dex.jp
米GENIUS法案に業界団体が修正要請、DeFiへの影響を解説
GENIUS法·7分で読める

米GENIUS法案に業界団体が修正要請、DeFiへの影響を解説

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-10-21

📋 この記事のポイント

  • 1米Blockchain Associationが、GENIUS法第3条の実施規則案に意見書を提出しました。
  • 2DeFi基盤、二次流通、外国発行体、ウォレット判定を巡る争点と、DEX利用者・事業者が確認すべき実務ポイントを整理します。
ポストLINE

米Blockchain Associationは、米財務省が進めるGENIUS法第3条の実施規則案について、DeFi基盤や外国ステーブルコイン発行体への適用範囲を明確にするよう求めました。 結論として、争点はステーブルコイン規制の是非ではなく、発行・販売を担う事業者と、DEX、自己管理型ウォレット、バリデーターなどの技術基盤をどう区別するかです。最終規則は未確定であり、Uniswapなどのプロトコルや利用者が直ちに違法になるというニュースではありません。

Blockchain Associationが財務省へ求めたこと

The Blockが報じたのは、Blockchain Associationが米財務省に提出した意見書です。対象は、決済用ステーブルコインを米国内で「発行・募集・販売・利用可能にする」行為を扱うGENIUS法第3条の実施規則案です。財務省は2026年8月に規則案を公表し、10月19日を意見募集の期限としていました。

同協会は、認可された発行体を中心に制度を整える方向性そのものには賛同しています。一方で、デジタル資産サービス提供者(DASP)の定義、「違法な発行への認識ある関与」の要件、外国発行体を扱う事業者の確認義務、相手が米国内にいるかを判断する基準が広すぎると指摘しました。

ここで重要なのは、意見書が最終規則ではない点です。Blockchain Associationの提案がそのまま採用されたわけではなく、現時点では財務省が提出意見を踏まえて文言を検討する段階です。

DeFi基盤をDASPに含める範囲が最大の争点

GENIUS法上のDASPは、対価や利益を得て、顧客または利用者のためにデジタル資産の交換、第三者への移転、カストディ、発行に関連する金融サービスなどを事業として行う者を指します。Blockchain Associationは、この列挙された業務を顧客向けに提供する企業へ対象を限定すべきだと主張しました。

意見書は、自己勘定で取引する企業、企業財務としてステーブルコインを保有する会社、支払いとして受け取るだけの事業者までDASPに含めるべきではないとしています。また、自己管理型ウォレットのソフトウェア、分散型台帳の運用、取引検証、一定の流動性プール参加に関する法定除外を規則本文にも明記するよう要請しました。

UniswapのようなDEXを考えると、利用者向けフロントエンド、スマートコントラクト、流動性提供者、自己勘定の取引プログラムは同じものではありません。協会の主張は、名称が「DeFi」であるだけで一律に除外するというものではなく、顧客資産を預かるのか、顧客のために移転を実行するのか、自社資産だけを取引するのかを機能ごとに分ける考え方です。AaveやCurveを含む個別プロトコルの適法性を認定した意見書でもありません。

二次流通やマーケットメイクは発行への関与か

GENIUS法第3条は、認可された決済用ステーブルコイン発行体以外が米国内で発行することを制限し、違反への認識ある関与に刑事罰を設けています。財務省の公式規則案によると、違反ごとの罰金上限は100万ドル、拘禁は最長5年、またはその両方です。

Blockchain Associationは、責任が生じるのは、発行を違法にする事実を実際に知り、発行体と連携して積極的かつ実質的に支援した場合に限るべきだと主張しました。単に二次市場で売買する行為や、通常の流動性供給を「発行への関与」とみなすべきではないという立場です。

この論点は、Uniswapの流動性プールだけでなく、中央集権型取引所のマーケットメーカーにも関係します。ステーブルコインは代替可能で、ウォレットやプールの中で混在するため、個々のトークンが「新規発行分」かを市場参加者が常に識別できるとは限りません。同協会は、発行体との配布契約がない独立した二次市場取引にセーフハーバーを設けるよう求めています。

ただし、発行体から報酬を受けて新規トークンを購入者へ配布する事業と、独立した二次流通は区別されます。DEX事業者や流動性提供者は、「オンチェーンだから対象外」と決めつけず、発行体との契約、報酬、償還・ミント権限、販売先の管理を確認する必要があります。

外国発行ステーブルコインの確認義務

財務省案は、外国発行体のステーブルコインを米国内で提供するDASPに条件を課します。外国発行体には、適法な命令へ技術的に対応でき、実際に従うことが求められます。比較可能な監督制度の下にあり、米通貨監督庁(OCC)へ登録する外国発行体向けの経路も法律に設けられています。

Blockchain Associationは、取引所やカストディアンが、契約関係のない外国発行体の技術体制まで独自に調査するのは難しいと説明しました。そのため、財務省やOCCが公表する登録・禁止情報に依拠できる仕組みを提案しています。事業者が発行体の不履行を実際に知っている場合まで免責する提案ではありません。

この問題は、外国で発行されたステーブルコインを米国向け画面で取り扱う取引所や、DEXへの接続機能を提供するサービスに影響します。ただし、特定銘柄の上場廃止が決まったわけではありません。USDTなど個別銘柄への影響は、発行体の登録状況、外国制度の比較可能性、サービスが米国利用者へ提供されているか、最終規則の文言を確認して判断すべきです。

パーミッションレス取引で利用者の所在地をどう見るか

財務省案には、取引相手が米国内にいると「合理的に信じる」場合を扱う考え方があります。口座型サービスなら、本人確認情報、登録住所、端末情報などを通常業務で保有していることがあります。しかし、パーミッションレスなスマートコントラクトが受け取るのは公開ウォレットアドレスだけで、法的氏名や居住地、現在地がチェーン上に記録されているとは限りません。

Blockchain Associationは、事業者が通常業務で合理的に得た情報と実際の認識を基準にし、匿名ウォレットを利用できるという理由だけで、新たな本人確認や位置情報取得システムの構築を義務づけないよう求めました。これは、米国利用者を意図的に勧誘しながら、既に保有する所在地情報を無視してよいという提案ではありません。

MetaMaskなどの自己管理型ウォレット、Uniswapのようなパーミッションレスな交換経路、口座と本人確認を持つ取引所では、把握できる情報が異なります。最終規則では、フロントエンド運営者、プロトコル開発者、流動性提供者、利用者を同じ「所在地確認義務」で扱うのかが実務上の焦点になります。

DEX・DeFi事業者と利用者が確認すべき点

事業者はまず、自社が顧客のために交換・移転・保管を行うのか、それともソフトウェア提供や自己勘定取引に限られるのかを整理する必要があります。次に、扱うステーブルコインの発行体、発行国、米国での登録経路、ミント・償還への関与、発行体との販売契約を確認します。UniswapやCurveへ接続するだけでも、運営する画面が米国利用者を対象にしているか、手数料を誰から受け取るかで分析は変わり得ます。

利用者側では、規則案を理由に慌てて資産を移すのではなく、利用中の取引所やウォレットが出す正式な対応方針を確認することが重要です。規制対応によって流動性が分断されると、同じステーブルコインでも取引場所ごとにスプレッドやスリッページが変わる可能性があります。Aaveのようなレンディング、Curveのようなステーブルコイン取引基盤では、流動性低下が交換条件や清算リスクに波及し得るため、担保構成と流動性を個別に確認すべきです。これは価格上昇・下落の予測ではなく、運用上の確認事項です。

財務省案では、法律の発効日は2027年1月18日と見込まれ、DASPによる一般的な提供制限は2028年7月18日からと整理されています。一方、外国発行体に関する制限など、適用時期が異なる項目があります。最終規則、公的リスト、各サービスの利用規約が出そろう前に、すべての義務が同時に始まると解釈しないことが大切です。

まとめ

Blockchain Associationの意見書は、GENIUS法によるステーブルコイン発行者規制を否定するものではありません。求めているのは、顧客向け仲介業務とDeFi基盤、違法発行への実質的な支援と通常の二次流通、外国発行体の責任と下流サービスの確認義務を分けることです。

DEX・DeFiにとっての核心は、Uniswap、Curve、Aaveなどを一括して規制対象または対象外と決めることではなく、各主体が実際に担う機能と保有情報に応じて境界を引けるかどうかです。今回の提出は政策形成の一段階にすぎません。今後は財務省の最終規則、OCCなどの公的情報、各プロジェクトとサービス事業者の正式発表を順に確認する必要があります。

ポストLINE

関連記事