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Ethena、株式無期限先物へ拡大|USDe利回り戦略の転換
株式無期限先物·7分で読める

Ethena、株式無期限先物へ拡大|USDe利回り戦略の転換

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-08-29

📋 この記事のポイント

  • 1EthenaがUSDeの運用対象を暗号資産から株式無期限先物へ広げる方針を発表。
  • 2仕組み、背景、期待される効果、資金調達率や流動性などのリスクを解説します。
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Ethenaは、USDeの収益源であるベーシストレードを、暗号資産だけでなく株式の無期限先物へ拡大する方針を示した。 狙いは、ビットコインなどの資金調達率が低下する局面でも、別市場から収益を得られる運用構造を作ることだ。 ただし、株式無期限先物の流動性、資金調達率の反転、価格参照や取引所への依存といった新しいリスクも伴う。

Ethenaが株式無期限先物への進出を発表

CoinDeskが2026年8月28日に報じたところによると、合成ドルUSDeを発行するEthenaは、従来の暗号資産中心のベーシストレードを株式無期限先物へ拡大する計画を明らかにした。

株式無期限先物とは、AppleやTeslaなどの株価を参照しながら、満期を設けずにロングまたはショートできるデリバティブ商品である。現物株を直接保有する仕組みとは異なり、取引所が提供する契約を通じて値動きへのエクスポージャーを得る。

Ethenaによると、株式無期限先物市場の建玉は2026年3月時点の10億ドル未満から、発表時点で62億ドルまで拡大した。一定の流動性が形成されたことから、USDeの運用戦略を実際に投入できる段階に近づいたと判断した形だ。

同社は今後数週間以内に、最初の提携取引所と具体的な運用先を発表する予定としている。現段階では計画の公表であり、どの株式銘柄、取引所、担保資産へ、どれだけ配分するかは確定情報として示されていない。

USDeのベーシストレードはどう機能するのか

USDeは、米ドルそのものを銀行口座に保管する一般的な法定通貨担保型ステーブルコインとは異なる。Ethenaは、保有する裏付け資産の価格変動を、同程度の想定元本を持つショート・デリバティブで相殺する「デルタニュートラル」戦略を採用している。

たとえば、ビットコインの価格に連動する資産をロングで保有し、同額相当のBTC無期限先物をショートする。BTC価格が上昇すれば現物側の価値が増える一方、ショート側では損失が発生する。下落時には反対の動きとなるため、理論上は方向性リスクを抑えられる。

収益源の一つが、無期限先物市場でロングとショートの間に支払われる資金調達料だ。ロング需要が強く資金調達率がプラスの場合、ショート側にいるEthenaは支払いを受けられる。USDeをステークして受け取るsUSDeの報酬は、こうしたデリバティブ収益に加え、流動性の高い裏付け資産から得る報酬などを原資とする。

Ethenaの公式ドキュメントでは、裏付け資産を取引所へ直接預け続けるのではなく、CopperやCeffuなどのOff-Exchange Settlement事業者を利用する構造が説明されている。ただし、この仕組みもカストディ事業者や取引所への依存を完全に解消するものではない。

暗号資産から株式へ広げる背景

今回の方向転換には、暗号資産市場における資金調達率の低下がある。Ethenaが示したデータによれば、BTC無期限先物の平均資金調達率は2024年の11%、2025年の4.9%から、2026年は8月11日までで2.2%へ低下した。

暗号資産相場が強気で、レバレッジを使ったロング需要が多い時期には、ショート側が受け取る資金調達料も増えやすい。しかし相場が冷え込むとロング需要が減少し、資金調達率が低下したり、マイナスへ反転したりする。Ethenaにとって、暗号資産だけに依存する構造は収益の変動要因になる。

一方、Ethenaの集計では、一定の規模に達した株式無期限先物の資金調達率は、Hyperliquidで平均約14%、Binanceで17.5%だった。また、株式無期限先物の資金調達率がプラスだった日はHyperliquidで94%、Binanceで97%とされている。

この違いについてEthena共同創業者のGuy Young氏は、株式には長期的な上昇を期待してレバレッジ付きロングを保有したいという需要があり、資金調達率がプラス方向へ偏りやすいとの見方を示した。もっとも、過去の観測結果は将来の資金調達率を保証しない。

USDeの利回りと裏付け構成はどう変わるか

Ethenaは、今後12〜24カ月で、株式など実世界資産を参照する無期限先物が、USDeの裏付け戦略に占める規模で暗号資産デリバティブを上回る可能性があると予想している。

実現すれば、USDeの収益はBTCやETHの市場サイクルだけで決まりにくくなる。暗号資産の資金調達率が低迷していても、株式無期限先物でロング需要が続けば、別の収益源を確保できるためだ。AaveやMorphoなどを使ったDeFiレンディング、トークン化された実世界資産、機関向け融資と並ぶ運用先になる可能性がある。

ただし、株式無期限先物の表示上の資金調達率が、そのままsUSDe保有者の利回りになるわけではない。実際の収益には、ポジション構築時のスリッページ、ヘッジ対象との価格差、取引手数料、カストディ費用、リスク準備金への配分などが影響する。

さらに、特定市場へ大きなショートを投入すれば、Ethena自身の取引によって資金調達率が低下する可能性もある。運用規模を拡大できるかは、建玉全体だけでなく、各銘柄の板の厚さや実際の約定能力を確認する必要がある。

株式無期限先物で注意すべきリスク

第一の論点は資金調達リスクだ。株式市場が長期的に上昇してきたとしても、無期限先物の資金調達率が常にプラスになるとは限らない。ショート需要が急増すれば、Ethenaが資金調達料を支払う側へ回ることもある。Ethenaの公式リスク文書も、マイナスの資金調達率がプロトコル収益と裏付け資産へ影響する可能性を明記している。

第二はベーシスリスクである。参照する現物株やトークン化株式と、HyperliquidやBinanceなどが提供する無期限先物の価格が完全に一致しなければ、ロングとショートが想定どおり相殺されない。配当、株式分割、取引停止、企業買収といった株式固有のイベントを価格指数へどう反映するかも重要だ。

第三は市場時間の違いである。米国株の主要市場には取引時間がある一方、暗号資産系の無期限先物市場は継続的に動く。現物市場が閉まっている時間帯に重大ニュースが発生すると、参照価格の不確実性や急激な価格乖離が生じる可能性がある。

第四は取引所・カストディ・オラクルへの依存だ。EthenaがOff-Exchange Settlementを利用しても、デリバティブ取引所の障害、清算システムの不具合、価格フィードの異常、資金の委任・解除ができない事態は残る。複数の取引所や事業者へ配分し、集中リスクを抑えられるかが焦点となる。

第五は規制と商品設計の違いだ。株式を参照するデリバティブは、提供地域や利用者属性によって規制上の扱いが異なる。USDe保有者が株式を直接所有するわけではなく、議決権や配当請求権を得るわけでもない点にも注意したい。

DEX・DeFi利用者が確認したいポイント

USDeやsUSDeをAave、Morpho、Pendleなどで利用する場合、表示APYだけでなく、その利回りがどの運用先から生じているかを確認したい。株式無期限先物への配分開始後は、EthenaのTransparencyページで裏付け資産、ヘッジポジション、取引所別配分がどこまで開示されるかが重要になる。

また、sUSDeを担保に借り入れ、さらに運用するループ戦略では、sUSDeの報酬低下だけでなく、USDeの市場価格、貸借金利、清算基準が同時に変動する。株式無期限先物から高い資金調達収益が得られていても、借入コストやDEX上の売却スリッページを含めると、利用者側の収益がプラスになるとは限らない。

今後確認すべき具体的な情報は、提携する取引所、対象銘柄、現物側の裏付け、価格指数、運用上限、取引所別エクスポージャー、資金調達率がマイナスになった際の縮小ルールである。Ethenaの発表だけでなく、公式ドキュメント、Risk Committeeの判断、定期的な裏付け資産証明を併せて確認する必要がある。

まとめ

Ethenaの株式無期限先物戦略は、USDeの収益源を暗号資産市場のサイクルから分散させる試みだ。株式無期限先物の建玉増加と高い資金調達率は、新しいベーシストレードを検討する材料になっている。

一方で、高い過去実績だけを将来の利回りとして受け取るべきではない。資金調達率の反転、現物との価格乖離、株式市場の取引時間、オラクル、取引所、規制など、暗号資産のベーシストレードとは異なるリスクが加わる。

提携先や配分方法は今後発表される予定であり、現時点では戦略の実装結果まで確認できた段階ではない。USDeやsUSDeを利用する際は、実際の運用開始後に公開される裏付け構成とリスク管理条件を確認し、利回りではなく収益源の持続性と損失経路を基準に判断することが重要だ。

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