トークン化資産(RWA)大手のOndo Financeは2026年8月5日、元Blockchain.com幹部のAdam Schlisman氏を最高財務責任者(CFO)に任命したと発表しました。同氏はマクロヘッジファンドMonashee Investment ManagementでもCFOを務めた財務のプロフェッショナルであり、今回の起用はOndoがオンチェーン資本市場ビジネスを機関投資家規模へ拡大させる局面で行われました。本記事では、この人事の背景とRWAセクターの現状を整理します。
Ondo Financeが新CFOを任命した狙い
Ondo Financeは、米国債や株式をブロックチェーン上でトークン化して提供するプラットフォームを運営する企業です。今回、財務・トレジャリー・リスク管理を統括する最高財務責任者として、Adam Schlisman氏を迎え入れました。
発表によれば、この人事はOndoがトークン化資産ビジネスを支える金融インフラを拡張し、「早期採用の段階から、より広範な機関投資家による利用」へと移行させる段階で行われたものです。トークン化市場が黎明期を脱し、伝統的金融(TradFi)の担い手が本格参入する中で、財務オペレーションを機関投資家水準に引き上げる役割が期待されています。
Schlisman氏自身も、就任にあたって「Ondoはあらゆる財務リーダーが求める変曲点に到達した」とコメントし、事業がスケールする局面にあるとの認識を示しました。
Adam Schlisman氏の経歴
Schlisman氏は金融とリスク管理の分野で長いキャリアを積んできた人物です。直近ではグローバル・マクロ・ヘッジファンドであるMonashee Investment ManagementでCFOを務めていました。
それ以前は、暗号資産取引・ウォレット大手のBlockchain.comでCFOを務め、同社が急成長する時期に財務・トレジャリー・リスクを統括していました。さらにキャリアの初期には、著名なマネージド・フューチャーズ運用会社であるGraham Capital Managementで約10年間、ポートフォリオ・マネジメントとリスク管理の職務に従事しています。
つまり同氏は、伝統的なヘッジファンド運用と暗号資産ネイティブ企業の双方で財務責任者を経験しており、TradFiとオンチェーン金融の橋渡しを狙うOndoにとって適合性の高い人材と位置づけられます。
Ondo Financeとは何か
Ondo Financeは2021年、元Goldman Sachsの幹部らによって設立されました。現在では最大級のRWA(実物資産トークン化)プラットフォームの一つに数えられ、ブロックチェーンベースの米国債や株式を提供しています。
同社の発表によれば、各種プロダクトを合わせた運用規模は35億ドルを超えています。プラットフォームはSolana、Ethereum、BNB Chainに対応しており、取引所やウォレットなどと統合されている点も特徴です。複数チェーンへの展開とインフラ連携によって、トークン化資産へのアクセス性を高めています。
Ondoの代表的なプロダクトには、米国債を裏付けとしたトークンや、株式をトークン化した「Ondo Stocks」などがあります。伝統的資産をオンチェーンで扱えるようにすることで、決済時間の短縮や24時間365日の取引を可能にすることを目指しています。
「Ondo Stocks」がTVL10億ドルを突破
今回の発表で注目されたのが、株式トークン化プロダクト「Ondo Stocks」の預かり資産(TVL)が10億ドルを突破した点です。Schlisman氏はこれを機関化への象徴的な節目として挙げています。
同氏は「Ondo StocksのTVLが10億ドルを超えたこと、Ondo Perps(パーペチュアル取引)の成長、そしてDTCCのような伝統的な市場インフラ提供者との協業は、いずれも同じ方向を指し示している。トークン化市場は早期採用から機関投資家規模へと移行しつつある」と述べました。
DTCC(米国預託信託清算機構)は、米国証券市場の決済インフラを担う中核機関です。こうした既存の市場インフラ事業者との連携は、トークン化資産が実験的な取り組みから、既存金融システムと接続する現実的なインフラへと近づいていることを示唆しています。
RWA・トークン化セクターの現状
トークン化は、暗号資産の中でも最も成長の速いセクターの一つとして台頭しています。ウォール街の金融機関が伝統的資産をブロックチェーン上に載せる競争を繰り広げているためです。
銀行、資産運用会社、そして暗号資産ネイティブ企業は、米国債、マネー・マーケット・ファンド(MMF)、プライベートクレジット、株式などのトークン化版を相次いで発行しています。その狙いは、決済時間の短縮、市場アクセスの改善、そして24時間取引の実現にあります。
この分野ではOndoのほかにも、BlackRockが関与するトークン化ファンド「BUIDL」や、Franklin Templetonのオンチェーン・マネー・マーケット・ファンドなど、大手運用会社の参入が続いています。伝統的金融の巨人がブロックチェーン基盤を採用する動きは、RWAが単なる実験ではなく制度的な潮流になりつつあることを裏付けています。
DEXユーザーが注目すべきポイント
DEXやDeFiを利用する読者にとって、RWAのトークン化はオンチェーンで扱える資産の幅を広げる重要なトレンドです。米国債や株式がトークン化されれば、ステーブルコインだけに依存しない利回り資産や担保資産の選択肢が増える可能性があります。
もっとも、トークン化資産には発行体の信用リスク、規制対応、償還可能性、対応チェーンやプロトコルのスマートコントラクトリスクなど、独自の留意点が存在します。TVLなどの数値は市場環境によって変動するため、利用にあたっては各プロダクトの公式ドキュメントで裏付け資産や償還条件、対応地域を確認することが重要です。
財務責任者の交代自体はプロダクトの安全性を保証するものではありませんが、企業がガバナンスや財務オペレーションを強化する姿勢は、機関投資家の参入環境が整いつつある一つのシグナルとして捉えることができます。
まとめ
Ondo Financeによる元Blockchain.com CFO・Adam Schlisman氏の起用は、同社がトークン化資産ビジネスを機関投資家規模へと拡大させる意思を示す人事です。設立は2021年、運用規模は各プロダクト合計で35億ドルを超え、株式トークン化プロダクト「Ondo Stocks」のTVLは10億ドルを突破しました。SolanaやEthereum、BNB Chainへの展開、DTCCとの協業などを背景に、RWAセクターは早期採用の段階から制度化のフェーズへと移行しつつあります。DeFi・DEXの利用者にとっても、オンチェーンで扱える伝統的資産の広がりは注視すべきテーマと言えるでしょう。ただし数値や仕様は変動・更新されるため、最終的な判断は必ず公式情報で確認してください。





