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SECのトークン化証券「革新免除」とは|DEXへの影響
トークン化証券·9分で読める

SECのトークン化証券「革新免除」とは|DEXへの影響

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-09-18

📋 この記事のポイント

  • 1米SECがトークン化された米国株をAMMで取引するための「革新免除」を導入しました。
  • 2対象資産、TSVの条件、発行企業の拒否権、DeFiやDEXへの影響、投資家が確認すべきリスクを公式資料に基づいて解説します。
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米証券取引委員会(SEC)の「革新免除」とは、一定条件を満たす事業者が、トークン化された米国上場株式を許可制AMMで取引できるようにする時限的な規制措置です。 対象は株主権を伴う実物連動型のトークン化株式であり、価格だけを追跡する合成資産や一般的な無許可DEXが自由に米国株を上場できる制度ではありません。

SECが発表した「革新免除」の概要

SECは2026年9月17日、Tokenized Securities Venue(TSV)と呼ばれるトークン化証券取引基盤に対し、1934年証券取引所法上の「取引所」定義から一時的に除外する命令を公表しました。適用期間は同日から2031年9月17日までです。

TSVは、トークン化されたNMS株式の買い手と売り手を結び付ける事業者です。NMS株式とは、米国の全国市場システムで取引される上場株式を指します。TSVは、参加資格を確認した利用者が取引するAMM Liquidity Poolを提供し、そのアクセス基準を設定します。

この措置は、SECが特定企業を正式な「認定TSV」に指定する制度ではありません。事業者自身が命令の定義と条件を満たしているかを確認し、SECへ必要な通知を行ったうえで免除に依拠します。したがって、単にスマートコントラクトを公開しただけで免除を受けられるわけではありません。

CoinDeskは、法案による包括的な市場構造整備が米議会で進まないなか、SECが既存法上の権限を利用して実証的な取引環境を設けた動きだと報じています。ポール・アトキンスSEC委員長も、今回の措置を恒久制度へ向かう橋渡しと位置付けています。

取引できるのは「実際の株主権」を持つトークン

革新免除が対象とするのは、発行企業自身またはその委託先がトークン化したNMS株式と、発行企業から独立した第三者がトークン化したNMS株式です。重要なのは、トークン保有者が通常株式と同等の権利・利益を受けられることです。

具体的には、同じ種類の通常株式に配当を受ける権利や議決権がある場合、トークン化株式にも同等の権利が必要です。TSVには、その同等性を取引開始前に確認する責任があります。

一方、第三者が独自に発行し、株価への経済的な連動だけを提供する合成トークン、トークン化リンク証券、証券ベース・スワップは対象外です。例えばRobinhoodなどが米国外で提供してきた株式関連商品のすべてが、そのまま今回の制度へ移行できるわけではありません。商品の法的構造が「株式そのものの所有権」なのか、「発行者に対する契約上の請求権」なのかを区別する必要があります。

この点は、暗号資産市場で利用されるラップドトークンとも異なります。名称や価格表示がApple、Teslaなどの株式に似ていても、配当、議決権、償還、名義記録の仕組みが通常株式と同等でなければ、SEC命令上のTokenized NMS Stockには該当しません。

AMMと流動性プールはどう使われるのか

TSVでは、UniswapのようなDeFiで普及したAMMと流動性プールの考え方が証券取引へ応用されます。ただし、Uniswapの既存プールが今回の免除対象になったという意味ではありません。SECが想定するのは、参加者を審査した許可制の取引環境です。

AMMでは、スマートコントラクトがあらかじめ定められた条件に基づいて価格提示や取引執行を自動化します。TSVはトークン化株式と組み合わせる資産をプールに用意し、参加者はそのプールを介して売買します。スマートコントラクトは監査可能かつ公開され、パブリックでパーミッションレスな分散型台帳上に展開されなければなりません。

ここで「台帳がパーミッションレス」であることと、「誰でも取引できる」ことは別です。Ethereumのように公開検証できるネットワークを使う場合でも、TSV側は取引参加者のアクセス基準を設定します。通常のDeFiウォレットを接続するだけで匿名参加できる設計ではありません。

また、原資産となる株式が主要上場取引所で売買停止になった場合、TSVも対応するトークン化株式の取引を同時に停止しなければなりません。オンチェーンだから既存市場の停止措置を回避できる、という制度ではない点に注意が必要です。

発行企業には第三者トークン化への拒否権がある

AppleやTeslaなどの上場企業とは無関係の事業者が、その企業の株式をトークン化してTSVで扱う場合、TSVは原株式の発行企業へ書面で通知し、異議を申し立てる機会を与えなければなりません。発行企業が反対すれば、TSVはその銘柄を取り扱えません。

この条件は、第三者による無秩序な「勝手トークン化」を防ぐ仕組みです。発行企業にとっては、株主対応、配当、議決権、ブランド表示、サイバーセキュリティなどに問題がある取引基盤への掲載を拒否できます。

投資家側も、トークン名やティッカーだけで公式商品と判断してはいけません。発行企業自身によるトークン化なのか、独立した第三者によるものなのか、発行企業が異議を申し立てていないかを確認する必要があります。

SECはさらに、TSVに対して運営状況、取引活動、関連会社による取引などの公開を要求しています。発行企業の拒否権とTSVの情報開示を組み合わせ、通常の証券市場とは異なる技術を使いながらも、責任主体を明確にする設計です。

流動性提供者にも条件付きの免除

今回の命令はTSVだけでなく、Covered Firmと呼ばれる一定の流動性提供者にも条件付きの救済を与えています。自己資金でトークン化株式を流動性プールへ供給し、価格提示やコミット済み資本の提供などを行う事業者について、証券取引所法上の「ディーラー」定義から一時的に除外します。

これはUniswapなどの一般的な流動性マイニング参加者全員を免除するものではありません。Covered Firmの証券関連活動は、革新免除に従って運営されるTSVのAMM Liquidity Poolに関係するものへ限定されます。また、顧客資産を保管せず、自己勘定で流動性を提供する必要があります。

Covered Firmは、流動資産や損失対応能力、供給した流動性、TSVとのマーケットメイク契約、受領する手数料・トークン・リベートなどの記録を保持します。公開ウェブサイトがある場合は、SEC登録ブローカーディーラーではないことや、流動性提供の対価を受け取る可能性も明示しなければなりません。

したがって、免除は規制のない自由な利回り商品を認める制度ではありません。流動性提供による収益機会が生まれる一方、在庫価格の変動、スマートコントラクト障害、トークン化株式と原株式の価格乖離などのリスクは残ります。

DEX・DeFi市場に与える実務的な影響

最大の変化は、AMMというDeFi固有の市場設計が、米国上場株式の取引制度に正式に組み込まれる経路が示されたことです。UniswapやCurveで培われた自動価格形成、オンチェーン決済、公開検証可能なスマートコントラクトという発想が、許可制の証券市場へ接続されます。

ただし、今回の措置を「米国株版の完全分散型DEX解禁」と理解するのは不正確です。TSVは米国人または米国法人でなければならず、制裁規制を順守し、取引参加者を選別します。銘柄数と取引量にも上限が設けられ、SECの監督や情報要求の対象になります。

DeFi開発者にとっては、スマートコントラクトの公開性だけでなく、本人確認、アクセス制御、株主権の記録、取引停止の連動、発行企業への通知、規制当局向けデータ保存までを一体設計する必要があります。既存のUniswapフロントエンドを複製して株式トークンを追加する程度では条件を満たせません。

一方、証券会社やカストディ事業者には、新たな役割が生まれます。原株式とトークンの権利関係を維持する主体、許可済みウォレットを管理する主体、オンチェーン取引と従来の株主名簿を接続する主体が必要になるためです。どの企業が実際にTSVを開始するか、どのブロックチェーンや決済資産を採用するかは、今後の正式発表を確認すべき段階です。

投資家が確認すべきリスクとチェック項目

第一に、TSVがSECへ通知したという事実は、SECが商品価値や安全性を保証したことを意味しません。革新免除は登録義務の一部を条件付きで外す措置であり、詐欺・相場操縦を禁じる連邦証券法の規定は引き続き全面的に適用されます。

第二に、通常株式との権利同等性を確認します。配当の受領方法、議決権の行使方法、トークン紛失時の扱い、チェーン分岐やスマートコントラクト更新時の権利、原株式への交換可否は、TSVやトークン発行者の開示を読む必要があります。

第三に、流動性と価格形成を確認します。AMMではプール残高や取引規模によってスリッページが変化します。原株式市場が閉まっている時間帯には、参照価格の不確実性が高まり得ます。オンチェーンで取引可能であることと、常に適正価格で売却できることは同じではありません。

第四に、なりすましトークンを避けます。AppleやTeslaなど著名企業の名称を使ったトークンでも、TSVの公式銘柄ページ、スマートコントラクトアドレス、権利説明、発行主体を照合できなければ取引を控えるべきです。Robinhoodなど既存サービスの商品についても、今回の免除対象かどうかを個別に確認する必要があります。

まとめ

SECの革新免除は、トークン化された米国上場株式を、許可制AMMと流動性プールで取引するための具体的な規制経路を示しました。TSVには取引所定義から、一定の流動性提供者にはディーラー定義から、それぞれ時限的な条件付き免除が与えられます。

一方、対象は実際の株主権を備えたトークン化NMS株式に限定され、合成トークンは含まれません。発行企業の拒否権、参加者の選別、公開スマートコントラクト、売買停止の連動、情報開示なども求められます。

DEXと伝統金融の接近を示す重要な政策ですが、一般的な無許可DEXの全面解禁ではありません。利用を検討する際は、SECの命令、TSVの公式開示、発行企業の対応、トークンが付与する法的権利を確認し、オンチェーンという形式だけで安全性を判断しないことが重要です。

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