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米下院の暗号資産税制法案、DEX・DeFiへの影響を解説【2026年】
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米下院の暗号資産税制法案、DEX・DeFiへの影響を解説【2026年】

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-09-16

📋 この記事のポイント

  • 1米下院歳入委員会が公表した暗号資産税制法案を解説。
  • 2少額ネットワーク手数料、ステーブルコイン、ステーキング、ウォッシュセールなど、DEX・DeFi利用者への影響を整理します。
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米下院歳入委員会は、暗号資産に関する連邦税制を包括的に整理する「Digital Asset Tax Certainty Act(H.R. 10357)」を公表した。 法案には、一定の暗号資産手数料に対する10ドル以下の例外、ステーブルコインの取得価額、マイニング・ステーキング報酬、ウォッシュセール、暗号資産レンディングなどの規定が含まれる。 ただし、これは成立済みの法律ではない。2026年9月16日に委員会審議が予定されている段階であり、DEX・DeFi利用者が直ちに申告方法を変更できるわけではない。

米下院が公表した暗号資産税制法案とは

The Blockの報道によると、米下院歳入委員会は2026年9月、全114ページの暗号資産税制法案を公表した。正式名称は「Digital Asset Tax Certainty Act」で、法案番号はH.R. 10357。委員長を務める共和党のジェイソン・スミス議員が提出し、6月に行われたデジタル資産課税に関する公聴会で議論された複数の提案をまとめたものだ。

この法案が対象とするのは、単純なビットコイン売買だけではない。Ethereum上でUniswapを利用するときのネットワーク手数料、CircleのUSDCなど米ドル連動型ステーブルコインの取得価額、Ethereumのステーキング報酬、Aaveのようなレンディング市場に関連する資産移転、暗号資産の損失確定取引など、DeFi利用者に身近な論点が含まれている。

重要なのは、金融市場の監督権限やトークンの法的分類を定める市場構造法案とは目的が異なることだ。H.R. 10357の中心は、米国内国歳入法上、暗号資産の利益・損失・所得をいつ、どのように認識するかを明確にする点にある。

10ドル以下の手数料に設けられる例外

法案の注目点が、一定のネットワーク手数料または取引手数料を暗号資産で支払った場合の少額例外だ。対象となる手数料が10ドル以下であれば、その支払いに使った暗号資産について利益または損失を記録しなくてよい仕組みが盛り込まれている。

例えば、Uniswapでトークンを交換する際、Ethereumのガス代をETHで支払うことがある。現在の一般的な米国税務上の考え方では、ETHを手数料として使う行為も暗号資産の処分になり得るため、取得時から支払時までの価格変動を計算する必要がある。小さなガス代ごとに取得価額を追跡するのは、取引回数の多い利用者にとって大きな事務負担だった。

今回の例外は、その負担を限定的に軽減するものだ。ただし「10ドル以下のDEX取引が非課税になる」という意味ではない。免除の対象として報じられているのは、適格なネットワーク手数料や取引手数料に使った暗号資産の損益である。UniswapでETHをUSDCへ交換した本体取引や、1inchで複数の流動性ソースを経由したスワップの損益まで自動的に除外されるわけではない。

法案どおり進む場合、この手数料規定は2028年から適用される予定だ。成立時期や最終条文によって変更される可能性があるため、現時点では従来どおり取引履歴と手数料記録を保存する必要がある。

USDCなどステーブルコインの税務処理

法案は、一定の要件を満たす米ドル建てステーブルコインについて、1ドルからの小さな価格差を税務上どう処理するかも扱う。適格なステーブルコインを償還価額に十分近い価格で取得した場合、原則として償還価額を税務上の取得価額として扱う仕組みだ。

CircleのUSDCを例にすると、DEXでの交換価格は市場環境や流動性によって常に完全な1ドルになるとは限らない。CurveのステーブルコインプールやUniswapのUSDCペアを利用する場合、わずかな価格差が発生し得る。法案の狙いは、そのような小さな差まで個別のキャピタルゲインまたはロスとして追跡する負担を抑えることにある。

ただし、すべてのステーブルコインが対象になるとは限らない。条文上の「適格な米ドルステーブルコイン」に該当することが前提であり、DAIのように暗号資産担保やプロトコル設計を組み合わせた資産が最終的にどう扱われるかは、成立条文と財務省・IRSの実施規則を確認する必要がある。

また、ステーブルコインを使って利益を得た取引全体が非課税になるわけでもない。例えばUSDCでETHを購入し、そのETHを値上がり後に売却した場合、ETH側の損益計算は引き続き必要になる。今回の規定は、ステーブルコイン自体の小さな価格変動と記録負担を調整する措置として理解するのが適切だ。

ステーキングとマイニング報酬は普通所得へ

H.R. 10357では、マイニングおよびステーキングで受け取る資産について、原則として普通所得として課税する方向が示された。Ethereumのバリデーター報酬や、ステーキングに参加して受け取る新規資産などが重要な対象になる。

6月に審議された従来案には、新たに生成されたデジタル資産について、一定の条件で所得認識を繰り延べる選択肢が含まれていた。しかしThe Blockによれば、今回まとめられた法案には、その繰り延べ選択が盛り込まれていない。業界団体が従来案の維持を求めていた点と比べると、ステーカーやマイナーにとって大きな変更点である。

LidoやRocket Poolのようなリキッドステーキングを利用する場合は、報酬所得だけでなく、ETHを預けて別のトークンを受け取る行為が資産交換に当たるかという別の論点もある。今回報じられた法案の普通所得規定だけで、リキッドステーキングに関するすべての税務問題が解決するわけではない。

一方、一定の投資信託が保有資産をステーキングしても、その行為だけを理由に税務上の適格性を失わないための規定も含まれる。これは、暗号資産を保有する信託商品がEthereumなどのステーキングに参加できる余地を整える措置として注目される。

ウォッシュセールとDeFiレンディングへの影響

法案は、従来の証券取引で用いられてきたウォッシュセール規制を、取引されるデジタル資産にも広げる。対象資産を損失が出る価格で売却し、その売却日の前後30日以内に同一または実質的に同一の資産を取得した場合、損失控除が認められない可能性がある。

例えば、UniswapでETHを売却して損失を確定した直後に、別のDEXでETHを買い戻す取引が該当候補となる。中央集権型取引所からDEXへ場所を変えても、対象となる資産と取引時期が同じなら、規制を回避できるとは限らない。自動積立、流動性ポジションの調整、ラップド資産への交換についても、最終的な「実質的に同一」の解釈が重要になる。

一方、一定の要件を満たす暗号資産貸借契約に基づく移転は、売却または交換として扱わない規定も盛り込まれている。これは暗号資産レンディングに伝統的な証券貸借と類似した税制上の枠組みを与える試みだ。

ただし、Aaveへ資産を供給するオンチェーン取引が、そのまま法案上の適格な貸借契約になると断定することはできない。スマートコントラクトへの預け入れ、利息を表すトークンの受領、担保清算など、DeFi固有の仕組みが要件を満たすかは、最終条文と今後のガイダンス次第である。

DEX・DeFi利用者が今から準備すべきこと

第一に、法案が成立するまでは現行ルールに基づく記録を続けるべきだ。MetaMaskなどのウォレット履歴だけでなく、Uniswapのスワップ、Aaveへの供給・借入、Lidoのステーキング、ブリッジ利用、ガス代を日時・数量・米ドル換算額とともに保存しておく必要がある。

第二に、手数料と取引本体を分けて管理することが重要だ。10ドル以下の例外が成立しても、スワップ本体の損益まで消えるわけではない。トランザクション単位で、交換資産、受取資産、ガス代、プロトコル手数料を区別できる台帳が望ましい。

第三に、同一資産の買い戻しを伴う損失確定戦略を見直す必要がある。ウォッシュセール規制がデジタル資産へ拡大されれば、年末にETHや各種ガバナンストークンを売ってすぐ買い戻す手法は、期待した税務効果を得られなくなる可能性がある。

法案には、広く取引されるデジタル資産について簡素化された年間会計方式を選択できる規定もあり、こちらも2028年からの開始が想定されている。さらに、成立後12カ月以内に財務省がデジタル資産の自主開示プログラムを設け、適格な納税者が過去の申告を修正し、税金・利息・該当するペナルティーを精算できる仕組みも予定されている。

まとめ

Digital Asset Tax Certainty Actは、DEX・DeFi利用者が長年直面してきた細かな手数料計算、ステーブルコインの小幅な価格差、ステーキング報酬、暗号資産貸借の扱いを整理しようとする法案だ。特に10ドル以下の適格手数料に関する例外は、EthereumやUniswapを日常的に利用する人の記帳負担を軽減する可能性がある。

その一方で、マイニング・ステーキング報酬の繰り延べ選択が削除され、ウォッシュセール規制がデジタル資産へ拡張されるなど、納税者に有利な変更だけではない。USDC、Lido、Aaveなど具体的な資産・プロトコルへの適用範囲も、最終条文やIRSのガイダンスを待つ必要がある。

2026年9月16日時点では委員会審議の対象であり、まだ成立法ではない。利用者や事業者は、法案の進行を追いながら、ウォレット、DEX、レンディング、ステーキングの履歴を引き続き保存することが現実的な対応となる。なお、本記事は制度解説であり、個別の税務判断は米国税務の専門家へ確認してほしい。

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