Securitizeは、AppleやNvidia、Teslaなどの米国株を裏付けとするトークン化商品「Securitize Stocks」をSolana上で提供すると発表した。 対象は当初12銘柄で、各トークンは原株1株に対して1対1で裏付けられる。取引はSecuritizeの規制下プラットフォームから始まり、NYSEなどへの展開は今後の認可や運用開始が条件となる。
Securitize StocksがSolanaで始動
CoinDeskが2026年10月8日に報じた内容によると、Securitize Stocksの当初の対象はAAPL、MSFT、NVDA、GOOG、TSLA、META、AMZN、NFLX、CRCL、SPCX、MSTR、PLTRの12銘柄だ。Apple、Microsoft、Nvidia、Alphabet、Tesla、Meta、Amazon、Netflixに加え、Circle、SpaceX、Strategy、Palantirの株式に対応する。
提供先は、米国、欧州連合、その他の許可された地域にいる適格投資家である。誰でも無条件にウォレットから取引できる商品ではない。Securitizeの公式発表では、口座開設、本人確認、マネーロンダリング対策、居住地域ごとの証券規制を満たす必要がある。
決済にはSolana上のUSDCが使われる。初期段階の取引時間は延長時間帯で、常時取引は将来計画として示された。したがって、発表時点で「米国株を24時間いつでも売買できる」と理解するのは早い。
原株の直接保有ではなく証券上の権利を表す
Securitize Stocksの重要な点は、単に株価へ連動する合成資産ではないことだ。公式発表によれば、各トークンは原株で1対1に裏付けられ、米国統一商事法典のUCC Article 8に基づく「security entitlement」として設計される。配当や、対象株式に議決権がある場合の権利など、原株に伴う経済的利益と権利を保つ構造だ。裏付け株式を貸し出さない方針も明記されている。
ただし、トークン保有者がAppleやTeslaの株主名簿へ直接記載されるわけではない。保有者はSecuritize Marketsを通じた証券上の権利を持つ。発行企業が自社主導のトークン化を採用し、転換手続きが利用できる場合には、発行体の名簿上の株式へ移せる構想である。AppleやNvidiaなどの発行企業が、今回の商品を支援または承認したわけでもない。
この違いは、暗号資産ウォレットに表示されるトークンを、通常の証券口座にある株式と同一視しないために欠かせない。権利行使、移転、換金、障害時の処理は、ブロックチェーンだけでなく、仲介会社、保管機関、移転代理人の制度にも依存する。
PropAMMとJump Tradingが担う取引構造
初期取引には、SecuritizeがSolana上で運用するPropAMMが使われる。Jump Tradingはマーケットメーカーとして流動性、価格発見、執行を支える。RQDは伝統的な証券市場と接続する清算、保管、決済の基盤を担当する予定だ。
この構造は、一般的なパーミッションレスDEXとは異なる。UniswapやJupiterの通常のスワップでは、対応ウォレットがプールへ直接アクセスする場面が多い。一方、Securitize Stocksは規制対象の証券であり、参加者は本人確認済みの適格投資家に限られる。スマートコントラクトや公開台帳を使っても、アクセス制御と証券規制がなくなるわけではない。
Securitize、Jump Trading、Jupiterは2026年5月、規制下のトークン化株式をSolanaで取引する基盤を発表していた。そこではSecuritizeがブローカー・ディーラー、代替取引システム、移転代理人の機能を提供し、Jump TradingがPropAMMで流動性を供給し、Jupiterが利用者向けの入口を担う構成が示された。今回の12銘柄は、その市場基盤を具体的な米国株へ広げる動きと位置づけられる。
NYSEとOKXICEへの展開はまだ将来計画
Securitizeは、NYSEが開発中のデジタル取引会場と、ICEとOKXによるOKXICE Tokenized Securities Venueでの取り扱いも見込む。ただし、公式発表は両会場がまだ開始していないと明記している。実現には取引会場の開設、規制上の承認、各会場による審査、運用要件の充足が必要だ。
米証券取引委員会は2026年9月、トークン化されたNMS株式を扱うTokenized Securities Venueに対し、一時的かつ条件付きの「Innovation Exemption」を公表した。この枠組みでは、許可された参加者がAMM型の流動性プールで取引する。対象銘柄数と取引量には制限があり、原株と同等の権利、監査可能で公開されたスマートコントラクト、原市場の売買停止との連動などが条件となる。
つまり、規制緩和によって通常の証券ルールが消えるのではない。限定的な枠組みで新しい取引方式を試しつつ、投資家保護を維持する制度設計である。NYSEやOKXICEでの取引は確定事項としてではなく、条件付きの計画として見る必要がある。
DeFiで期待される用途と未実装の部分
トークン化株式がオンチェーンに載ると、送付、決済、担保管理をスマートコントラクトと組み合わせやすくなる。Securitizeは将来、Aaveのような対応済みレンディング市場で、貸付や担保に使う可能性を挙げている。Aave創業者のStani Kulechovも、トークン化株式がレンディングや担保用途へ広がる可能性に言及した。
ただし、これはAaveでSecuritize Stocksを直ちに預け入れられるという発表ではない。Aave側で資産を追加するには、リスク評価、オラクル、流動性、清算条件、ガバナンス上の手続きが必要になる。株式市場が閉じている時間にオンチェーン価格だけが動く場合、原株の参照価格や清算価格をどう扱うかも重要だ。
また、JupiterなどのDeFi画面からアクセスできても、証券トークンの移転制限は残る。通常のSOLやUSDCのように、任意のウォレットや流動性プールへ自由に移せるとは限らない。DeFiとの接続では、技術的な組み合わせやすさよりも、許可リスト、法域、保管、権利回復の設計が実用性を左右する。
投資家が確認すべきリスク
第一に、発行体リスクと仲介構造を確認したい。トークンは原株で裏付けられるが、保有者の法的地位は発行企業の直接株主とは異なる。Securitize Markets、保管・清算を支えるRQD、移転代理人など、複数の主体が関係する。障害や破綻時にどの制度で権利を主張できるかは、利用規約と開示資料で確かめる必要がある。
第二に、流動性と価格差の問題がある。Jump Tradingがマーケットメーカーを務めても、常に十分な板や狭いスプレッドが保証されるわけではない。米国株の主要市場が閉じている時間帯では、参照価格の不確実性が高まり得る。USDC決済には、ステーブルコイン、Solanaネットワーク、ウォレット管理のリスクも重なる。
第三に、規制と利用地域の制限がある。SECのInnovation Exemptionは恒久制度ではなく、条件付きの枠組みだ。Securitize Stocksの提供地域や対象者も、証券法、制裁規制、本人確認の結果によって異なる。自己管理型ウォレットを使う場合でも、秘密鍵の紛失だけでなく、移転制限や口座審査によって直ちに取引できない可能性を考慮したい。
まとめ
Securitize Stocksは、Apple、Nvidia、Teslaなど12銘柄の原株を1対1で裏付け、株式に伴う権利と経済的利益を保つことを目指す証券トークンだ。Solana、USDC、PropAMMを使いながら、Securitizeの規制下プラットフォームとJump Trading、RQDの市場基盤を組み合わせる。
今回の発表は、米国株がそのままパーミッションレスDEXへ移ったという話ではない。適格投資家、本人確認、移転制限、仲介機関を前提に、証券市場とオンチェーン市場を接続する試みである。NYSEとOKXICEでの取り扱い、常時取引、Aaveなどでの担保利用はいずれも条件付きの将来計画だ。利用を検討する際は、トークンの価格だけでなく、法的権利、流動性、決済資産、スマートコントラクト、規制地域を分けて確認する必要がある。





