全と評価される方式にも余裕を持った設計が必要だという警告です。

Ethereumのロードマップでも、バリデーター署名の候補としてハッシュベースのleanXMSSが説明されています。ただし、署名サイズや集約効率、ウォレット互換性、復旧手順などの課題があります。暗号方式を交換すれば終わりではなく、Uniswapを利用するEOA、Aaveに担保を預ける利用者、Curveで流動性を管理するLP、USDCを保有する企業などが、安全に権限を移せる運用設計まで必要です。

DEX・DeFiで想定すべき連鎖的な影響

秘密鍵を復元できる攻撃が仮に成立すれば、対象はETH残高だけではありません。同じEOAが管理するERC-20、NFT、UniswapのLPポジション、Aaveの供給資産や借入管理、Curve関連のポジションなど、署名で操作できる権限全体が問題になります。ハードウェアウォレットも秘密鍵の持ち出し防止には有効ですが、署名方式そのものが数学的に破られた場合の万能な防壁にはなりません。

プロトコル側にも課題があります。AaveやUniswapのガバナンス、オラクル、アップグレード権限、緊急時のマルチシグが同種の楕円曲線署名だけに依存していれば、単一ユーザーより影響範囲が広くなります。マルチシグも、複数の署名者が同じ種類の脆弱な署名方式だけに依存していれば、方式そのものの破綻を防げるとは限りません。Safeなど既存の運用を変更する際は、必要署名数だけでなく、鍵の種類、復旧権限、監査ログの保持を含めて再設計する必要があります。

また、急な資産移動はDEXの流動性低下、レンディング市場の担保引き出し、ステーブルコインの償還集中を招く可能性があります。これは今回すでに起きた事実ではなく、移行計画で避けるべき二次リスクです。プロトコルは停止条件、移行先の検証、旧鍵の失効、ユーザー周知を一体で準備する必要があります。

個人・事業者が今からできる実務対応

第一に、自分のアドレスが送信済みか、同じ鍵を長期間再利用していないかを棚卸しします。ただし、シードフレーズをウェブサイトへ入力して判定してはいけません。確認に必要なのは公開アドレスとオンチェーン履歴であり、秘密情報ではありません。BitcoinではUTXOごとのスクリプト形式と公開鍵露出、EthereumではEOA、コントラクトウォレット、取引所口座を分けて整理します。

第二に、移行を本番一発で行わないことです。新しい受取先をオフラインで生成し、少額送金、着金確認、復旧テストを経て段階的に移します。Aaveの借入やUniswap・Curveのポジションがある場合、単純送金では移せない権利や承認があるため、各プロトコルの公式画面と手順を確認します。偽の「耐AIウォレット」や緊急移行サイトは、むしろフィッシングの好機になり得ます。

第三に、法人・DAO・取引所は、署名者一覧、公開鍵の露出、鍵ローテーション、緊急停止、連絡網を文書化します。Tetherや大手取引所のように大きな残高や発行権限を扱う組織では、技術部門だけでなく、法務、カストディ、会計、顧客対応を含む訓練が必要です。対策の目的は今すぐ全資産を動かすことではなく、警報が具体化した時に安全に動ける状態を作ることです。

まとめ

Justin Drake氏の「バンカーモード」は、AIがすでにBitcoinやEthereumを破ったというニュースではありません。AIによる数学研究の加速が、量子コンピューターより先にECDSAなどの安全性を揺るがす可能性を考え、公開鍵露出を減らし、移行手順を準備しようという提言です。

実務上は、未使用アドレスへの計画的な移行、鍵の再利用削減、マルチシグやプロトコル管理権限の棚卸しが候補になります。ただし、Buterin氏の警告どおり、慌てた移行には誤送金や復旧不能という現実的な危険があります。Bitcoin、Ethereum、Uniswap、Aave、Curveなどの利用者と運営者は、未実証の脅威を断定せず、公式仕様に基づく段階的な防御計画を進めることが重要です。

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