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米3億ドル量子投資で迫るビットコイン・イーサリアムの耐量子対応
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米3億ドル量子投資で迫るビットコイン・イーサリアムの耐量子対応

SSatoshi.K(dex.jp編集部)公開日: 2026-09-10

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  • 1米政府による量子ハードウェア支援を背景に、量子計算がビットコイン、イーサリアム、DEX、DeFiへ及ぼす影響と、両ネットワークの耐量子化を解説します。
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量子コンピューターは、現在のビットコインやイーサリアムを直ちに破壊できる段階にはない。しかし、実用的な量子計算機の開発と暗号資産側の移行には、どちらも長い時間が必要だ。

米国が量子ハードウェアへ計3億ドル規模の支援を進めたことで、量子耐性は遠い未来の研究課題ではなく、ウォレット、DEX、DeFiを含む実装上の課題として注目され始めている。

米国の3億ドル支援が量子開発を加速

CoinDeskが2026年9月9日に報じたニュースの背景には、米商務省によるD-Wave Quantum、Rigetti Computing、Quantinuumへの支援がある。各社が公表した契約額はそれぞれ最大1億ドルで、合計すると3億ドル規模となる。

D-Waveは、量子アニーリングとゲート方式の両方に関係する超伝導半導体技術を研究する。支援対象には、量子ビット数、エラー率、コヒーレンス、誘電材料、インターフェース制御、高密度パッケージングの改善が含まれる。

Rigettiは超伝導方式を採用し、読み出し回路の小型化、極低温設備の拡張、高接続性チップの製造技術という三つの研究開発プロジェクトを掲げた。Quantinuumは異なるアプローチであるトラップドイオン方式を採用し、GlobalFoundriesによる次世代イオントラップや制御回路の製造、Monarch Quantumによるレーザーおよび光学部品の開発を進める。

重要なのは、3億ドルが「ビットコインを解読する計画」に投じられるわけではない点だ。目的は量子計算機の製造能力、部品供給網、誤り訂正可能なシステムへの道筋を強化することにある。ただし、ハードウェア開発が進めば、ブロックチェーン側が耐量子移行に使える準備時間は相対的に短くなる。

なぜビットコインとイーサリアムが影響を受けるのか

量子計算で問題になるのは、主に送金承認に使われる公開鍵暗号だ。ビットコインではECDSAやSchnorr署名、イーサリアムでは一般アカウントのECDSA署名に楕円曲線暗号が利用されている。

十分に強力で誤り訂正された量子コンピューターが完成すると、Shorのアルゴリズムにより、公開鍵から秘密鍵を導出できる可能性がある。攻撃者が秘密鍵を得れば、正規の所有者になりすまして署名し、暗号資産を移動させられる。

一方、SHA-256やKeccakのようなハッシュ関数が同じ方法で即座に破られるわけではない。量子計算はブロックチェーン全体を一度に消去する魔法ではなく、署名方式、公開鍵の露出状態、トランザクションの待機時間などによってリスクが異なる。

Ethereum.orgは、256ビット楕円曲線暗号を破るために必要な規模について、Google Quantum AIによる2026年の研究が約1,200論理量子ビットと推定したことを紹介している。現在のノイズを含む物理量子ビットと、安定して計算できる論理量子ビットは同一ではないため、この数字だけで攻撃時期を予測することはできない。

ビットコインはBIP 360で移行経路を検討

ビットコインでは、耐量子化に向けた提案の一つとしてBIP 360「Pay-to-Merkle-Root(P2MR)」が公開されている。2026年9月時点ではDraftであり、Bitcoinネットワークに導入済みの機能ではない。

P2MRは、Taprootのキーパス支払いを無効化し、スクリプトツリーのマークルルートへコミットする新しい出力形式を提案する。公開鍵を長期間オンチェーンへ露出させる攻撃面を減らし、将来、耐量子署名を検証する命令を追加しやすくすることが狙いだ。

ただし、P2MRだけで完全な耐量子化が完成するわけではない。トランザクションを送信して公開鍵が明らかになる短い時間帯への対策には、別途ポスト量子署名が必要になる可能性がある。また、新形式を導入しても、利用者、取引所、カストディ事業者、ウォレットが資産を新しい出力へ移さなければ、古い形式の資産は残り続ける。

ビットコインの難題は技術だけではない。どの方式を採用するか、古い署名をいつまで認めるか、所有者が移行しない休眠資産をどう扱うかについて、分散した参加者の合意が必要になる。

イーサリアムは実行・合意・データを段階的に更新

イーサリアムは、Ethereum Foundationの専任研究チームとLean Ethereumロードマップを通じて、耐量子化を複数の層に分けて進めている。Ethereum.orgが示す対象は、一般アカウントのECDSAだけではない。

Proof of Stakeのバリデーターが利用するBLS署名、データ可用性で使用されるKZGコミットメント、ロールアップなどのゼロ知識証明も検討対象だ。つまり、ウォレット署名だけを交換しても、Ethereum全体の移行は完了しない。

一般利用者のアカウントについては、アカウント抽象化を利用して署名方式を柔軟に変更できるようにする方針が示されている。これにより、ネットワーク全体の移行を待たず、対応ウォレットがポスト量子署名へ移る経路を用意できる可能性がある。

合意層では、BLS署名の代替候補としてハッシュベース署名のleanXMSS、署名集約のためのleanVMなどが研究されている。Ethereumの公式ロードマップは、実行、合意、データを含む全面的な耐量子化について2029年12月を目標としているが、これは開発目標であり、予定どおりの実装を保証するものではない。

DEXとDeFiに固有のリスク

Uniswap、Aave、Curve、Lidoなどのスマートコントラクトは、量子コンピューターによって自動的に書き換えられるわけではない。しかし、コントラクトを操作する署名鍵や管理権限が侵害されれば、DeFiにも影響が波及する。

第一の対象は利用者のウォレットだ。MetaMaskやハードウェアウォレットから一度でも取引を送信したアカウントは、署名検証に必要な公開鍵をオンチェーンから復元できる。将来、公開鍵から秘密鍵を高速に計算できる量子攻撃者が現れれば、保有トークンだけでなく、Uniswap Permit2などに設定した承認枠も悪用される恐れがある。

第二はプロトコルの管理鍵である。Aaveのガバナンス実行、ブリッジの検証者、オラクル更新者、緊急停止用マルチシグなど、少数の署名へ権限が集中する部分は重要な移行対象になる。Safeのようなマルチシグも、構成署名者が同じ量子脆弱な方式だけを使うなら、人数を増やすだけで根本対策になるとは限らない。

第三はL2とブリッジだ。Arbitrum、Optimism、Baseなどでは、利用者のL2アカウントに加え、シーケンサー、状態証明、Ethereumへの決済、ブリッジ管理という複数の暗号境界が存在する。Ethereum本体が対応しても、各L2やクロスチェーンブリッジが同時に安全になるわけではない。

利用者と事業者が今から確認すべきこと

一般利用者が量子脅威を理由に慌ててBTCやETHを売却する合理的な根拠は、現時点の公式情報からは確認できない。Ethereum.orgも、現在の資金は安全であり、将来の移行時にはウォレットが案内するとの立場を示している。

ただし、長期保有者は利用するウォレット、取引所、カストディ業者が耐量子移行方針を公開しているか確認しておきたい。BitcoinではBIP 360対応をうたう非公式ウォレットやトークンが登場する可能性があるが、DraftのBIPを「Bitcoin本体で導入済み」と誤認してはいけない。

DEX利用者は、不要なトークン承認を定期的に見直し、長期間利用しないアカウントへ無制限承認を残さないことが望ましい。これは量子攻撃専用の対策ではないが、鍵が侵害された場合の被害範囲を小さくできる。

DAO、DEX、ブリッジの運営者には、署名方式と鍵の棚卸しが必要だ。ユーザーアカウント、管理マルチシグ、バリデーター、オラクル、アップグレード権限を分け、どの鍵が公開済みか、交換可能か、移行にガバナンス投票が必要かを整理する。耐量子アルゴリズムを決める前でも、この暗号資産台帳を作る作業は開始できる。

まとめ

米国による3億ドル規模の支援は、量子コンピューターが暗号資産を直ちに破ることを意味しない。一方で、D-Wave、Rigetti、Quantinuumが製造、極低温設備、光学部品、半導体プロセスを前進させれば、ブロックチェーン側の移行期限を意識する必要性は高まる。

ビットコインはBIP 360などを通じて新しい出力形式と段階的な移行を検討し、イーサリアムはアカウント、合意層、データ可用性、ゼロ知識証明を含む広いロードマップを進めている。どちらも完成済みではなく、技術開発に加えて利用者や事業者による資産移行が不可欠だ。

DEX・DeFi利用者にとって当面重要なのは、未確認の「量子安全」商品へ飛びつくことではない。公式ロードマップを追い、不要な承認を減らし、利用中のウォレットやプロトコルが署名方式を移行できる設計になっているかを確認することである。

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