dex.jp
SEC、稼働済みネットワークのトークン買い戻しに新見解
トークン買い戻し·8分で読める

SEC、稼働済みネットワークのトークン買い戻しに新見解

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-09-28

📋 この記事のポイント

  • 1SECスタッフは、稼働済み暗号資産ネットワークのトークン買い戻し発表だけでは証券性を生じさせないとの見解を公表。
  • 2Howeyテストとの関係やDeFi運営者・投資家への影響を解説します。
ポストLINE

SEC企業金融局スタッフは、すでに機能している暗号資産ネットワークについて、発行主体がトークン買い戻しを発表しても、それだけでトークンが証券になるわけではないとの見解を示した。

ただし、未完成のネットワークで買い戻しを利回りや投資収益の源泉として宣伝する場合は、米国証券法上の「投資契約」に該当する可能性が残る。今回のFAQは規則や法律ではなく、事実関係ごとの検討が引き続き必要だ。

SECがトークン買い戻しについて示した新見解

米暗号資産メディアDecryptによると、米証券取引委員会(SEC)の企業金融局は2026年9月25日、暗号資産に対する連邦証券法の適用を扱うFAQを公表した。中心となるのが、トークン買い戻しを扱った質問2.5だ。

SECスタッフは、暗号資産システムがすでに機能している場合、非証券である暗号資産の買い戻し計画を発表しても、それ自体は「不可欠な経営努力を行うとの表明または約束」には当たらないと説明した。買い戻しの目的としては、財務管理、供給量の削減、プロトコル収益を原資とするバーン、資産構成の調整などが例示されている。

一方、ネットワークがまだ機能していない段階では結論が異なる。発行主体が買い戻しを保有者への利回りやリターンにつながる施策として提示すれば、将来の利益を生む経営努力の約束と評価される可能性がある。

実例としてDecryptとUnchainedは、Ethenaが2026年8月に買い戻し案を提示したことを、この論点が実務上重要になっている背景として挙げている。ただし、今回のFAQはEthenaや特定のDeFiプロジェクトについて個別判断を示したものではない。

Howeyテストと「不可欠な経営努力」の関係

米国でトークン取引が証券に当たるかを考える際、中心となるのが連邦最高裁判例に由来するHoweyテストだ。一般には、資金の投資、共同事業、利益への合理的期待、その利益が他者の努力に依存しているかという観点から、投資契約の有無が判断される。

今回のFAQが焦点を当てるのは、プロジェクト運営者による「不可欠な経営努力」への依存である。たとえば、未稼働のDEXが「開発チームが取引基盤を完成させ、収益でトークンを買い戻すため価格上昇が期待できる」と宣伝すれば、購入者はUniswapのように現在利用できるプロトコル機能ではなく、将来の開発と買い戻し施策に期待して資金を出していると評価され得る。

反対に、すでに利用可能なネットワークで、トークンの価値がプログラム上の用途と市場の需給から形成されている場合、買い戻しの発表だけを切り出して不可欠な経営努力とみなす必要性は低い、というのがSECスタッフの整理だ。

ただし、Uniswapを含む特定のプロトコルが今回の基準によって非証券と確定したわけではない。Howeyテストは名称や技術分類だけでなく、販売方法、発言内容、資金用途などを含む個別事情に基づいて適用される。

「ネットワークが機能している」とは何を意味するのか

今回の見解を読むうえで最も重要な条件は、ネットワークが「functional」、すなわち機能していることだ。単にメインネットを公開した、スマートコントラクトをデプロイした、DEXの画面を用意したという事実だけで、自動的に条件を満たすとは限らない。

SECの2026年3月の解釈指針と今回のFAQでは、発行主体が投資家に対してどのような機能完成を約束したかが重視される。発行主体が自ら示したロードマップや販売時の説明に照らし、不可欠な経営努力を履行したかが問題になるためだ。一方、暗号資産自体を分類する際の「機能性」には、SECの解釈指針上の定義が用いられる。

具体例として、Ethereum上のDEXを名乗るプロジェクトが、実際には交換機能を提供せず、流動性も利用環境も整っていないままトークンだけを販売している場合、「機能している」との主張は弱い。これに対し、Uniswapのようにユーザーがスマートコントラクトを通じて交換機能を利用できるプロトコルは、少なくとも実用性を分析する材料を備えている。

したがって運営者は、メインネット公開日だけでなく、提供中の機能、スマートコントラクトの状態、トークンの用途、未完成機能、過去のマーケティング表現を一体として確認する必要がある。

保守・アップグレードや利用促進も直ちに証券性を生まない

SECスタッフは買い戻しだけでなく、機能しているネットワークの保守、セキュリティ向上、機能改善、ネットワーク効果の促進についても説明した。システムが機能した後に、運営者がこうしたサービスを継続すると約束しても、通常はHoweyテスト上の不可欠な経営努力には当たらないという見解だ。

これは、Ethereumでクライアント開発やアップグレードが続いていること、UniswapのようなDEXでインターフェースや周辺ツールが改良されることだけを理由に、関連トークンが投資契約になるわけではないという考え方につながる。

マーケティングについても、現在利用できる機能を説明することや、利益を強調しない抽象的な将来構想は、それだけでは不可欠な経営努力の約束になりにくいとされた。たとえば「Aaveで担保を預けて借り入れできる」と現在の用途を説明する行為と、「運営チームの施策によりトークン保有者へ継続的な高収益をもたらす」と勧誘する行為では、法的評価が異なり得る。

重要なのは、開発継続の有無ではなく、購入者が誰のどの努力に依存して利益を期待するよう誘導されているかである。

DeFiプロジェクトが買い戻し前に確認すべき事項

DEXやDeFiプロジェクトにとって、今回のFAQは無条件の許可証ではない。買い戻しを検討する際は、まずネットワークが実際に提供している機能と、トークン販売時に約束した完成条件を照合すべきだ。未完成機能が事業の成否を左右する状態なら、「稼働済み」との表現には慎重さが求められる。

次に、買い戻しの原資、執行主体、裁量、購入後の処理を明確にする必要がある。たとえばUniswap、Aave、Ethenaのようにガバナンス、財団、開発会社、DAOが関係する構造では、誰が決定し、どの資産を使い、買い戻したトークンを保有・バーン・再配布するのかによって経済的実態が変わる。

告知文も重要だ。「価格を支える」「保有すれば利回りが得られる」といった投資収益中心の説明は、未稼働ネットワークでは特にリスクが高い。現在の用途、財務管理上の目的、意思決定手続き、実施条件とリスクを正確に示し、利益を保証するような表現を避けるべきだ。

さらに、証券法だけでなく、市場操作、情報開示、税務、DAO参加者の責任など別の論点も残る。SECスタッフFAQの一部分だけを根拠に、買い戻し全体が合法だと判断することはできない。

投資家は買い戻しを株主還元と同一視できない

トークン買い戻しは上場企業の自社株買いに似て見えるが、保有者の権利まで同じになるわけではない。企業の株式には法令や定款に基づく議決権、残余財産への権利、情報開示制度が関係する。一方、DEXやDeFiのトークンが提供する権利は、スマートコントラクトとガバナンス設計によって大きく異なる。

MetaLeX Labsの証券法務弁護士Gabriel Shapiro氏は、Decryptが紹介した見解の中で、今回の整理はプロジェクト側に広い余地を与える「抜け穴」になり得ると批判的に評価した。チームが開発を続け、買い戻しを実施できても、保有者には株主に相当する権利が与えられない可能性があるためだ。

投資家は、Ethenaなどの買い戻し案を見る際も、発表だけで価格上昇を前提にしてはならない。原資が継続的に存在するか、買い戻しが義務か任意か、購入分がバーンされるか、流動性や議決権にどのような影響があるかを確認する必要がある。

また、今回のSECスタッフ見解は、買い戻しによる価格上昇や投資収益を保証するものではない。証券に該当しない可能性が高まることと、トークンの投資価値が高いことは別の問題である。

まとめ

SEC企業金融局スタッフは、機能している暗号資産ネットワークについて、非証券トークンの買い戻し発表だけでは、Howeyテスト上の不可欠な経営努力の約束にならないとの見解を示した。保守、アップグレード、利用促進も、ネットワーク稼働後であれば同様に扱われ得る。

一方、未完成のシステムで買い戻しを利回りやリターンの源泉として宣伝すれば、投資契約と評価される余地がある。Uniswap、Aave、Ethenaなど個別プロジェクトの法的地位が今回のFAQで確定したわけでもない。

さらに、FAQはSEC企業金融局スタッフの見解にすぎず、SECの規則や正式声明ではない。委員会は内容を承認も否認もしておらず、裁判所や将来のSECを拘束しない。DeFi運営者と投資家は「買い戻しなら問題ない」と単純化せず、ネットワークの完成状態、販売時の約束、告知表現、トークンの権利設計を個別に検証することが重要だ。

ポストLINE

関連記事